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新しい弟

・・・任務だからといってこれはひどい。私じゃなくても良かったはず。

自分の体を見下ろすと、いつもとかわりのない制服。

しかし、すこし頭を傾けるとずるりと落ちそうになった桂が。


もう一度。・・・・任務だからといってこれはひどい。

とてもではないが男になんて見えない。背丈は小さいし、自分の体は男の人みたいに筋肉質でもないしがたいが言い訳でもないし。

そもそも、男装が必要な任務だったらぜったいこれは私じゃなくても良かった。だって祓魔師の男女比率は男のほうが圧倒的に多い。京都主張所にだってそこらへんから男なんてほいほい出てくるのに。

どうして、私?

とてもじゃないが人前に出られるような格好ではないと思う。

こんなへんてこりんな格好、どうして人前に見せられようか。

玄関の外に待つ祓魔師の仲間たちが大きな声で私を呼ぶ。

私は玄関でどうしようかどうしようかとおろおろするばかりだった。

と。


「おいなまえ、はよう―――」


がらりと戸が開く音がして、柔造さんの声が聞こえた。

とっさに小さい子がお化けにおびえたみたいに縮こまって体を丸くして頭を抱える。

こんな格好、柔造さんに見せられない。早く勘違いだったってどっか行ってと心の中で念じるも、柔造さんはただ固まってじいっと私を見ていた。

顔が焼けるように熱くなる。ああ恥ずかしい恥ずかしいと心の中で叫んでいると、


「っわぁっ・・・」


急に右腕をぐいっと引っ張られて立ち上がらせられた。


「やっ・・・」


必死に顔を隠そうと左手を持ち上げるも左手もつかまれてしまい必死にうつむく。

すると顔を覗き込まれてあまりの顔の近さにどきりと心臓がはねた。


「っっ・・・・」


息ができない。ぎゅっと目を瞑るとまつげに柔造さんの熱い吐息がかかった。


「・・・・・・・なまえ、男装したんか。」


しばらく見つめられてやっと柔造さんが口を開いた。

まだ吐息がまぶたにかかっているせいで声を出すことができなくて、黙ってこくりとうなずく。

そうすると柔造さんが、ふっと笑って私の頭をなで、それから私を抱きしめてぽんぽんと背中をたたいた。


「まるで新しい弟ができたみたいや。」


そういった柔造さんに私は「へ?」と顔を上げる。

柔造さんはにっこりと優しいけれど元気な笑みを浮かべていて。

ちっとも変じゃないって思っているということがその言葉と表情でわかってほっとした。


「変じゃないですか・・・?」


「まるで新しい弟ができたみたいやっていうたやろ?」


「は、はい。」


「さ、任務いこか。」


「はいっ、柔造さん!」


元気な返事を出すと、柔造さんは笑って、その大きな手で私の頭をなでた。






(すいません、ぎりぎりまで出てこなくて。)


(かまへんかまへん。(あかん、めっちゃかいらしい・・・))




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