「奥村くん…?」
「な、しまっ…!?ぐしっ」
「なに泣いてはるん?」
「ないてねぇよ…」
「お鼻出てるよ」
「ずびっ、…汗だ」
「…はあ、また若先生とケンカしたんや?」
「別に、…そんなんじゃねぇ」
「じゃあどんなん?」
「…あんま気にすんな」
「あんな奥村くん。…ほっといて欲しいならもちょっと嘘付くの上手くならなあかんよ」
「は…?」
「あからさまに慰めて欲しそうな顔してんで」
「してねぇよ…ぐすっ」
「…俺の胸でよかったら貸すで?」
「…いらねって」
「奥村くん。強情も大概にしとき」
「んなっ、…んだよ急に…」
「急やない。…こないだも放課後屋上で一人でめそめそしとったやろ」
「なんで知っ、…!」
「お宅ら双子の事情なんて聞かんから…もう頑張るんやめや」
「…!、…頑張るしかないだろ…俺は」
「なんで?」
「俺みたいにダメな奴は…努力するしかない」
「そんな風に言われたんや。先生に?」
「あ…いや、違うけど…」
「ほんま、嘘下手くそやねぇ」
「わぶっ、?、っ?」
「なあ奥村くん。ちゃんと呼吸してみ」
「は?…なに」
「もういっぱいいっぱい、って顔してんで」
「俺は別に…」
「そうやって意地はってダメになっていくん、坊にそっくりや」
「え…勝呂?」
「坊もすぐ力んで自爆するんです。悪い癖やな。」
「勝呂が…」
「あの方も奥村くんの知らんとこで頑張って、挫けて、立ち上がっとるんです。せやから…」
「…?」
「奥村くんもたまには挫けてええねんで?」
「…っ!、…でも志摩…」
「もう"でも"禁止。な?今俺しかおらんやろ…」
「っ、優しくするな…ぐす」
「はは、若先生には内緒やで?」
「……言えるわけねぇだろ、ずびっ…情けない…」
「ええ子。…ちゅっ」
「ん、っなにする…」
「ううん。ええ子やからかわいいなーって思って…ちゅ」
「っ、…やめろ」
「あかん?」
「こそばゆい」
「ちゅ、ちゅ…」
「なあ志摩…」
「はい?」
「5分」
「5分?」
「5分だけ俺に胸貸してくんねぇ?」
「…5分と言わず1時間でも1日でもええよ。…泣き」
「…、…っ…わりぃ…」
「ほんま、不器用やなぁ…」
「っ…ぐす…、うっ」
「なぁ奥村くん」
「…なんだ、…ずび」
「俺の5分をあげるから奥村くんの5分も、俺にくれへん?」
「は…、?志摩…ん――っ」
(君を捕まえる時間を手に入れる)