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 ラムネ色恋模様



からららん、とラムネの中に入っているビー玉が揺れる。その度に可愛らしい音を立てた。からららん。

「シャーク、キスしよう」

それに混じった恋人の声が、暑さにやられた頭の中に響く。じりじりと照りつける午後の日差し。シャーク、とあだ名で呼ばれた神代凌牙は、前のめりになり、恋人の真っ赤な唇にキスした。


教室では、暑さにやられた生徒たちが下敷きをうちわ代わりに扇いでいたり、先生の話を聞かずに窓を見つめたり、机にふせてたり。とりあえず暑さを乗り切ろうと自分なりの涼しい方法を取るばかりで、授業の話を聞く生徒はごくわずかだ。

(ラムネ、置いてきちまった)

そういえば、と先ほどシャークからラムネを貰ったが空になったのを屋上に置いてきてしまったのを思い出した。呆然と窓から夏空を見上げれば、頭の中は自然と恋人で埋まる。

「九十九、この問題を解いてくれ」
「…え?ああ、えっと……」

いきなり名前を呼ばれ、少しうろたえながらも指示された黒板の数字を見つめる。しかし、xだとか二乗だとか、良く分からない式が目の前に広がり、やがて首を左右に振った。

「わかりません…」

先生といえば、少し息を吐いてから次の生徒を指名して問題を解かせた。良くこんな問題が解けるものだと、遊馬はしばらく黒板とにらめっこをし、やがて頭を痛くしただけだった。



放課後、いつもみたく凌牙と帰る途中に、遊馬はふと疑問に思った。

「オレ足すシャークてなんだろ」
「は?」
「数式みたいに、オレとシャークを足したら、どんな答えになんだろ」
「しらねーよ…」

いきなり変なことを言い出す遊馬に、凌牙はただただ眉を寄せるだけだ。それでも、なんだろなー、と悩む遊馬に、呆れた様子で答えた。

「足しても引いても、その式は成立しねーよ。馬鹿」
「なんで?」
「簡単に解けるもんじゃねーだろ」
「?」

理解できない様子でいる遊馬に、凌牙はただただ小さく笑っただけだった。
数式なんて、必ず答えが決まっている。だけど自分らを式にしたって答えは決まっていない。簡単に解ける愛じゃない。

「キスしようぜ遊馬」
「…うん、」

夕日が沈む中、二人の影が重なった。
あ、ラムネの味がする。ついでにタバコの味もする。

(いーけないんだ)

しゅわしゅわする恋模様。ちょっぴりはじけて、じれったいや。

(あ、屋上のラムネ回収し忘れた)



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