小説 | ナノ


 02



「二十代」
「なんだよヨハン。気持ち悪いな」
「本当にむかつくな」
「んで、なんだよ」
「十代の奴が、『幸せになれよ』って言ったんだが、どういう意味か分かるか?」
「自分で考えろ」
「だと思った」



「幸せになれ、ってなにがだよ。まるでお別れみたいな…てか、なんで俺が十代のことで、こんなに悩んでるんだ…」
「お、ヨハン」
「げっ、十代」
「なんだよ?あ、明日テスト頑張ろうなあー」
「……」
「気持ち悪い顔してるぞ」
「二十代も帰れよ…」



「あれから二週間過ぎた」
「ナレーションご苦労ヨハン」
「気持ち悪いぐらいに、十代が纏わりついてこない」
「それを望んでたんだろ?」
「そう、だけど…なんか、」
「寂しい?」
「違う!」
「ヨハン、あの馬鹿十代の気持ちも考えたらどうだ?」
「二十代は意味知ってるのか?」
「普通分かるだろ。好きな相手が自分を好きでも無いわけだし、ヨハン、お前は人気だから告白される」
「そんなこと…」
「どうしてお前は、付き合わないんだ?クラスのマドンナから告白された時も断ったらしいじゃんかよ」
「それは、」
「まあ、そのちっせぇ脳フル回転して考えてみろよ」
(告白を断ったのは、)
(十代のいる時間が楽しかったから?)
(告白されるたび、浮かんでしまうのは十代ばかりで、で、)
「うわっ…俺、思った以上に十代のことばかり考えてるかも…」
(もしかして十代は、俺が誰かと付き合って幸せになってるのを願っているのか?)
(俺があいつを嫌いって言ってるから)



「十代!」
「うわ、どうしたんだよ?ヨハン」
「俺が好きか?」
「え、あ…いや、もう好きじゃないぜ。つきまとったりしないから安心しろよ」
「諦めるのか…?」
「諦める?なに言ってるんだよ。これを望んでたんだろ。誰かと付き合ってお幸せにな」
「俺は、たぶん、十代が好きだぜ」
「は…?た、たぶんって」
「……」
「……わ、わっかんねーよ…」
「だよな…ごめん」だっ
「ヨハンっ」



「あははははだっせぇ!!告白したかと思えば逃げて来たなんて!あははははははっ、ほんっっとお前最高だな!!」
「二十代サン、マジ殺ス」
「ヘタレにも程があるだろ!あははっ腹痛い」
「だって俺だって、まだ分からねーんだよ!い、勢いって奴?」
「勢いで行って、土産話が『十代に告白したけど帰って来た』?」
「うっ」
「もう、ヘタレフリル決定な」
「それだけはやめて!!」



「……」
「アニキ、さっきっからボーッとして、どうしたんすか?」
「……うへへ」
「ああもう駄目だコイツ」



「兄ちゃん」
「何だよ馬鹿弟」
「あのさ、ヨハンはさ」
「ん?やっと気付いたのか?」
「俺より兄ちゃんが好きなのかな」
「……は?」
「だ、だって!最近、ずーっと二十代んとこ行ってるし!もしかして、前の告白みたいな奴も、兄ちゃんと間違えてんじゃないかって!!」
「はあ?お前って、本当に残念な脳してるな」
「俺の脳は、デュエルとヨハンだけですううぅ!」
「あー。うざいな」



「なあヨハン」
「んだよ」
「俺のこと好き?」
「は…?」
「なぁ、好き?」
「ちょ…顔近っ…おい、二十代?」
「俺は聞いてんの」
「それは…」
「やぁめぇてええぇぇえ!!」
「十代!?」
「兄ちゃんの馬鹿!この淫乱!ビッチ!誰にでも尻尾ふりやがってアホ!」
「イラッ」
「ヨハンは俺の!!」
「……」
「……はっ!ごめ、違うから!じゃあな!」
「…弟までヘタレだったとは」
「さっきのは?」
「は?嘘に決まってるだろ。なんだよ本気にしたのか?大丈夫だ、お前みたいなヘタレは好きじゃない」
「えぇ俺もアンタが大嫌いだ」
「せっかく俺が芝居してやったのに。気持ち悪いヨハン相手に」
「黙れやビッチ」



「はあ、はぁー」
「あれ、どうしたんすかアニキ」
「俺って実は馬鹿だった!!」
「それは元から」



「ヨハンくんには近寄らず、想いも伝えない気でいたのに言っちゃったと」
「そうなんだよー!またヨハンに嫌われたらどうしよう!」
「まあそれは最初からだと」
「兄ちゃん、ヨハンが好きだった」
「……それは絶対ないと思うす…」
「なんで」
「だってほら」

「だから!お前本当にヘタレだな。だから気持ち悪いんだよ」
「ヘタレと気持ち悪い一緒にすんなって!」
「ヨハン気持ち悪い」
「二十代ビッチ」
「まじ殴るぞ」
「そう言って殴ってんじゃねーかおい!」

「いつも喧嘩してるし」
「喧嘩する程仲が良いっていうぜ」
「確かにそうっすけど、なんかアニキとは違うような…わかんないっすけど」
「……」




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