「だからごめんってば」
『反省の色が見られない』
「ちょっと兄さん、いい加減」
『うわぁあ、もううるさいうるさい!!』
「いやうるさいのこっち」
『とにかく俺は絶対お前を許さーん!』
「意地張るのもここら辺にしといてよ。お願いだから」
『うお、お前のお願いがいつでも通じると思うなよ!』
「今回は駄目なの?」
『当たり前だ!!』
「(なにが駄目だったんだろ…)だからって寮の屋根に立て籠らないでよ」
『うるせーっ、俺がどこに居ようとお前には関係ねえ』
「危ない、って言ってるの。あんまり言うこと聞かないと強行突破するよ」
『まじか…、はっ、いやいやその手には乗らんぞ』
「(いや冗談じゃないんだけど)」
『だって、お前が悪いんだからなっ、いっつもいっつも…!!』
「僕がいつもなに?」
『…昼間も』
「お昼?」
『女子に囲まれてニヤニヤしてるし、飯一緒に食う時間無かったし、…塾でだってしえみにニヤニヤしてるし』
「……はい?」
『お前のメガネ役立たずだからわからんだろうが』
「兄さん、もしかしてやきもち?」
『は…?なっ、ねーよ!これだからメガネは!バーカ!』
「やきもちだよ兄さん」
『お前が決めんな!!』
「ぷっ、くす」
『なに笑ってんだ!』
「ん?なんか嬉しくて」
『は?』
「ちゃんと妬いてくれるんだと思って」
『だからちげーって!!』
「うん。ごめんね?」
『だから調子乗んな…メガネ』
「よし。じゃあ部屋に帰ろうか」
「は、へ!?なに登ってきてんだ!!」
「だって兄さん降りてこないし」
「いやだからって、くんな!!」
「どうして?」
「今お前に顔見られたらとりあえず飛び降りる」
「うん。危ない。やめて」
「だーっ、あーもう!!俺もお前もきらいだ!!」
「落ち着け」
「なんでこんなぐっちゃぐちゃしてんだよ俺は!!お前のせいだろ!!」
「うーん。ごめん」
「どうにかしろ!!」
「(無茶苦茶だな)」
「なんだそのメガネは!!」
「せめて顔って言ってよ。…こっちおいで」
「やだ」
「顔見られたくないんでしょ?ぎゅってしとくからおいで」
「絶っ対見るなよ」
「はいはい」
「なにが嫌だったかわかったからあえて言うけど、好きだよ」
「う…、」
「兄さんが妬いたり拗ねたりするのは僕には嬉しいことなの。だから、」
「わ、わっ、雪男くすぐった…」
「その度に手管を折って甘やかしてもいいし、抱き締めていくらでも好きって言ってあげる」
「そ、そういうのがしたいわけ、じゃ」
「そう?兄さん好きそうだけど」
「…っるせえ」
「ねえ好きだよ、好き」
「耳元で、ぼそぼそすんな…」
「許してくれますか?」
「…」
「だめ?」
「いいよ。もう」
「怒ってない?」
「怒ってない」
「ほんとに?」
「だーしつけえな。…怒ってないから、部屋帰るぞ」
「じゃあ仲直りしましょう」
「な、んだよ」
「メガネ外して」
「俺が?いいけど」
「顔あげて」
「?、んっ」
「ん。仲直り」
「あ゛〜〜〜、」
「はいはい帰るよ〜」
「バカ、手離せ!クソメガネ!」
「文句ならベッドで聞くよ兄さん?」
「…お前なんかやっぱり知らん」
(その甘やかな手に今日も溺らされる)