Short | ナノ


Yu love ○○!





「おい、あのウワサは本当なのか?」


「あぁ、本当らしい。隣の部屋の奴が、証言してる。」


「まさかなぁ・・・・・・」





Yu love !




声が、聞こえた気がした。

神田は声のしたほうを振り向く。

しかしそれは気のせいだったとすぐに気づいてため息をついた。




昨日、部屋で寝ているといつもは隣に寝ているはずの姿が無かった。

気づいたのは、朝に胸板に頬を摺り寄せる感覚がいつまで立ってもこなかったからだ。

それは神田の至福のひと時だった。甘えるように温かさを求めるように胸板に頬を摺り寄せる姿はとても愛らしい。

いったいどうしたんだと目を覚ましたときにようやく、いないことに気づいた。


「なまえ、どこだ。」


名前を呼んでも現れない。ドアがかすかに開いていたのでどこかへいったのかと思っていた。

どうせ帰ってくるとそう思っていたが、神田はいついなくなったか分からない"なまえ"を寝る前に見たのを最後に姿を見なくなったのだ。



姿を見なくなってから一日がたった。

一行に"なまえ"が姿を現さないのに対し、神田は心配になって段々と苛立ち始めた。

その苛立ちは態度や表情に表れ、モヤシことアレンとはその日何度も言い合いとケンカを繰り返した。


そんな神田の異変に気づいた最初の人物はラビだ。

昼食を神田は食堂で急いで食べていた。もし、自分がここにいる間に"なまえ"が部屋にいれば寂しいと感じると思ったからだ。

そこにラビが現れる。ラビはニヤニヤとした相貌をし、いつもからかうのでいけ好かないやつだと神田は思っている。


「・・・・・」


神田はラビを無視した。ラビは目の前に座り神田をニヤニヤと観察している。

しかしその翡翠の瞳が面白そうにひかり、赤い髪がゆらゆらと揺れるたび神田は不愉快な気持ちになっていった。


「・・・・・・・・なんだ。」


あまりにもじっとりとそして無言で見つめてくるラビに対し、神田はイライラが最高潮に達して睨まずにはいられなかった。

そして最初に出た言葉は怒りを抑えに抑えたが不機嫌そうになってしまった。


「べっつに〜〜?ユウを観察してるだけさ。」


「俺のファーストネイムを口にすんじゃねぇ。」


射殺さんばかりにラビを睨みつける神田に睨まれている当の本人はへらりと笑って返した。

のらりくらりとした態度に神田のいらいらは増した。

蕎麦は半分残っていた。しかしそれを食べる時間さえも惜しくなったので残すことにする。

蕎麦を残すなんてこれまで無かった神田にジェリーは驚愕したが、神田はそれを無視し、早く自室へ戻った。




部屋には、"なまえ"は帰ってきていなかった。

神田は落胆した。いったい自分は"なまえ"に何をやってしまったのだろうか。でなければあいつはどうしてこの部屋からいなくなった。

神田はベッドに倒れこむ。いつもは自分がベッドに入ろうとしたところを見計らい一緒にベッドに入り眠るというのに今日はこの部屋にいないせいで隣に来る温かさはない。




まったく、いったいどこに言ったんだ。

そう神田がつぶやきかけたときだ。


声が、聞こえた気がした。

ばっ、とベッドから起き上がりドアを見た。

ドアは先ほど鍵まで閉めた。

だからドアは開いていない。・・・・なら、どこから。


また、声が聞こえた気がした。というより聞こえた。

窓だ。そうかと思い、窓を見た。


するとそこには・・・・いた。

紛れも無く、"なまえ"だ。

少しつりあがった目に、そして暗闇でも光りそうな、エメラルドの瞳。そして何より特徴的なのは、なんとも愛らしい、


「にゃあ。」


という声だ。

その声を聞いて神田は安心した。この鳴き声は、紛れも無く"なまえ"だ。"なまえ"以外の何者でもない!!

口元が安堵と、きちんと帰って来てくれたという嬉しさで緩んだ。神田はすかさず窓辺に寄り、なまえを抱き上げた。


「どこいってた。」


と、一言。

"なまえ"は口に何かくわえていた。・・・・それは、あのモヤシことアレンのティムキャンピーだった。


どうして"なまえ"はいなくなったのかという疑問が分かった。

"なまえ"は、ティムキャンピーを鳥と間違え追いかけて道に迷っていたのだ。

神田はティムキャンピーを"なまえ"の口から出すと"なまえ"のヨダレだらけのティムキャンピーを部屋の外に出した。

そうしておけばいずれアレンに見つかるだろう・・・・ヨダレつきで。

神田はふっと、笑みをもらした。


「にゃあ。」


"なまえ"が鳴いた。

そして神田は、"なまえ"のおかげで目覚めが悪かったのを今から取り戻そうとベッドに横になった。

今度は"なまえ"を抱きしめて寝た。

そうすれば、腕から抜け出そうとしても絶対に気づける。

そうして神田は"なまえ"と一緒に眠りについた。





Yu love cat!




(おい、あのウワサは本当なのか?)


(あぁ、本当らしい。隣の部屋の奴が、証言してる。)


(まさかなぁ・・・・)


(((神田が猫を溺愛してるとは。)))





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