朝のぬくもり
「ん・・・・」
そんな寝ぼけた甘い声が耳に心地よく響いた。
それはもちろんなまえのもので、その高くて甘えたような声を俺は毎朝目覚ましがわりに聞いている。
どれだけ深い眠りについていようが、なまえの声は俺の脳にダイレクトに入って目を覚まさせる。
「・・・ふぁぁ、」
隣であくびをする声が聞こえる。ゆっくりのそのそと起き上がったなまえはそこで一度伸びをしたようだ。
そんなちょっとした動作でも可愛いと思う俺は重症だ。
なまえは小さく寒いとつぶやいて布団を出ようか逡巡し始めた。
俺はまだ布団になまえと寝ていたかったし何より今日の朝はとても冷える。なまえのぬくもりがほしかった。
なのでよし、という小さな呟きをもらしてベッドを降りようとしたなまえの腕を瞬時につかんでなまえをベッドへと戻らせた。
「きゃ、」
そんな小さな悲鳴とともにベッドに倒れこんだなまえ。
俺はそのままなまえを抱き枕のように包み込んだ。
できれば全身で余すところなくなまえにずっと触れたいがそれはどうやったって無理なのでせめて触れる面積が多くなるようにと密着する。
ドキドキとなるなまえの心臓が伝わって、可愛いと思った。
「ゆ、ゆ、ゆう・・・!!」
顔を真っ赤にしてどもったところもまたなまえの可愛いところだ。
未だいちゃいちゃすることになれないのでいじめがいも可愛がりがいもあるというものだ。
あったけぇ、とほっとしたような息を吐けばそれがなまえの耳に掛かったらしい。なまえは体をびくりとこわばらせてさらに顔を赤くさせた。
思わず笑みがこぼれる。どれだけ可愛いんだこいつは。俺をきゅん死にさせるつもりかといいたい。
「・・・あったけぇ。」
そういって顔をなまえの髪にうずめるとシャンプーのいいにおいが香った。
匂いをかいだのが分かったのかなまえはまた体をこわばらせたが、かまわずに今度は抱きしめる力を強めた。
「あ、あの、ユウ、あさごはん・・・」
「いらね。」
「で、でも、たべなきゃ健康に・・・」
「なまえがいれば健康だ。」
「あ、う・・・そ、そんなわけ、」
「ある。だからだまって目ぇ瞑っとけ。」
「う、うん・・・」
たまには、こういうのいいかもしれない。
そう思った休日の朝だった。
あさのぬくもり
(あ、あの、ゆう・・・?)
(どうした。)
(ちょっと、顔がみたいな・・・・なんて)
(やっぱお前すげぇ可愛い。)
(か、かわっ!?)
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