5分間の浮気(志摩燐)
「奥村くん…?」

「な、しまっ…!?ぐしっ」

「なに泣いてはるん?」

「ないてねぇよ…」

「お鼻出てるよ」

「ずびっ、…汗だ」

「…はあ、また若先生とケンカしたんや?」

「別に、…そんなんじゃねぇ」

「じゃあどんなん?」

「…あんま気にすんな」

「あんな奥村くん。…ほっといて欲しいならもちょっと嘘付くの上手くならなあかんよ」

「は…?」

「あからさまに慰めて欲しそうな顔してんで」

「してねぇよ…ぐすっ」

「…俺の胸でよかったら貸すで?」

「…いらねって」

「奥村くん。強情も大概にしとき」

「んなっ、…んだよ急に…」

「急やない。…こないだも放課後屋上で一人でめそめそしとったやろ」

「なんで知っ、…!」

「お宅ら双子の事情なんて聞かんから…もう頑張るんやめや」

「…!、…頑張るしかないだろ…俺は」

「なんで?」

「俺みたいにダメな奴は…努力するしかない」

「そんな風に言われたんや。先生に?」

「あ…いや、違うけど…」

「ほんま、嘘下手くそやねぇ」

「わぶっ、?、っ?」

「なあ奥村くん。ちゃんと呼吸してみ」

「は?…なに」

「もういっぱいいっぱい、って顔してんで」

「俺は別に…」

「そうやって意地はってダメになっていくん、坊にそっくりや」

「え…勝呂?」

「坊もすぐ力んで自爆するんです。悪い癖やな。」

「勝呂が…」

「あの方も奥村くんの知らんとこで頑張って、挫けて、立ち上がっとるんです。せやから…」

「…?」

「奥村くんもたまには挫けてええねんで?」

「…っ!、…でも志摩…」

「もう"でも"禁止。な?今俺しかおらんやろ…」

「っ、優しくするな…ぐす」

「はは、若先生には内緒やで?」

「……言えるわけねぇだろ、ずびっ…情けない…」

「ええ子。…ちゅっ」

「ん、っなにする…」

「ううん。ええ子やからかわいいなーって思って…ちゅ」

「っ、…やめろ」

「あかん?」

「こそばゆい」

「ちゅ、ちゅ…」

「なあ志摩…」

「はい?」

「5分」

「5分?」

「5分だけ俺に胸貸してくんねぇ?」

「…5分と言わず1時間でも1日でもええよ。…泣き」

「…、…っ…わりぃ…」

「ほんま、不器用やなぁ…」

「っ…ぐす…、うっ」

「なぁ奥村くん」

「…なんだ、…ずび」

「俺の5分をあげるから奥村くんの5分も、俺にくれへん?」

「は…、?志摩…ん――っ」


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