「黒崎さん、最近なんかいいことあった?」

煙草を吹かしながら、やつは言う。
返事をするのさえ億劫なので、何も返さないでいると、なんだかさ、と煙を窓の外に吐きながら、言葉を続けた。

「雰囲気変わったなあ、と思って。」


俺が言うような台詞でもないか。ぽつりと呟き、髪の毛を引っ張られる。
顔が近づき、

「今は俺を感じてくれないと。」

グリュリと中を掻き混ぜ、ビクリと身体が跳ね上がった。

「ッあ」

「わかる?黒崎さん。俺の形や長さ、もうすっかり覚え込んで、このあっついあっついナカ、締め付けて離さないんだぜ?もっと、ほしい。もっと、突いて、ってさ。身体は正直だよなあ?」

「気持ち悪い、…ことッ、言ってんじゃあ、ね、……」

悪態をつけば、ズンと最奥を抉られた。飛び出そうになった声は唇を噛んで我慢する。アイドルなんだから、見た目に気を付けなきゃ。なんて言葉が降ってきた。

「だからさ、今日は黒崎さんにプレゼント。」

にやりと笑みを深め、懐から小さな小瓶を取り出した。とろりとしたピンクの液体を手に出して、俺自身に刷り込んでいく。途端に触れた場所から熱を持ち、身体が沸騰していく。

「な、にッ、しやがった、っふ…うぁ」

「黒崎さんが素直になる薬。」

そう言うや否や、俺自身を強弱を付けてしごかれた。あっと言う間に吐精したというのに、固さを保ったままだ。

「黒崎さん、そんな締め付けないでよ。」

「ふ、…ざけ、んぅ…っあァ」

「口でおねだりしてくれたら、もっともっと気持ちよくしてあげる。」

ぺろ、と舌なめずりしたこいつを殴ってやりたいのに、力なんて入らない。頭が快感を求め出す。やめろ、と思うのにこの先の快楽に手を伸ばしそうな自分がいる。
熱い。恥も外聞も捨てて、早くこのうねる熱をどうにかしたかった。

「っは、ぁ…、いて…」

「聞こえるように言ってくれないと」

「…っ俺の中、お前ので、っふぁ、…もっと強く、ァあ、ん、ゴリゴリ突いてく……」

最後まで言おうとした瞬間、部屋中に鳴り響く着信音。
一気に現実に引き戻される。俺は今何を言おうとしていたんだ。


「………取らないの?」


俺のケータイを取り、そこに表示された人物の読み上げた。その瞬間、背筋が凍り付く。俺の様子を見て、何か悟ったのか、やつは黒崎さんのやらしい声聞かせてやりなよ、などとぬかしてきやがる。
やめてくれ、知られたくない。俺の醜い姿を晒したくない。
弱々しく嫌だ、と言えば、

「ああそう。」

とケータイを放り投げた。
しばらく鳴り響いていた音も、いつの間にか切れていたのに、こびりついて離れない。振り払うかのように、俺は奴の身体を求めた。

知られたくないんだ。美風だけには。
隠せるうちはそうしたい。せめて、俺の決心がつくまでは。美風がいなくても、一人で生きていけるように。





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