第十五話
ラ「祝福すごかったさね。」
「ちょっとうるってきた。」
そういいながら目の端を拭うレイラ率いる勇者一行は南の大陸に向かうため港へと向かっていた。
まだ祝福されたときの熱が冷めないレイラの瞳は涙で潤んでいる。
神田はそんなレイラからどういうわけか目を離すことができなかった。
「・・・ん?どうしたの、神田。」
神田の視線に気づいたのかレイラが神田を振り返った。
視線がかちあい、先ほどまで目を離すことができなかったはずの目を神田はそらした。
神田の不審な行動にレイラは首をかしげた。
神田はそんなレイラを視界に入れないように顔を背ける。
神「・・・なんでもねぇ。さっさと歩け。」
神田はつい出てしまった余計な一言に心の中で自分を叱咤した。
どうして自分は余計な一言が多いのだ。ただ「なんでもない」とたったその一言を言うだけでよかったというのに相手を怒らせるような一言を言ってしまう自分を馬鹿だと思った。
レイラの性格だ。きっと怒ってしまうだろう。
案の定、レイラは怒り反発した。
「どっかの誰かさんがぼーっとしながら歩いてるからあわせてやったんですー!!」
べーっと、舌を突き出すレイラにかちんとくる。
反射的に神田は言い返した。
神「はっ、俺はどっかの誰かさんが遅ぇからぼーっとできたんだよ。」
「はぁ!?」
ラ「まぁまぁ、落ち着くさ二人とも。」
レイラが言いかえそうとしたところをラビが宥めその場は収まった。
神田はレイラに聞こえぬように舌打ちした。
時折魔物と戦いながら港へとついた。
言い合いとなった神田とレイラは道中ずっと無言である。
しかしそんな二人に漂う雰囲気は大きく広い海を前にして一気に吹き飛ばされた。
港に来るのが初めてというレイラは初めて感じる潮風を肺一杯に吸い込む。
「海きれーーー!!やっほーー!!」
ラ「いや、それ山でやることさ。」
「え。そうなの?」
神「本当に世間知らずだな。」
「なにおーーー!!」
ラ「まぁまぁまぁまぁ。」
しかし吹き飛ばされた気まずい雰囲気はまた舞い戻ってきそうだ。
その場を収めるラビも大変そうである。
彼らは時折言い合いをしながらも港へと入った。
港には大きな船が立派に浮かんでいる。
その船の立派さは三人に威圧感さえも与えた。
木で作られた船は主に赤と茶色で塗装されていた。
艶が掛かっており、きらびやかさがある。金色の塗装もところどころに装飾として施され、太陽にあたって綺麗に輝きそうだ。
レイラとラビは船を見るのは初めてらしい。
「うわぁ〜・・・・」
ラ「なんさこれ・・・・すげぇな・・・・」
感嘆の声を上げ、船を隅々まで見渡していた
神「・・・・・(世間知らずはレイラだけじゃなかったか。)」
やれやれ、と気づかれぬようにため息をつく神田だがそのため息に気づいてしまったレイラはむっとした表情で神田をひと睨みした。
神田は気づいていないふりを通した。
やれやれ、とため息をつきたいのはラビである。
彼は心の中でため息をつき、どうやってこの二人の仲をよくしようかと考えるのであった。
とにかく、乗船するためのチケットも購入したレイラたちは船へと乗った。
最短で五日は掛かるらしい船旅を前に、新しく開けるまだ見えない海の向こうの大地に彼らは思いを馳せていた。