sweet better
「え?」
間抜けな声だな、て思ったのはほんの一瞬。
キラキラ輝く銀の指輪が、オレの左薬指を通った。
「な、ジャック…これは」
「生憎オレは、短気でな。彦星と織り姫とやらと同じになる気はない」
「手短にまとめてくれ」
「ずっと一緒にいろ、遊星」
ちょっと思考回路停止。
いや、うん、だけど。返事なんかはじめから決まってた。
「ああ…勿論だ」
離れるわけ、ないだろ。
短冊に願い事を書いてるクロウたちをよそに、ちゅ、と可愛らしいリップ音をたたせた。
「おいそこ!イチャイチャしてねーで、お前らも願い事書けよっ」
そんなクロウの声に、顔を見合わせ苦笑。
はいはい、なんて素振りで歩けば、また怒られた。
ジャックは黄色、オレは青の短冊を手にペンを握る。いやしかし…何のお願い事をしよう。
「ジャックは、なんて願い事したんだ?」
チラッと覗き見たら、「遊星」て書いてあった。
「…オレなら、手に入ってるだろ」
「まぁな」
何食わぬ顔で、短冊を笹にくくりつけているジャックを背に、オレも短冊に「ジャック」と書いて、笹にくくりつけた。
「オレなら手に入ってるだろう」
「まぁな」
オレと同じセリフを言ったので、そのまま返してやった。
オレはさ、ジャック。
お前の全部が欲しくて、名前を書いた。ジャックがオレを欲する程、愛してくれれば良い。そう願って。
「よし遊星よ、早く支度しろ」
「は?」
また間抜けな声。
今度は理解不能。なんなんだ。
「オレの家に移る準備をな」
「……っ、ああ」
「顔が赤いな?照れているのか」
「違う」
「まあ良い。グズグズしてられんぞ、言っただろう。オレは短気だと」
「短気にも程がある」
今さっきのプロポーズを思い出して、ぶわわわって顔が熱くなる。
嬉しくて、ちょっぴり照れくさい。
彦星と織り姫。
一足早く、オレらは一つになります。
sweet better
(手を繋いだら暖かくて)
(どうしよう、泣きそうだ)