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騒がしい廊下で




「ちょっと!志摩君!」


騒がしい廊下で一生懸命志摩君に声が聞こえるようにおなかに力を入れて声をだした。

彼は確か修学旅行の実行委員。

女子に囲まれて身動きが取れないようだった。

修学旅行では自由行動が認められている。

誰と一緒に歩いてもいいのだ。

だから女子が皆志摩君と一緒に行動したいがためにこうして女子みんなで志摩君を囲んでいるのだ。

私も実は心の中でひそかに志摩君と自由行動をしたいと思っている一人だ。

しかし、私みたいな黒縁眼鏡をかけた地味な子を彼があいてをしてくれるわけも無いので半ばあきらめている。


ただ、今は学級委員として、そして修学旅行の実行委員として志摩君を呼ばなくてはいけないので女子の間を縫うように抜けながら志摩君を呼んだ。


「志摩君!」


小柄な私は周りの女子の波に今にも押しつぶされそうだ。

必死で手を上げぴょんぴょんと飛ぶ。

すると志摩君は気づいてくれたのか周りの女子の波を抜けて私のところまで来てくれた。


「ナマエさんやん、どないしたん?」


私は取れそうになっていた眼鏡をかけなおして志摩君に用件を言った。


「修学旅行の実行委員の人は理科室に集まってくださいって。さっきの放送、聞こえてた?」


「ああ、かんにんな。わざわざ呼びにきてくれたんやろ。」


「同じ実行委員だから。」


「でも助かったわ。ほな行こか。」


そういって一緒に歩き出すと後ろから女子がまだ騒がしくしながら志摩君の後ろをついてきた。

私はそれにびっくりしたけれど志摩君は平然と歩いていた。

そんな志摩君をみて、やっぱりもてるんだなとおもった。


「志摩君、もてもてだね。」


「今みたいに困るときもあるんやけどな。」


「みんな自由行動を志摩君と一緒にしたいんだよ。」


「ナマエさんはどうなん?」


「へ?」


「俺、ナマエさんと自由行動したいんやけど。」


「え・・・なんで、私と?」


「俺ずっと一生懸命なナマエさんが好きやったんや。」


「う、うそ!だって、私・・・」


「地味やからとかあかんよ。だってナマエさん眼鏡外すとかいらしいやん。」


志摩君が立ち止まって私の眼鏡を取る。


「あ、眼鏡はずすと・・・」


周りがぼやけまくって何もわからない。

志摩君の手らしきものを捜して手を闇雲に伸ばすと手首をつかまれ引き寄せられた。

反射的にぎゅっと目を瞑る。

そしたらちゅ、って唇に柔らかいものが触れると同時に「キャーーー!!」という悲鳴が廊下中に響き渡った。


「え、ちょ、志摩、くん・・・?」


「ナマエさん、俺とつきおうてくれへん?」


私はその場に卒倒した。






見せ付けるように、キス



(・・・え、ちょ、ナマエさん!?)


(うわーーー!!委員長が倒れたぞーー!!)













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