二文字殺し
口に出してしまえば簡単。
たった二文字の告白。
口が動きません。あーあ意気地なし。
「どうした遊星。今日はやけに無口だな」
「…いや」
あの日言われてから一年。
一度もこちらから言ったことがない告白。今なら言える気がした。
「ジャック」
「なんだ?」
「その、す、」
す、す、す、出掛かる言葉。
上手く口に出せなくて、これだから無口て嫌だな。て自分を攻めた。
あまり気持ちを表に出せなくて、無口になってしまうから彼を不安にさせる。分かってる。だから今の気持ちを伝えたくて。
「す…う…すっ」
一生懸命に言おうとしてる姿が可愛くて、ジャックは答えを知りつつ、口元を緩ませて遊星を見つめる。
「あ、のな、だから、えっと」
「ん」
「す、」
ほら、あと一文字。
ぽん、自分が自分の背中を押した。
いつまでも意気地なしじゃない。
「す、き…」
「もう一回」
「好き…」
「もう一回だ」
「好きだ」
「オレもだ、遊星」
見つめ合う瞳。
触れる唇。
ああもう、本当かわいい。
二文字殺し
(君がいうとその言葉)
(ただの殺し文句です)