小説 | ナノ


 食卓上パラダイス



食卓に広げられた彩り豊かなおかず達に、思わず舌鼓してしまう。感嘆な声をもらすのと同時に、遊馬は箸を取った。

「いただきまーす!!」


事の始まりは一時間前。九十九家では今日、遊馬以外は皆外出していて、遊馬もとりあえず千円を握らせられたが夕飯をどうしようか困っていた。外で食べようか、買って帰ろうか、そのどちらしか無い選択に迷っていると、たまたま話を聞いた凌牙が「うちに来いよ」と誘ってくれたのだ。彼の両親も出かけて居ないし、一人で食うのは味気ないから、という理由に遊馬は素直に甘えた。
それから今に戻ると、色とりどりの野菜や肉料理、遊馬は手を合わせるとおかずへと手を伸ばした。

「すげーなシャークって!」
「そうでもねーよ」
「だってデュエルも上手いし、料理も上手いし!」
「食べながら喋るなって。ご飯粒落ちてんぞ」

ふいに伸びた凌牙の大きな指は、遊馬の口元についていたご飯粒を指の腹ですくうように取ると、そのまま自分の口の中に放り込む。それから何も無かったようにおかずに箸を伸ばすと、それは途中で止まる。理由は簡単。遊馬の顔が真っ赤だったからだ。

「おい?」
「え、あ…いやっ」

声をかけると我に返った遊馬が、少し慌てたようにおかずへ箸を伸ばす。
先に箸をテーブルに置いたのは凌牙で、見る限り、それといって食べてない気がする。

「もう良いのか?」
「ああ」
「シャークってあんま食べないんだな。そんなんじゃ大きくなれないぜー」
「大丈夫だ。テメーよりは背高いからな」
「くっそう…!」

絶対に追い越してやるからな!とガツガツとおかずを口に放り込む。
その姿を頬杖をついて眺める。美味しそうに頬張る彼は見ていて楽しい。足を小さく揺らし、鼻歌なんて歌いながら、何を食べようかと迷い箸になりながらも箸を進める。なんとなく、作った甲斐はあったな、と思いながら凌牙は空になっていく皿を見つめた。
やがて食卓の上にたくさん乗せられた皿の上は空。遊馬はお腹を叩いて「ご馳走さまでした!」と箸をおいた。

「美味かった!」
「そりゃあ良かった」

皿を台所まで片付けに行く凌牙のあとを、遊馬も皿を持っていく。

「なあ、シャーク」
「なんだ」
「また来て良いか?」
「……」

少し驚いたような顔を向けられ、瞬きを繰り返しながら返事を待つ遊馬。

「…勝手にしろ」
「本当か!?やっったああぁ!」

何故か、デュエルに勝った時のように飛び跳ねて喜ぶ遊馬に、呆れたため息をつきながらも、ちょっぴり嬉しい自分がいて。
だけどその一秒後。後ろからパリィン!と何かが割れる音に、凌牙は本気でため息をついた。



食卓上のパラダイス

その日から冷蔵庫の中は君が来ていいように満タンさ。だってまた君の笑顔が楽しみだから。

なーんってな。





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