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一番に君の幸せを願ってる




不浄王討伐の際に、藤堂三郎太から深手を負って不浄王が倒れた二日後に私は目を覚ました。

傷が痛いなと思いながら起きれば、ありえない知らせが風の噂でやってきて私は驚いて蝮のところへと向かった。


「蝮!」


蝮の部屋へと向かうとちゅうの縁側に、蝮はいた。庭を見つめる蝮はどこか憂いを帯びて青白い肌をして、体が万全でないことが見受けられる。

右目には眼帯をしていて、ああそういえば蝮は・・・と不浄王が復活してしまったときのことを思い出した。

蝮の姿を見て一気に先ほどまでの興奮が冷めた私はただ妹分である彼女を心配するように蝮の横に腰掛けた。


「なまえ・・・・」


「蝮、大丈夫なんか?右目のほかに怪我したとこないんか?まだ体調が優れんのか?それに柔造と結婚するてどういうことなんや。」


矢継ぎ早に質問攻めをすれば蝮は困惑した。

私はすまんと謝って一つ一つ蝮に答えさせる。


「そうなんか・・・・」


蝮から聞いた事実は私を沈ませるには十分だった。

間違いを犯した代償が大きすぎる。

蝮の頬に手を当てれば、恥ずかしかったのか幾分か頬に赤みが差した。


「そんで、柔造と結婚するてどういうことや・・・・」


するりと頬をなで、蝮の手を握る。

蝮は事の顛末を話した。


「・・・・蝮は、柔造と結婚する気なん・・・?」


手を包むように握ったまま蝮を見つめれば話しながら昨日のことを思い出したのかさらに赤くなっていた。


「わ、わからへん・・・ただ、私は罰を受けるみやから・・・この結婚を受けていいのかまよっとる。」


「蝮の気持ちはどうなんよ。罰とかそんなん抜きにして、蝮の気持ちを私にきかせて。」


蝮は私の包んだ手を見つめている。

私の手にはちょっとした切り傷があり包帯を巻いてある。


「蝮。こっち見るんや。」


蝮の顔を覗き込めば蝮はさらに私の目をそらした。


「蝮。」


声を低くして蝮を咎めるように言えば蝮はおずおずと目を合わせた。

蝮は確実に柔造に恋しとる。

私にはそんな確信があった。


「私は蝮の味方や。せやから私にほんとの気持ち言うたからて罰もお咎めもあらへん。正直な気持ち、聞かせて・・・・?」


蝮はまだ迷った様子があったけれどぽつりぽつりと話し始めた。


「・・・あの申が私を嫁に貰う言うた時・・・ほんとは、嬉しかった・・・
でも、私はずっとなまえと申がお似合いやって思うとったんや。
なまえももしかしたら申を好きなんや無いかって・・・・
やから・・・・」


私はそこで包んでいた手の力を強め話を静止させた。

今度は私が正直な気持ちをしゃべる番なのだ。


「ようしゃべってくれた、蝮・・・・
ただ、私が柔造を好きなんてありえへんからな?あんな申より私はもっと好きな人がおる。
・・・・それはな、蝮や。
明陀の中で一番大切で、守ってやりたくて、幸せになってほしいって思うとる。
だから私に遠慮みたいなもんする必要ないんよ。
それに蝮は自分の思うようにしたらええから。」


そこまで言い切って私は蝮を抱きしめた。

蝮は、静かに涙をこぼしながら私に縋った。

胸元がはだけて大変なことになっとる予感がしたけど今はそんなんどうでもよくて。

私が蝮を元気付けているけれど蝮の心のつっかえが取れたのだと思うとこちらが元気になれて、しばらく蝮を抱きしめ続けた。

そのときちらりと見えた影はまだ気づかない振りをして。

ようやく話したときの蝮の顔はぐちゃぐちゃだけど綺麗やった。

私はそんな蝮の顔を袖て優しくふき取って。


「落ち着いたか?」


と、頭をなでた。

こくりとうなずくその姿は愛らしくて。

私はもう一度短く抱きしめた。


「決心はついたか?蝮。」


蝮は赤い目の端をぬぐいながらまたこくりとうなずいた。

私はそれを見届けて、にっこり笑うと痛む傷を抑えながら立ち上がった。


「なまえ、傷、大丈夫なん?」


「こんなん、すぐ直る傷やから。
それよりも、決心ついたなら自分の気持ちきちんと伝えるんやで、ちょうどそこに盗み聞きしとった阿呆がおるさかい。」


「「えっ?」」


私は笑いながら柔造のところへ行った。


「・・・柔造、蝮泣かしたら飛んでってミンチにしたるから覚悟しとき。」


「絶対泣かさへんわ。毎日あいつが照れて怒るくらいラブラブしたる。」


「ええ覚悟や。」


ニッと笑いあいすれ違おうとした隙にみぞおちに一発拳を入れておいた。


蝮泣かせたら絶対ゆるさへんで。








(お、おいなまえ!?)


(あ、金造。)


(ちょ、ちょお、おまっ。む、胸!!)


(・・・・・あ。)


(ちょおこい!!)


(え、金造!?)


こちらも進展・・・・?








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