第二章 鬼隠し編
□かりぬい

もしあのとき、私がその手を離さなければ、ずっと繋がっていられたのだろうか。


もしあのとき、私がその声を耳にしたのなら、ずっと一緒にいられたのだろうか。


もし…


もしあのとき、私がその罪を認めていたのなら、あなたは私を赦してくれたのだろうか。



緑に囲まれた静かな川のほとりに、白い着物を着た双子の少女がいた。


二人は手を繋いで大きな岩に、互いの背を預けながら座っている。


「…綺麗だね」


「うん…」


交わす言葉は少なかったが、流れる空気と、背を通して伝わって来る互いのぬくもりがとても心地良かった。


「…ねえ、八重」


「…ん?」


一呼吸置いてから、少女は口を開いた。


「私達…ずっと一緒だよね…?」


八重と呼ばれた少女は少し驚きながらも、すぐに頷いて答えた。


「当たり前じゃない。…ずっと一緒だよ。何があっても」


それを聞いて、少女は嬉しそうに微笑んだ。


「ずっと一緒にいようね…約束だよね」


「うん…約束だよ」


そう言ったとき、遠くから自分達を呼ぶ声が聞こえて、二人は腰を上げた。


「さ、行こう…」


「うん…」


二人はしっかりと手を握り締め、歩き出した。


……それは、遠い日の約束。


決して戻らない過ぎ去った日々。


結ばれた絆を、永遠だと信じていた日々。


でもそれは、まやかしだった。

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