にゃー
あっちー、て団扇を扇ぐ。
節電だとかでエアコン使用は禁止。ヨハンにそう言われたから目の前にあるリモコンは見てみぬふり。
「ヨハンまだかなー」
アイスを買って来ると言ってからいい加減に三十分は経っている。
ここからコンビニまで十分は掛からないというのに。
「ヨハンーヨハンーまだかよー」
ソファーに寝転がりながら、天井に向かって嘆いてみても意味は無い。余計に虚しくなるだけだ。
早く帰ってこーい。という声がまるで彼に聞こえたかのように、玄関のドアが開いた。
「ただいまー」
「おかえり。遅かったな?」
ヨハンはニコニコした様子で、コンビニ袋を片手にリビングにやってくる。
「ちょっとな」
「ん?」
なんだかヨハンの腕の中に、何かいた。ジッと見ていると、そいつが小さく鳴いた。
「にゃー」
「猫?」
「そう!さっき道で捨てられてたからさ、かわいそうだと思って連れてきた」
ヨハンの腕の中にいる黒猫は、まだ子猫で、か細くにゃーにゃーと鳴いた。それにヨハンは嬉しそうに「ここがこれからお前の家だぞー」と話しかけていた。
「…十代?」
「……」
「怒ってるのか?」
「べっつにー」
「えー、あ、こらクロ。暴れるなって!今お前にもご飯やるから」
いつの間にか黒猫に名前までつけてたヨハンに、またムッとした。
じゃれ合う姿を端に見ながら、アイスの袋をあけた。
ああもう!
猫に嫉妬するなんて!
にゃー
(アイスは溶けてて)
(余計にムッとしたけど)