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無意識のゼロセンチ




「待てゴルァァァァァアアアアアア!!」


「誰が待つかーーー!!!!」


家の中を荒々しく駆け回る声に俺はまたかと一つため息を漏らした。

またなまえが金造に悪戯をしたのだろう。追いかけられているのがなまえの様子からそのようだ。

いつもあの二人の駆け回るルートは決まっているので俺は先回りして二人の行く先に立ちふさがった。


「やめや二人ともォ!!!」


「げっ!またか柔兄!」


「助けてや柔兄!」


そういってぎゅっと抱きついてきたなまえ。

目には涙を浮かべている。

いつもは抱きついてなんかこず、後ろに隠れるのに、目には涙を浮かべて前から抱きついてくるなんてただ事ではないなと思い守るようにとっさに背中に手を回した。


「金造が!金造がうちにキスしてきよった!!」


「なんやてぇ!!?」


ぎろりと金造を睨む。

金造はその金髪をあわててぶんぶん揺らして首を振った。


「こ、こいつが俺の寝起き襲うから悪いんや!!」


「せやけど!!ふぁ、ファーストキスやったんやで!?しかも、金造、うちと誰かを間違うてたんや!これほど最悪なことないで!?」


キスされてしまうなまえも無防備すぎだが、キスした金造も金造だ。

俺はなまえの背中に手を回したまま金造の前まで来た。そして息を吸い、頭を思いっきりはたく。


「ったぁーーー!!何すんねん柔兄!」


「まず謝るんが筋っちゅうもんやろが!!あやまりぃ、なまえに!」


「なっ、なんで俺がこないな奴に・・・ったぁーーー!!」


「もういっぺん言うてみぃ!しばくで!」


「もうしばいとるやんか!!」


頭頂部を抑えながら目に少し涙を浮かべこちらを睨み上げる金造に俺は一つ咳払いをする(・・・ゴホン)。


「とにかく、なまえに謝れ金造。ファーストキスやったんやで?ファーストキス。」


「・・・・・・」


ファーストキスと強調すれば金造は唇を引き結んだあとなまえを見た。

なまえはうっすらと目に涙を浮かべていたが、ごしごしとこすった後金造を目を怒らせて鋭く射るように睨んだ。


「・・・・・かんにんな。」


ぼそり、ふてくされるように斜め下を見つめて言った金造になまえはぼそりと突き刺すように言った。


「バカ阿呆最低最悪寝起きだからって彼女と間違えんなボケ。」


「・・・・・」


金造は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「金造も反省しとることやし、なまえも金造許したってな。」


「・・・・まぁ、うちも悪かったし・・・・・」


口をとんがらせる姿はまだまだ子供のところもあるが、こうして許してあげれるようになったところは大人になったと思う。

俺は、えらいえらいという気持ちを込めて無言でなまえをわしわしとなでた。

ふふ、となまえが笑い身を少し捩る。そこではたと気づいた。

なまえと、自分の体が密着していることに。(胸が、あ、あたって・・・・・!!)


「・・・? どうしたん、柔兄。」


身長差があるせいで上目遣いとなってこちらを見つめてくるなまえに俺は不覚にも顔を赤くした。









(ちょお、どうしたん?柔兄?・・・・ねえ、柔兄ー・・・・)


(・・・・・・(はよ離れてくれ・・・・!!))









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