▽ 相談2
娟はショックで、神田のところに駆け込んだ。
今まで、任務を一緒にこなしてきた人の中で神田が群を抜いて一番多いのだ。
神田はいつものごとく修練場で座禅をしていた。娟がどたばたと駆け込んでくる音で、誰かが来るとわかっていたのか、息を切らせて入って来る娟を見やって、怪訝そうにしていた。
娟は息を整えてから、神田の前に正座した。
「あ、あのっ、一つ、聞いてもいいですか…?」
「なんだ」
神田は目を閉じ直して、座禅を組んだまま娟に応対した。
「わ、私って、おっちょこちょいですか?」
「!」
娟が質問した途端、神田が目を見開いて噴き出した。
座禅が意味をなくしてしまった瞬間である。
「えっ、あ、おかしいですか?」
「お前、自分で気づいてなかったんだな」
手で目を軽く覆いながらうつむく神田は、くつくつと喉奥で笑っている。
娟はコムイの言う通りのことを神田に思われていて、一度感じたショックはより決定的に娟を打ちのめした。
「何かあるとすぐおろおろしてヘマして、ヘマがあったらそのことに驚いて次のヘマやらかしたりするし、AKUMA倒し終わったかと思ったら、数体氷漬けにしたまま放置して忘れてるし、あげたらきりがねぇな」
親切心か、意地悪なのか、神田は娟のこれまでのおっちょこちょいに関して饒舌であった。娟は恥ずかしさでいっぱいだった。
「アルトはお前が自分で気づかないくらい上手くフォローしてたんだろうな。あいつ、お前に対して少し過保護だろ」
「じゃあ私が今、神田さんと同じ任務が多いのは……」
「俺はできねぇ奴には容赦しない」
自分を鍛えるために、神田はいるのだ。娟は肩を落とした。自立し始めている感覚は幻想に過ぎなかった。実態を伴っていないのである。
「終わりか。用が済んだならさっさと行け」
神田が迷惑そうにしだしたので、娟は自分が神田の座禅の時間を邪魔してしまったことを思い出して、すぐさま退散することにした。
「お、おじゃましましたっ……」
そそくさと娟は修練場を後にした。
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