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 泥沼カノン



※病み遊星

どっ、と体中を駆け巡る血が騒ぐ。ああ、ああ、と呻くような声。やっぱりそんな声が好きだ。地面と背中が擦れるのか、いたい、と小さく言った。痛いのは、いたいのはオレだ。ジャック。

「いつだって我慢して来た。お前はモテるから。いつかオレから離れるんじゃないかと、不安で、不安で、」
「ゆ、せ…」

声が掠れて来た。そうか。オレが彼の喉をせき止めているから。そうか。オレが真っ赤な手で、お前の声を奪っているから。もっと、声が聞きたい。だけどダメなんだ。発すれば発するほど、お前の口からは愛の言葉は溢れてこない。

「どうしたら愛されていると分かる?オレはジャックの一番というのは本当か?いつも猫かぶった女に寄せられ、楽しそうに笑い、セフレでも出来たか?」
「っ…ぐ」
「ジャック。オレはなんだろう。オレはお前の、なんなのだろう」

ひゅー、ひゅー。気管から酸素を求める音がした。だけど、知らん顔。もっと、もっと苦しめて苦しめて、オレと同じ気持ちになって欲しい。そうしたら、納得するような気がする。

「好きだ。ジャック」

酸素を失ってく身体。虚ろな目。必死でのばされた腕が、オレの頬に触れた。冷たくて、そこから伝わる温もりは暖かい。か細く呟かれた言葉は、空気に溶けるように消えてく。だけど、確かに彼は。

「すきだ」

ああ、嗚呼!意識を失ったジャックから手を離すと、今度は自分の口を覆う。嗚呼、ああ、アア!オレは馬鹿だ!ジャックはオレを愛していてくれていたのに!手から身体に震えが広がる。あぁ、目覚めた時、彼はオレを見てくれるだろうか…!


泥沼カノン


(彼は笑った、)
(次の日も、次の日も、)
(まるで愛を唄うかのように)



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