校庭の真ん中で
正十字学園の校庭の真ん中に大きな木がある。
その大きな木のなまえは忘れてしまったけれどあの木にはこんなジンクスがあった。
あの大きな木の下でキスをした男女は結ばれるというそんなジンクス。
夜こっそり大きな木の下でキスをしあった人たちは何人もいるという。
「なんだか、ロマンチックだよね。」
「あぁ?なんがや。」
「この木のジンクス。」
「あれか。」
「そう。」
私と金造は大きなジンクスのあるという木のしたに座っていた。
中学校から一緒だった金造。
私はずっと金造のことが好きだった。
喧嘩っ早くて気性が荒いけど、まっすぐいつも前を見ているような金造がきらきらしていてかっこいいと思っている。
私からすれば金造は髪の色みたいなまぶしさを放つ太陽のような存在だ。
金造のバカさ加減を見てると悩みとかうじうじしてた気持ちがバカみたいだと思えてくるし、
金造が素直だからか私も素直でいられるし。
お兄さんに似てかっこいいし(一回だけ会ったことある)。
「あんなの絶対迷信やで。」
金造が急にそんなことを言い出した。
「なんで。」
私はちょっとむっときて反抗的に聞いてみる。
「ジンクスなんてそんな不確かなもん信じる奴がおかしいんや。」
その言葉で私のジンクスを信じる気持ちが失せた。
「なにそれ・・・」
「なんや文句あるか?」
「別に・・・」
「なんで急におちこんどるんや。」
「だって金造がジンクスないなんていうから・・・
信じてた私がバカみたい。」
はぁ・・・なんてため息をつけば。
金造がガシガシと後頭部を掻いて私に真剣そうに向き直った。
「な、どうしたの。きん・・・んっ。」
どうしたのかと金造を向けば。
急に、金造の唇が私のそれと重なった。
いきなりのことに驚いて金造の名を呼ぼうと口を開いたら。
その隙を見逃さず金造の舌が私の口内へ侵入してきた。
「ん、は・・・んっ・・・」
頭がくらくらして息が苦しい。
けれどこの苦しさはなんとも甘美で。
私は息を必死で吸い込みながら金造の胸板あたりのシャツを息が苦しくなるほどに強く握った。
ようやく唇が離れて。
私は自分の口を手の甲で抑えながら空気を吸い込んだ。
「い、きなり・・・なんで・・・」
「悲しそうな顔するから、キスしてもうたやないか・・・!!」
「は・・・?」
「いい加減気付け!俺は、お前が好きなんや!」
なぜか頭をはたかれる。
私はいて、といいながらそのままうつむいて、
「私も好き。」
そういった。
校庭の真ん中で
やっぱりジンクス信じてるんじゃん。
(ねぇ金造。)
(んな、なんやっ。)
(みんな、見てる。)
(・・・・あ。)