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まだ、あの天女という女性がこの世界にいなかった頃。甲斐の国はとても平和だった。 お館さまがいて佐助がいて、上田の民がいて‥‥毎日が笑顔で溢れていた。これは、そんな時代の話。
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『佐助、八つ時だぞ!今日の菓子はなんだ?』
「ハイハイ今行きますよ!全く、嬢ちゃんはいっつも菓子のことになると騒ぐんだから‥‥」
あきれながらもちゃんと茶菓子と熱いお茶を持ってきているあたり、やはり佐助は優秀な忍であるとおもう。‥‥まぁ忍者をこんなことに使う事自体、変わっているのかもしれないが。
『しょうが無かろう?甘味は某の動力源だからな!』
カラカラとそう言って笑うと、佐助はがくり、と肩を落とした。 その様子を見てまた笑った。‥‥やはり、佐助といるのは居心地がいい。
――――― 佐助side
もう真夜中に近い時間。未だに蝋燭の光が灯っている部屋に、音をたてずに入る。
「嬢ちゃん。」
『佐助、か』
「もう今日は終わりにしなよ。明日に回せる書類もあるだろ?」
嬢ちゃんが持っている筆と硯を奪い、厨から持ってきたお茶を渡す。 少し困ったような顔をしながらも、大人しくお茶を受け取るのだから、八つ時とは凄い違いだと思う。
「もう、嬢ちゃんは城主だろ?ちゃんと休息をとってもらわないと俺様心配で倒れちゃうよ。それに、一応女の子だろ!」
『一応とは酷い、な‥‥これでもちゃんとした女だぞ?』
傷付いた顔 隠そうとしているけど そんなの分かっちゃうよ
「わかってるよ。とりあえず、今日はもう寝てね!」
さっと布団を敷いて、寝かせる。仕方ないな、とでも言いたそうな顔で横になった彼女に笑みを向ける。
「おやすみ」
『うん‥おやすみ、佐助』
ふわりと笑ってから、すぐに寝息をたて始める名前を見て、やっぱり疲れてたんだなぁと思い苦笑いする。
あのね嬢ちゃん。俺様本当は、嬢ちゃんが俺様を好いてくれてることに気付いてるよ。だって俺様は忍だからね‥‥気付いてないことが有り得ないと思うよ?でもね、忍と城主じゃ身分違いもいいとこだと思うし、大将や兵士‥‥城下の人々にたくさん迷惑がかかる。そんなこと、嬢ちゃんにも解ってるだろう?だから俺様はその気持ちに応えることは出来ないんだよ。‥‥だけど、俺様が何か言ったら絶対に泣くでしょ。それは凄く嫌なんだよ。 だって、小さな頃から今までずーっと、嬢ちゃんは沢山我慢して来たのに、これ以上泣かせたくないんだよ。 女の子として成長する事が出来ないなんて、とっても辛いと思うんだ。だから、だから‥‥
「なんて、ただ逃げたいだけだろ」
逃げたいだけ。そう、純粋に好きでいてくれている嬢ちゃんの思いから逃げだしているんだ。 この思いに向き合ったら、もう‥‥どうすることも出来ないから。俺様は、きっと嬢ちゃんを泣かすことしか出来ないから。でも、それでも
「ねぇ、嬢ちゃん
好きだよ
」
―好きだけど、恋愛感情じゃ無いんだよ―
そう言って、眠る彼女の額に口付けた。
―――――― あとがき まさか幸村成り代わりのリクエストが来るとは思っていませんでした! なので、過去の話‥‥ならばと佐助のジレンマを書いてみました。身分違い、そして女の子としてはみれない‥‥どちらも辛いですね。 補足としては、この後に天女が来る→沢山の人を魅了しているらしい→主人公も諦めがつくかも→結果的に凄い傷付けた。 といった展開になります。もう佐助の馬鹿!としかいえませんね´`ですが、続編では二人を少しずつ近付けて行きたいです。
コメント返信 成り代わりが好きですと!?ありがとうございますうう!亀更新の更に亀ですが、気長に待っていて下さい! 企画参加ありがとうございました!
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