▽ 言葉2
「なんでもいいからなんか言えばいいんいいじゃねぇの。」
娟と神田の間に流れる緩やかな時の流れが娟を落ち着かせたとき、神田が口を開いた。
「なんのために口がついてるんだよ。」
娟には神田が何をいっているのかしばらくわからなかった。何のことをいっているのかを考えていたら神田が舌打ちをした。
「アルト。あいつのことだよ。」
娟は神田がまさか娟とアルトのことを気にかけていると思わなくて、神田の方をじっと見つめた。
「・・・んだよ。うざってぇくらいにうじうじしてたら誰でもわかる。」
そんなにうじうじしていたつもりはなかった。でも意外とみていてくれる神田だから気がついたのかもしれない。
いつもより少し饒舌になった神田が、さらに言葉を続ける。
「さっき叫んだみたいに言ってやればいいだろ。距離ばっかとってるから何もできねぇ。」
今までの娟を見透かされたみたいな神田の発言は娟をどきりとさせた。神田はやっぱり娟のことをよくみているのだ。
「・・・ありがとうございます。」
娟は神田の言葉で少し元気が出た。自分から一歩、アルトとすれ違ってしまった距離を埋め始める気になれた。
「私、いってきます。」
娟は一言神田に伝え立ち上がった。ちらりと神田を見ると、その横顔は娟を鼻で笑ってはいたけれどなんだか温かい笑みで。娟はそれに力をもらえた気がした。
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