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 リモコン



「リモコンがほしい。」
「は?」

隣で机に頬杖をつく遊星は、何を言い出すかと思えばリモコンが欲しい?テレビのリモコン、無くしたのか?それとも、壊れたとか。しかも真剣に言っているのがなんとも言えない。不思議なことを言うのはいつものことだが、今回は理解不能。

「帰りに電気屋いくか?」
「いや、電気屋では売ってない」
「ゲームのリモコンか?」
「まあ、近いな」
「じゃあゲーム屋いくか?」
「いや、ゲーム屋でも売ってない」

じゃあ何処ならあるんだ。呆れた顔を向ければ、頬杖をついていた遊星は、今度は腕を組んで「自分で作るしかないか…」と独り言。駄目だ、完璧に自分の世界に入っている。

「一体、どんなリモコンだ」
「内緒」
「はあ?」

ここまでリモコンの話をされていたら気になるもの。なのに内緒とはたちの悪い。ふざけるな、と叫びそうになったのも一瞬。遊星はジッとこちらを見つめていた。

「な、なんだ」
「ジャック、好きだ」
「いきなり何だ」
「好きだ」
「言ってろ、馬鹿が」
「……やっぱり、リモコンほしい」
「なんのだ」
「内緒」

もう頭に来て、ふざけるな!と叫べば遊星は少し眉を寄せただけ。いつも無表情だから良く分からないが、少し不服があるんだろう。それはこっちだがな。もう一度、なんのリモコンが欲しいんだと聞けば、目線をずらし、「ジャックの」と小さく呟いた。ジャック、の?オレのリモコン?それはなんだ、性的に解釈していいのか?お前はオレを誘っているのか?この淫乱が!そう勝手に脳内が思っているのとは裏腹に、また小さく呟く。

「いつでもオレの思い通りにできる、ジャックのリモコンが欲しい」
「どうしてだ?」
「好きだと言ってくれないから」

少しばかり拗ねた顔。やはり無表情のせいで良くは確認できなかったが、可愛らしい。遊星は本当に、不思議で、可愛くて、そして、落とし上手。

「そんなもの、作らんで良い」
「なんでだ?」
「愛の告白ぐらい、毎日言ってやる」

唇を耳元に寄せて「好きだ」と囁けば、珍しくたじろく。

「や、やっぱり良い。今のはナシだ」
「そんなわけに行くか。好きだ遊星、愛している」
「や、やめてくれ…!なんか、あんまり愛を感じないぞっ」
「酷いやつだな」
「そのまま返す」

いつだってお前のリモコンになってやるさ。だが、そうだな、遊星、お前というリモコンは欲しいかもしれない。


リモコン


(好きだ。ジャック)
(くそ!それは不意打ちだ!)



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