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やくそくを今度こそ

「なんで変装なんか・・・」


神田は私から視線を逸らす。その様子から、神田に何か後ろめたく感じていることがあると私は気づいた。それも、私に対して。すぐにその何かに思い当たる。
私の絵だ。


「ねえ、そんなに絵が見たくなかったの?」


「・・・・」


「ならそういえば良かったのに、どうして言わずにこんな真似を?神田らしくないわ。」


神田の沈黙を肯定と受け取って、私は質問を重ねた。神田は罰が悪そうに視線をそらしたままだ。
絵を見たくないなら、正直な神田は直ぐにそういえばよかったはずだ。誰かを傷つける言葉ですらためらわぬ神田なのだから、絵を見たくないということなど簡単ではないか。なのに、なぜ。


「・・・俺は絵を見てもなにも言えない。」


「どういうこと?」


やっと話し出した神田の言葉がよくわからなくて私は首を傾げた。


「絵のことをなんも知らねぇ俺が見ても、感想もなにもいえねぇし、お前を喜ばすこともできねぇ。」


「神田・・・」


私は神田のその本音に、驚いていた。
人のことを喜ばせてあげたいと思う程、神田はこんなにも優しい人だっただろうか。申し訳なさそうに顔をそらすほど思いやりのある子だっただろうか。


「ただ、見てくれるだけでよかったのに。それだけで私は嬉しいのに。」


「がっかりされたくなかったんだよ。・・・結果傷つけた、すまない。」


なんてかわいらしい理由なのだろう。神田は人からどう思われるかなんて気にしない人間だと思っていた。孤高の美剣士。それが神田だと思っていた。


「ありがとう、神田。」


神田の姿を見ていると、彼を撫でてあげたくなって、私は撫でた。神田ははじめは目を見開き戸惑っていたようだが、後半はされるがままだった。


「この任務が終わったら、絵を見に来てくれる?」


「ああ。」


神田は素直にうなずいた。きちんと私の目を見て神田が答えてくれたのがとても嬉しくて、私は笑った。こんどこそ、私の絵を神田が見に来てくれる。やっとここまできた。今まで待つだけではなくて、きちんと神田と話せばよかったのだ。

「さ、それじゃあ任務をしなくちゃね。」

私は急に自分に元気がでてくるのがわかった。くるりと絵の方へ振り返る。

と。

「なまえ!」

目の前に浮かぶ私の絵が最後の景色だった。







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