Short | ナノ


いずれ あやめか かきつばた

日常的に徹夜を強いられ仕事に追われる科学班員たちの唯一の息抜きとも呼べる、各々の得意分野を生かしたものづくり。

それらは多岐に渡り、科学班員達の情熱がこめられています。

しかしそれらが人々の役に立っているか・・・残念ながら答えはノーです。

これからお話しするのは、科学班の新米である私が引き起こした事件です。




***




それは教団の場所を移動してから、一ヶ月たったころでしょうか。

科学班は移動初日から休む暇も、荷物を整理する暇もなく山積みの仕事に取り掛かっていました。

科学班の面々のそろう部屋にはまだ段ボール箱などが山積みでした。

それらはまったくといっていいほど整理されていません。私を含む科学班員全員は仕事をするために必要なものだけさきに取り出し、仕事にかかっていたのです。しかしそれでもそれぞれの机の上は書類の山。塵も積もれば山となる、いや、書類も積もれば山となるです。


「なまえ〜。これ、頼むよー。」


「ああ、それですか。わかりました。あ、ジョニーさん、これはジョニーさんじゃないと無理かも。」


「見せて。・・・ん〜、確かに。じゃあこれは俺が。」


「お願いします。」


お互いの専門分野に分けて書類を進め、作業の効率をよくするというのは日常茶飯事。仕事の頼み合いは、書類がなくならないよう気をつけなければいけないことを除けば、メリットが大きいのです。

そうして仕事を続けること2時間。


「コーヒーいる人ー?」


「あ、リナリー!はーいはいはーい!」


「あ、私もお願いします!」


科学班の癒し、リナリーさんの登場です。

彼女は木漏れ日のように、神秘的で美しくてだから癒やされます。私以外にもリナリーさんの恩恵を享受している人は少なくないはずです。


「ねえ、一ヶ月も経つけどこのダンボールの山は全く片付いてないよね?」


コーヒーを給仕しながら彼女がジョニーさんに聞きました。全くその通り。


「うん、片付けるよりも前に急ぎの仕事が立て込んでたからね。」


ジョニーさんは苦笑い。私もそんな質問をされたら苦笑いするしかないでしょう。


「手伝いましょうか?」


と、リナリーさんがこの状況を見かねて提案した。

いやいやいや!リナリーさんに片づけてもらうなんてダメでしょ!

命がけでAKUMAと戦ってくれているエクソシスト様にそんなことさせる訳にはいかない。しかし答えるのは私ではなく。


「でも、大変だしリナリーにそんなことしてもらうわけにもいかないし。」


そうそう、そうですよねジョニーさん!


「大丈夫。暇そうにしてる神田達にも手伝わせるから!」


「でも、リナリーにそんなこと・・・」


「科学班のみんながいつも私達をサポートしてくれてるでしょ?そのお礼だと思って。」


「うーん・・・・それならお願いしようかなぁ。」


え、ちょっと。


「じゃあ、さっそく取り掛かるから。」


「ありがとうリナリー。」


ジョニーさぁぁぁあああん!!なにいってるのあんたはーーーー!

そんな私の心の叫びは虚しく、結局リナリーさんや他の人たちに片付けをしてもらうことになったのです。


「――――なんで俺らがこんなこと。」


「困っている人を助けるのは当たり前です、神田。」


「それにそこまで大変じゃなさそーじゃね?」


「とにかく、少しずつでいいからがんばりましょうよ。」


神田さん、ウォーカーさん、ラビさん、リナリーさんの四人が現在片づけを奮闘中です。

ぶつぶついいながらも一番てきぱきと片づけをする神田さん。お菓子をもぐもぐ食べながらのんびりと片づけをするウォーカーさん。面白そうなものを見つけるたびに作業を中断させてそれを吟味するラビさん。神田さんと同じようにてきぱきと片づけをしながら、たびたびコーヒーを給仕してくれるリナリーさん。

一番働いているのは神田さんとリナリーさんでしょうか。


「おい、おめぇら。」


「なんれすか?」


「ん?なんさ?」


「"なんだ"じゃねえよ。ちんたらやってたら日が暮れるだろ。」


神田さんは、はじめはウォーカーさんやラビさんの片付けぶりに目を瞑っていたようですが、だんだん我慢ならなくなってきたようでいらいらした様子で二人を注意しています。


「ちゃんとやっれますよ。」


「菓子食ってやるな。」


「俺もちゃんとやってるさー。」


「お前は脱線しすぎなんだよ!」


なんだか、つっこみとボケ役がいるみたい。なんて高みの見物をしながらも私は仕事をする手は止めません。


「へいへい、ちゃんとやるって。・・・お、何さこれ。」


結局ラビさん脱線してます。


「少しずつやっていったらいつか終わりますよ。」


「あ゛?んな悠長なこと言ってたらいつまで立っても終わんねえっつの。てめぇの頭は花畑か。」


「はい?なんか言いましたかぱっつんさん。」


あれ、いつの間にか神田さんとウォーカーさんは言い合いしてます。

リナリーさんはどこに行ったのでしょう?


「えーっと、この薬瓶は説明書とかは・・・」


ラビさん、放置なんですね。

だんだんと雲行きが怪しくなっていく場の雰囲気。他の科学班の班員さん方は気にしながらもどうすることもできずに見てみぬふり。うわあ、これ誰か止めてくれないんですかね・・・


「はーいはいはい、やめようさ二人共。」


放置だと思っていたラビさんが二人の間に入ってくださいました。ナイス救世主!


「今面白いの見つけたんさ。これ見てみ?」


ラビさんは二人の気をそらす作戦なのでしょうか、先ほど発見したらしい薬瓶を二人に見せます。中の液体の色は淡いオレンジでした。なんだか見覚えがあるような・・・


「なんですかそれ。」


ウォーカーさんがそれを覗き込みます。神田さんも怪訝そうな顔で見つめます。ラビさんは一人ニヤニヤと企み顔です。


「まあまあ、試してみるさ!」


「「は?」」


ラビさんはその質問に答えないまま便の蓋を開け、液体を二人にかけました。

ぼふん、と。音がしました。

液体と同じ色の煙が、もくもくと二人を包みます。これにはさすがの科学班員たちは黙ってはいませんでした。


「なんだなんだ、あれは誰の薬品だ?」


「まさか、薬品って全部処理したんじゃないの?」


仕事の手を中断させてざわつき始めた科学班員たち。嫌な予感がします。


「げほっ、おい馬鹿兎!てめえなにしやがんだ!」


「一体何なんですかもう・・・」


未だもくもくと煙が二人を包む中、彼ららしき声が聞こえました。

しかし・・・なぜだか1オクターブ以上高くなっていました。そう、まるで女性のように。嫌な予感がむくむく膨れ上がりました。

煙がだんだん薄れていきます。そして


「な、なんですかこれ!」


「はぁ!?」


私の嫌な予感が的中です。なんとなんと、二人共女性になってました。
しかもお二人とも女性が似合う。
って、そ う じゃ な く て!

あれは私が作った薬品!


「ごめんなさい、ちょっと用が・・・あ、って・・・」


ちょうどその時リナリーさんが戻ってきました。

彼女はこの状態に目をしぱしぱしていましたが、やがて目を輝かせました。それから女性化したウォーカーさんと神田さんに駆け寄りました。


「この子たち誰?新しいエクソシスト?」


嬉々としてラビさんや私達を見渡すリナリーさん。説明をしたのはラビさんでした。


「いや、これはユウとアレンさ。」


「えっ!?どうしちゃったの二人共。」


「これこれ。」


そう言ってリナリーさんに薬瓶を渡したラビさん。リナリーさんはくすり・・・?と首を傾げていました。


「面白そうだったしな。二人でちょっとお試ししたんさ。効果はどれくらい続くのか知らねえけど。」


にしても、二人共超美人さ!

と言って笑うラビさん。次の瞬間、彼の首筋には鋭利な爪と鋭利な刃物が当てられていました。ウォーカーさんと神田さんのイノセンスです。


「ひっ!」


「おい馬鹿兎、地獄に落ちる覚悟はできているだろうな・・・・?」


現在女性の神田さんでも、男性だった時と変わりない殺気でした。


「僕は君を天国に逝かせてあげる自信がありませんねえ・・・」


ウォーカーさんは男性だった時と変わりないないような気がします。まだ、声変わりが始まっていなかったし元々中性的な顔立ちだったせいでしょうか。

呑気な解説ですが、この場に漂う殺気は他を押しつぶしてしまいそうなくらいでした。


「わ、悪かったさ!でも、すすすすぐ戻るしっ、な?」


「二人共、落ち着きましょうよ。ほら、イノセンスおろして。」


リナリーさんも止めようと神田さんの腕にそっと手を置きました。その手はまだ中身が入ったままの薬瓶です。


「うるせえ!」


神田さんはリナリーさんの手を振り払いました。

彼女の手から薬瓶が飛び、蓋をしていたはずのコルクは抜け、中身が飛び散ります。


「・・・・あ。」


という声が聞こえた刹那。

科学班員の男性陣全員+ラビさんから煙が上がりました。



  


熟女、ギャル、お嬢様が混在した美人たちの勢ぞろいでした。

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