Short | ナノ


となりのキミ、

「あぁ〜もう!なんでよぉ、なんであたしじゃないのよぉ〜〜〜〜〜〜」


「うるさいなぁ、」


「だってぇ〜〜〜〜〜」


泣きまねをしながら私の机に突っ伏し悔しがる杏に私はうるさいなぁと苦笑した。


今日、席替えをした。

くじ引きという定番の席替え方法で自分の席を決めたのだが、女子たちの殺気だった様子といったら男子が引く(怯える)ほどのものだったのだ。

その女子が殺気だつ理由はただ一つ。クラスの人気者"神田君"の隣をゲットするためだ。

"神田君"は眉目秀麗、文武両道に長けたすばらしい男児である。

欠点なんてありません、っていう感じの奴で無愛想で女子をまったく受け付けないという態度が人気を高めている一つの要因のようだ。

そんな女子の人気の的の"神田君"が、私の隣にやってきたせいで今、目の前の友人である杏は悔しがっているのである。


しくしくと泣きまねを続ける杏。

・・・・まさかマジでないてんの?泣きまねにしては長すぎないか?


「神田君っていっだら、クラスの人気者だんらからぁ・・・」


顔をあげた杏の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

私が真っ先に心配したのはもちろん自分の机である。

ぎょっとして、彼女の顔面がつけられていた場所を見ると見事に机は涙と鼻水の混じった液体でぐちょぐちょで大惨事となっていた。


「ちょ、勘弁して!私の机大惨事!」


「真っ先に心配するのがそこ!?あたしの涙を慰めるとかしないわけ!?」


「あんたの涙より私の机だバカ!」


「何よ友達の心配位しなさいよバカ!!」


ギャーギャーと不毛な争いを始めた私たち。

昼休みでみんなが騒いでいるとはいえ、私たちの馬鹿でかい声はかき消されることなくしばらくの間響いていた。

そんな不毛な争いが終了したのが昼休み残り十分のときだった。

まさに私たちの不毛な争いの火種となっていた"神田君"が来たのだ。


ギャーギャーと騒いでいた杏がピタリと口をつぐみあわてて顔をハンカチでごしごしとこする。

確か鼻水も出てたはずだが・・・。

そこまでかまっていられなかったのだろう杏はいつの間にか涙と鼻水でぐちょぐちょだった顔がうそかのような綺麗な顔をしていた。


そして私の隣に座る"神田君"をうっとり見つめる杏。もちろん杏以外のクラスの女子もうっとりと"神田君"を見つめている。

それを無視しカバーのかけられた文庫本を読み始めた"神田君"。よく無視できんなこいつ。

けっ、と心の中で小ばかにしたように吐き捨てるとその心の声に気がついたのか"神田君"がこちらをみた。


思わずドキッとしてしまったのは胸が高鳴ったのほうではなくただ心の中が聞こえたのだろうかと不安になったからだ。そうだ、きっとそう。


こちらを向いた"神田君"に杏は早くもぶっ倒れてしまいそうだ。



それを視界の端で確認したものの"神田君"から目が離せない。私は体が硬直してしまっていた。


「・・・・・なに。」


必死で無表情で声を絞り出せば"神田君"は、ふっ、と笑った。


教室にいた女子全員が「キャーーッ!」と黄色い歓声を上げたあと、倒れていく。

杏もその一人である。

クラスの女子が急に倒れだしたとか、なんてきみの悪い光景だろう。心の中ではそう思いながらも未だ私は"神田君"から目を離すことはできていなかった。


「だからなにってば。」


剣を含んだ声音で"神田君"を見つめれば神田君はまたふっ、と笑った。


「いつまでそうしてる気だよ。」


「・・・・・・・・・」


「せっかく隣になったってのに、その態度か?」


くつくつと笑い出した"神田君"に私は嫌な予感がした。


「・・・・な・・・まさか・・・ちょ、"神田君"?」


じりじりと顔を近づけてくる神田君。私はじりじりと顔を神田君から離そうとした。

しかし。にやりと笑った彼は私の手をつかむと私を力いっぱい引き寄せてそのまま私と唇の熱を共有させた。


教室にいた男子がどよめく。女子は全員倒れているので見ていない。ってか倒れた女子ほったらかしていいのかよ。


だが今までの私の努力を無にされ私は激怒した。


「な、な・・・・!!!なんちゅうことやってくれんだテメェは!!!」


「いいじゃねえか、女子は見てねぇ。」


「そこの男子見てるだろバカヤロウ!」


ああもうこれで私は終わった。女子にミンチだ、コロサレル。

怒る気力さえも失わせる後の悲惨な未来予想図に私は机に突っ伏した(杏の先ほどのへんな液体はよけて)。


「あー・・・もう、最悪。あんたのせいよ、バカ。」


私は突っ伏したまま"神田君"を睨んだ。

彼は余裕の笑みを浮かべて笑っている。


「なんでそんな余裕なのよ。彼女がコロサレル危険にさらされてるっていうのに。」


「大丈夫だ。」


妙に自信たっぷりな声音だ。

私はぶすくれながら「なんでよ。」と"神田君"に問いかけた。


すると彼は自信たっぷりの笑みでこういった。


「俺がお前の隣だからだ。」







(えぇっ!?なまえと神田君、ずっと前から付き合ってたの!?)


(・・・・まあ。)


(そんならあきらめるしかないわ〜。なまえが相手じゃかないっこないし。)


(なにそれ。)


(はぁ?だってお似合いじゃんあんたと神田君。)


(・・・・・そりゃどうも。だけどあの女子の視線は何とかしてほしい。)


(そのうちなれるわよー。)

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