「遅かったね」

そう言って迎え入れてくれたのは俺より7つも下のガキんちょだった。
どうしてこいつの部屋に、しかもクリスマスに来ているか、と言うと、曲がりなりにも付き合っているから、であって。その事実がどこか恥ずかしいが。

美風が言う遅かったというのは語弊がある。
ただ単に遅刻をした、というのではなく。
クリスマスプレゼントを探していた訳なんだ。何が欲しいのか、さんざん悩んで、店員にも話しかけられたが、こっ恥ずかしくて睨んでやったら逃げられた。それから色々物色し、あーでもないこーでもない、と悩んでいたら、約束の時間を過ぎていた。

というのが理由なのだが、そんなことを言えば、からかわれることが目に見えているので、

「……悪い」

としか、言わなかった。


「まあ、別にいいんだけど。蘭丸のことだから、何かプレゼント選んでたんでしょ?」

「なっ!!」

「それぐらいお見通しだよ。」


フフンと得意気に笑う辺り、本当に腹が立つ。手のひらで踊らされてる気分だ。少しの意地がその場に立っていると入りなよ寒いでしょ、と手招きされる。

「何怒ってんの?」

「怒ってねえよ…」

部屋に入ればぬくぬくと暖かい。床暖房完備なんて、贅沢だ、と思うのは俺がこたつひとつで毎年冬を越しているからか。

「嶺二に頼んだらね、豪勢なオードブルくれたんだ。」

と前に広がったのは唐揚げやらポテトやら、二人でも多い量のごちそうだった。
ケーキもあるんだよ、とどこか嬉しそうに話す藍をぼんやりと眺めていると、目の前にケーキが一口ほど乗ったフォークが差し出されていた。


「………これはなんだよ」

「見てわからない?俗に言う『あーん』だよ」

「…は!?今か!?」

頬杖をついて至極楽しそうに差し出してくる。いつも以上にこいつのペースに乗せられている。

「初めてなんだよね、こんなクリスマス。誰かが隣にいるなんてさ。だから、ほら。」

「だから、じゃねえよ……」

意味深な発言が気になった。たかが15年で何を見たのか知らない。知っても知らなくてもいいと思うのは、今が幸せならそれでいい主義だからだ。未来に不安なんか持ってもしょうがないだろ、なんて、論理的なこいつに言えば辛辣な言葉が返ってくるんだろうけど。

意を決してフォークにかぶりつき、


「また来年もすればいいだろ。そしたら楽しい思い出が増えて、いつかそれしか思い出せなくさせてやるよ。」


と言い放ってやった。
すると一瞬面食らったような顔をした藍は、プッと吹き出し、ありがとうと言う。

「そんなにくさい台詞言われるとは思わなかったよ。」

「…うるせえよ」

さすがにくさかったか、と熱くなった顔を誤魔化すかのように、俺はごちそうにかぶりついた。





merryChristmas!!
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