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初めて高尾君と喋ったときは、心臓が止まるかと思うくらいどきどきして、さらに興奮していた。ちょこちょこと緑間くんから彼やバスケ部の様子を聞いて一番高尾君に興味があったのだ。だから鷹の目と言われる彼の能力を目の当たりにしたときは発狂するかと思った。何もない空間と、目があったと感じた体験は一生に一度もないかもしれない。

この高尾君との体験がきっかけで私は男子のバスケの虜になった。高尾君のようなすごい能力を持つ人がいるバスケ界はどんな風なのだろう。あの能力で彼はどんなプレイをするのだろう。期待して見た光景は私の期待以上。そしてその一線でプレイする高尾君の鷹の目を使ったパスや努力で得た正確なそれに、私は一瞬で彼のファンになったのだった。


「今、この前の練習試合の映像を見てるの。高尾君がやっぱり一番すごかったよ!」


「なまえちゃん、公正な目でちゃんとデータ取れてんの?」


「ちゃんとデータしてるよ?」


「いーや、どうだか。」


「部活のと私のがあるの!」


「え、そうなん?見して見して。」


「や、だ。」


「あ、なまえちゃんのロッカーの中なんだ。」


「もう!」


高尾君は私が彼の後ろの自分のロッカーに視線を向けたのを鷹の目ですぐに見てしまった。能力の無駄遣いすぎる。


「みちゃダメ!」


「えー、いいじゃんちょっとくらい。どんなデータとってるか気になるし。」


「ぜったいにダメ!」


嫌だといっているのに、彼は私のロッカーの中をみようとしてくる。私は自分のロッカーの前に立って、高尾君を通さないように立ちはだかった。


「み、見るんだったら、ぜつぼうするよ!」


「それ、まちがえたの?」


「へ?(えっと、見るんだったら、はあってるよね。絶望するよって・・・)あ!!ちがう、ぜ、ぜっこうのこと!」


「ふぅん?」


高尾君は少し意地悪そうな笑顔を見せて、上から見下ろしてくる。外国人の血が入ってる割には背が日本人女子高生並みの私は、すっかり彼の影の中に収まってしまう。


「ちょっと絶交は困るかもな・・・」


ロッカーに手をついて、私の耳元に唇を寄せた彼は囁いた。温かい息と、振動している声の音に私はびくりと体を震わせる。


「高尾君、だ、だからやめようよ。」


私は彼のジャージの裾を少し掴む。


「・・・じゃさ、下の名前で呼んでくれたらいいよ。」


すると高尾君はその裾をつかんだ手を取って、自分の腰に回させた。私は自然と彼と密着することになる。それから、しっかりした体つきの彼がすっぽりと私を包み込んだ。

高尾君の匂いに包み込まれて安心しながらも、私は彼の要求に少し戸惑った。

今まで、アメリカに私はいたのだけれど、もちろん友達同士では下の名前でしかも呼び捨てで呼んだりする。というか、日本みたいに君付けとかさん付けとかそういう、呼び方の"中間"みたいなものがない。これは日本独特のものであると思う。
それから、仲のいい男友達との間では苗字ですぱっと呼び合うというのも、日本の独特のものだろう。
そういう日本らしいとこみたいなのが私は大好きなのである。
だから私はずっと、そういう呼び方に憧れていて、そして、相手の苗字を呼ぶということを好んでいた。

わざわざそういう日本らしいものを手放すなんて、少し勿体無い気がした。


「私、この呼び方のほうが好き。」


「えー、でも俺、なんか距離感じるけど?」


「距離?」


「そ。心の距離。」


「そうだったんだ・・・」


高尾君のその言葉を聞いて、私は彼の腕の中で少し検討してみることにした。なるだけ彼が望むようにしてあげたい。
普通に呼び捨てだろうか?それとも、君をつけたほうがいいのだろうか?


「ね、くんをつけたほうがいい?」


「つけないほうがいいかな。」


高尾君的には、呼び捨てがいいようだ。
「じゃあ・・・」と私は言って、腕の中で少し動いて彼を見上げる。


「かずなり。」


「っ・・・」


呼んでみると、よほど嬉しかったらしく、彼は私を抱きしめる力を強くして顔を私の首筋当たりにぐりぐり寄せた。


「くすぐったい。そんなに嬉しい?」


「そりゃーそうっしょ!もっと呼んで欲しい。」


「かずなり〜。かずー。」


「あ、それいいじゃん!」


「かず?」


「それそれ!」


私が高尾君の胸に埋れてしまうぐらい、彼は私を強く抱きしめた。そしてそれから、ちょこんと顎を私の頭の上にのせたり、唇で頭にキスをしたりした。
私はその唇が触れたり、高尾君の・・・もとい、かずの吐息が頭の地肌に当たってふわりと撫でられたり、部活が終わって、いつもよりずっと濃いかずの匂いに包まれてほっこりするのを感じながら、自分からもきゅっと彼を抱きしめた。


「なんか、なまえちゃんから名前呼びって、くすぐったい感じするわ。」


「くすぐったい?」


「そ、嬉しくてからだがむずむずする。」


「これから、ずーっと呼び続けるんだから、早く慣れてね。」


「・・・キスしていい?」


「どーぞ、かず?」


「ははっ・・・ほら、目閉じて。」


「・・・ん・・・」






俺は鷹である!名前はかず!なーんつって。




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