おまけ【600秒の会話】


「……はい」
『気になって電話した。婚約者とは話せたのか』
「はい!私も今、リヴァイ部長に電話しようか悩んでいたところで―…」
『婚約者とは、どうなったんだ』
「少し揉めましたけど、ちゃんと話してお別れしました」
『……そうか』
「あの、色々お話聞いていただいたり、昨日の写真のことも、有難うございました」
『役に立ったのか、アレは』
「そうですね……最初は使うつもりは無かったんですけど、結果としては持っていて良かったです」
『なら良かった。逆にお前を傷付ける事になったかと少し気がかりだった』
「とんでもないです。感謝してるぐらいで……っリヴァイ部長がいたから、私は後悔しない道を選ぶことが出来たんです」
『…………そうか』
「…………」
『それで、お前はどうしたい?』
「どう……」
『お前の人生だ。他人が指図することじゃねぇだろ。お前が決めろ』
「わっ……たしは、ずっと自分で誤魔化してたんだと思います。結婚の約束をした恋人がいて、だからもう後戻りしたら駄目だと、悩んだら駄目だと、増して他の男性を気にするなんて有り得ないって、思い込んでました。出張の夜、リヴァイ部長の夢を見たんです。本当はきっとあの時から、リヴァイ部長の事を想ってたのに、気付かないフリしてて。恋人と別れたばかりなのに何言ってんだって話ですけど、もっとリヴァイ部長の事を知りたい、側に居たいって、今は思ってます」
『…………』
「す、すいません!勝手な事を……」
『いや……俺が聞きたかったのは、お前が仕事を続けるのかどうかの確認だったんだが』
「はっ!?えっ!?わ、私、とんでもない勘違いを!?」
『それで、仕事は続けるのか』
「は、はい。すみません。お騒がせしてしまってすみません。人事にも話は……」
『その事なら問題無い。お前の退職の話は俺で止めてる』
「そうだったんですか。本当、迷惑ばっかりかけてしまってすみません。あの、さっきの話も無かった事にしてもらえたら……」
『するわけないだろ。有難く貰っておく』
「有難くって……」
『お前は出張の時からだと言ってたが、俺はもっと前から危なっかしいお前を見てた。婚約中の女に手を出す気はなかったが、もう遠慮もいらねぇな』
「え、もっと前からって、リヴァイ部長がですか?私の事を?」
『……そんな事より、お前は今どこにいるんだ』
「今、ですか?帰ろうとしてるところで、あ、昨日お会いした駅に今向かってて」
『なら駅前で待ってろ。今から向かう』
「えっ!?会えるんですか!?今から?リヴァイ部長に?あ……嬉しいですけど、リヴァイ部長は面倒じゃないんですか?貴重な休みに私の相手なんて……」
『おい、何を勘ぐってるかは知らねぇが、俺がお前に会いたいから行くんだ。分かったら大人しく待ってろ』
「は、い……」
-end-
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