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 寝不足は君のせい



星が空を飾り、月が楽しそうに傾いている。時刻は深夜の二時。確かベッドに入ったのは十二時前だったな、と遊星は覚めた目を擦り時計をみた。ちくたくと無音な部屋に響く規則正しい針の音。それに合わせてもれたため息は空気に溶けた。眠れない、誰に問いかけるわけなく呟いた。


好きになってしまったのは会った時から。遊星の前の席に居るジャック。後ろ姿は、何処か王の風格のように思い純粋にかっこ良いと思った。やっとの思いで仲良くなれたは良いが、遊星は気軽に話せる方では無く、会話が上手く続かない。

「今日の昼飯はどうする?いつもの屋上で良いか?」
「ああ」
「……」
「…あ、今日は、晴れるといいな」
「既に晴れてるぞ」
「……」
「……」

無理に会話を続けようとすれば空回り、結局自分が惨めになるだけ。だからと言って、好きな相手と話せるチャンスを逃すのも惜しい。どうしたら良いか分からず、結局は無言になってしまう始末。
そんな日々が続いた今日、ジャックといつものように屋上で昼食をとっていた時のことだ。

「遊星」
「なんだ?」
「好きだ」
「……は?」

唐突の告白に、遊星は手に持つウインナーを地面へと落とした。それにジャックは笑い、「嘘だ」と言いつつ頬にキスをひとつ。何がしたいんだと焦ったのも知らぬふりを決めた。だから今、遊星は眠れぬ夜を過ごしているのだが。

(あれは…本音か?いや、でも、有り得ないだろう…だけど、キスは…)

悶々と脳内で繰り返していると、夜明けが訪れ、窓から朝日が差し込む。今日会うのが躊躇われるくせに、会いたい。顔を見たい。ただの重症じゃないかと思う。

(最悪だな…全く…)

今日、何か奢って貰おうと考えながらも制服に着替える。それから寝ぼけた脳で朝食を済ませ、いつもどうり登校。学校について、ジャックの顔を見ただけでも頬が紅潮してしまう。

「おはよう、遊星」
「おはよう…ジャック」
「どうした?隈が出来てるぞ。考え事か?」
「ああ…まあ…」

無自覚な彼に、ただ小さくため息を吐いた。いい加減気付いてくれよ!


寝不足は君のせい

(言えない、)
(ずっと君を考えてたなんて!)




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