第十三話
「っつ・・・!!」
「動くな。これくらい我慢せぇ。」
消毒液がレイラの背中にひやりと染みた。
レイラはびくりと体をこわばらせる。
神田の治療が終わり、レイラの治療が始まった。
彼女だって、神田よりはひどくは無いが、まったく怪我をしていないというわけではなかった。
彼女の体には主に背中に打撲した跡や、すった跡、そして切れた跡などがある。
これは神田と一緒に転げ落ちたときの傷だった。
そのほかにも魔物たちに集中攻撃を受けた傷もあった。
ブックマンは盛大に顔をしかめるレイラにかまわず治療を続けた。
昔から怪我の手当ての瞬間に感じる地味な痛さや、注射針のチクリとする感じが嫌いだ。
特に嫌いなのが、傷の手当をする我が祖父である。
どこから学んだかは知らないが、なぜか針を用いた治療ができる。たまにされるその治療がレイラは大っ嫌いだ。
注射針が何本も刺さる気分だ。しかも注射針と違うのは祖父が針を刺すときどこか生き生きしていてそれが針に伝わるのか針がキラリと光る瞬間。それがレイラは恐ろしくてならない。そのときの祖父の生き生きした顔も中々の恐怖だ。
「も、もう治療はいいよ!!」
レイラは背中を治療するため脱いでいた上の服で自分の体の前を隠し、起き上がった。
ブ「何を言う。治療をせんと傷が悪化するだろう!」
「い、いいもん!」
ブ「よくはない!」
「痛っ!」
怪我をしている背中を抑えられ、痛みに顔をしかめながらもベッドにまたうつぶせにさせられたレイラ。
「治療嫌!嫌ったら嫌!」
ブ「我慢せんかばか者!」
べしっと頭を叩かれる。
「けが人優しく扱って!」
ブ「わしの治療を受けようとせん奴はけが人でもなんでもないわい!」
ぎゃーぎゃーと攻防を繰り返しながらブックマンは治療を続けた。
ブックマンがあまりレイラを相手にしなくなるとレイラはぶつぶつといいながらおとなしくなっていった。
ブ「・・・・大変だっただろう。」
不意に、ブックマンが申し訳なさそうにレイラにいった。
「・・・・・・・・」
ブ「こんな、旅を押し付けてすまないと思っておる。」
「・・・・・・・別に、いいよ。おじいちゃんはもう年だし、勇者は女しかなれないし。」
ブ「・・・・・・」
「だからこの話は終わりね、おじいちゃん。」
ブ「すまない・・・いや、ありがとう。」
申し訳なさそうに言ったブックマンにレイラはうなずいて答えた。
ブ「・・・・・ところでレイラ。」
「なに?」
ブ「年は、余計だ!!」
バカモン!そういってレイラが叩かれけんかとなったのは別のお話。