手のひらから花がさいたら

手のひらから花がさいたら、一体何色なんだろう。

人の血液の色は赤いから赤かもしれない。

もしくは肌の色かも。

でも兄さんの色はきっとどちらとも違うと思う。

兄さんの花の色はきっと青。

海よりも深く空よりも澄んだ、くすみのない色。

どんな色よりも特別な色。

嫉妬なんてできないくらいきれいで、つよくて、まぶしい色。

僕は一生それに追いつくことはかなわない。

そんな花が手のひらから咲いたら、どれほどきれいだろう。

僕はきっとそれに見とれるだろう。

その花がどんなにいびつで不恰好で不完全であろうとも。

だってそれはきっと言葉にできないくらい力強くて、大きな存在だろうから。

目にしなくて済むはずがないから。

僕はそれに見とれずにはいられないのだろう。

それは現実であっても少しも変わらないけど。

そして僕は次の瞬間に銃を向けずにはいられないだろう。

その花が見とれずにはいられないように。目を背けずにはいられないように。

避けることはかなわない。

どんなに嫉妬したって1ミリも届かないところにその花は咲いているのだ。

そして僕は願わずにはいられない。

どうか少しでも長く咲いていられますようにと。

引き金を引くまでに考えることはとてもシンプルだ。

だってそれはとても美しい花。

僕は銃を向けずにはいられない。

怒られることも恨まれることもないと確信できる。

だってそれはとても美しい花。

僕は銃を向けずにはいられない。


(とくべつ、なんだ)
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