「蘭丸って、手冷たいんだね」

そう言って俺の手を掴んで自分の頬に当てたのは藍だ。
体温云々の話題をしていたわけでない。唐突に、いつもそうだ。こいつは嶺二とは違った意味で距離をいきなり詰めてくる。ただの同僚にこんなことをするか?
手を掴まれたまま、黙ること数分。
沈黙と視線に耐え兼ねた俺はもういいだろ、と藍を振り払った。そんな俺を見て、藍は

「僕、蘭丸が好きなんだ。」

いつもの無表情(俺が言えたことではないが)のままそんなことを言い出したのだ。





熱視線と低体温






「…は?」

振り払った手をゆっくりと下へ降ろし、瞬きを一つ、二つ。三つと繰り返していると、驚いた?と問われる。当たり前だろ、同姓にこんなこと言われるのは、初めてではないけれど、大抵ファンが俺の音楽が好きとかそんな意味の好きだろうからそれをカウントしなければ、初めてだ。
それを藍は何の戸惑いも見せず、いつもの呼吸するような口調で、好きと言ってのけたのだ。驚くに決まっている。

「それとも、気持ち悪かった?」

それとは違う気がする、気持ち悪いとか嫌だとかそういった感情はすぐ口に出てしまう。それぐらいこいつだってわかるだろう。弱々しい疑問に対して顔はそんなことを微塵も思っていないほど自信に溢れている。

「蘭丸さ、好きな人いないの?いないなら僕にしときなよ。目一杯愛してあげるよ?」

「たかだか十五のガキに…」

「年齢なんか関係ないよ。」


顔の距離を一気に詰めて、ふわりと掠めるだけのキスをされる。呆けていると、ぎゅっと抱き締められてこんなことを言われた。


「口があればキスもできる。愛も囁ける。腕があれば抱き締めることができる。それに年齢が必要だと思う?」

「……そりゃ正論だ。」

「ところで、蘭丸…?」


腕の力が解け、少しの距離ができる。じっといつもの無表情の目の奥に隠れた熱い視線にこの距離なら気付くことができた。勿体つけて次の言葉の間に一呼吸を入れ、こう囁いた。

「さっきから顔赤いの、自分で気付いてる?」

「…は!?」

「触らなくてもわかるほど顔赤いよ?白いから余計わかる。」


ふざけんな、と返そうにもそれは事実だ。自覚すればますます悪化する一方で見ればと言えば、蘭丸のこんな顔初めて見たんだからもっと見たい、と首を振る。

「蘭丸かわいい。」

「蘭丸すき。」

「蘭丸愛してる。」

だのしつこいほどに愛を囁かれ、全身が火照ってくる。しまいにはまたキスをされ、何も言えなくなる。
これは俺が藍を実は好きだったからか、はたまたただ好きと言われなれてないだけなのか、その答えはとっくに出ているけれど、そんなこと俺の口からは言えるわけがない。
まあ、言わなくても伝わっていそうなものだが。





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