小説 | ナノ


 わーるど狭隘



※十代がいじめられっこ

日常はコロコロ表情を変わる。なにも無かったものがあったり、あったものが無かったり。ふいにやる気がでたり、ふいに投げ出したくなったり。落とした携帯が飛ばす言葉が君に届かなかったり。
つまらない日常が、また俺に挨拶する。
ヘッドホンにリピートされる曲のリズムに合わせて足踏みしてみた。隣の人の足を踏んでしまった。
そんな通勤ラッシュに揺られて二十分。目的地に到着。徒歩で十分。学校に到着。上履きに履き替えて五分。教室に到着。昨日と変わったのは俺の机の上。花の花瓶がご丁寧にも置かれていて、クスクスと聞こえた笑い声に、平然として。花瓶、持って、床に叩きつけてやった。叫ぶ声、床にシミをつくる水たまり。花は無残にしおれてしまった。しまったのだ。

「なにやってんのアイツ…」
「最悪。せっかく、プレゼントしてやったのに」

聞こえないふりをした。して、心はポロポロと泣いている。なに泣いてんの。悲しくないだろ。いつものことだろ。ほら、変わりない日常がまたやって来ただけじゃないか。なにもない。なにもない空っぽの時間が。

「うわ、どーしたこれ」

が。

「怪我してないか?」
「…俺に言ってるのか?」
「他に誰が居るんだよ。あ、手首切ってんじゃん。花瓶の破片か?気をつけろよ」

空の色が、視界に広がって。いつの間にか出ていた血にハンカチが当てられる。なぜだろう。空っぽの世界が満たされいく。どうせ『フリ』だと思うのに、暖かくて、突き放したくなる。

「だ、大丈夫だから」
「何処がだよ?うわ、足とか切ってないかー?」
「やめろって!」

突き放せば皆嫌がるのに。なんで、あんたが、悲しそうな顔してんだよ。なに、なにこれ。自分が馬鹿みたい。こわい、きもちわるい。教室を飛び出した。にげた。嫌だもう何なんだよ。

(心臓が、くるしい)

どうでも良い世界が、はじめて意味を持つとしたら。それは何だろう。それは君が紡ぐ暖かさじゃないだろうか。
遠くなる青空。白い息は空気と溶ける。

日常はコロコロ表情を変わる。なにも無かったものがあったり、あったものが無かったり。ふいにやる気がでたり、ふいに投げ出したくなったり。落とした携帯が飛ばした言葉は、君の中に届いたり。

『あとで行くから保健室で待ってろよ』

名前も知らなかった君からの返信。ああなるほど。俺の心が揺れたのは、携帯の中で会話していた『君』だからか。適当にネットで出会って。メールし合う仲になって。それから『君』に依存しちゃって。もうどうでもよくなっちゃって。

『待ってる。』

そっけない返事をかえして、足元は保健室にむかう。つまらない日常がまたはじまる。新しい日常がはじまる。冷えた手をこすり合わせた。


わーるど狭隘

(やってきた君はいう)
(『はろー、俺ヨハン』)



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