これは、ある日の夜の出来事である。
『もぉう一杯ぃ!』
「これは…」
「完全に酔ってますね」
"たまには皆で飲もうよ!"
そう言った彼女が一番に潰れるとは、誰が予想できただろうか。
「ほら、落ち着けって」
ハボックに宥められ、フュリーには背中を擦られている彼女は常に笑顔だ。
『ハボック、フュリー、好きだよぉ』
ピタリ。と男性陣の動きが止まる。
恋人であるロイも、その発言にぎょっとしていた。
「おいおい、酔ってるとはいえ…」
「なんだか、照れちゃいますね…」
ほんのり頬を染めた二人に、ロイは気が気ではない。
そんなロイの気持ちは露知らず。
ファルマンとブレダが、すかさず彼女に問う。
「なぁ、オレらは?」
『んー?ファルマンもブレダもすき!』
望み通りの言葉を聞けた二人は、満足そうに笑う。
それを見ていたリザは、静かに嫉妬を瞳に灯すロイをチラリと見て、一口アルコールを含んだ。
「…」
『?ろい?』
「…おいで」
ロイに呼ばれた彼女は、嬉しそうに笑って隣へ行く。
その姿が可愛らしくて無意識にニヤけてしまう。
「大佐、口元緩んでますよ」
「おっと」
リザに指摘されすぐに手で口元を隠すが、皆にはバレバレのようだ。
「なあ、大佐はどうなんだ?」
ブレダのその言葉に、柄にもなくドキリと胸を鳴らすロイ。
『うーんとね、ロイのことね…だいすきっ!』
勢い良く抱きついてきて胸に顔を擦り付ける彼女を、ロイは満足そうに抱きしめ返す。
「はぁ、やっぱ大佐には勝てないわ…」
肩を竦めるハボックに、当然だと言わんばかりにロイがドヤ顔をした。
そのまま、抱きしめていた彼女の頭を撫でる。
「…今日はもう止めよう、家に帰って寝ようか」
『いや!』
ロイのした提案を全力で拒否する彼女にショックを受け、固まっていると彼女は腕の中からするりと抜け出し、リザの胸元へダイブした。
『リザすきすき!』
「あら、嬉しいわ」
『あのね、ハヤテごうに会いたいなぁ』
「良いわよ、どうせならハヤテ号と寝る?」
『ねるー!泊まる!』
えへへと笑う彼女に対して、ロイはずーんと項垂れている。
その光景に、リザは面白半分で彼女に質問をした。
「ブラックハヤテ号の事好きかしら」
『うん!大好きだよ!ちゅーってしたい!』
その言葉にその場に居たロイ以外の全員がプッと吹き出す。
「大佐、犬に負けましたね」
「ぐっ……」
「大佐負けてやんの…」
「煩いぞ、ハボック!」
「さ、男性たちは置いておいて帰りましょうか」
『うん!ロイ、今日はお泊まりしまぁす!』
おやすみー!と大きく手を振り帰っていく二人。
一気に華が無くなり残された五人は、しんと静まり返る。
「…じゃあ、今から大佐の慰め会ということで…」
「大佐、気を落とさないで下さい!」
「まー犬に負けるって言うのもあれですが…」
「また次がありますって」
ハボック、フュリー、ブレダ、ファルマンと次々に慰めの言葉を掛けられたロイは、自分のグラスに入ったお酒を一気に煽る。
「負けた訳じゃない!」
勘違いするなよ!と怒鳴るロイは、お酒のせいか瞳が少し潤んでいたとか、いないとか。
翌日、何も覚えていない彼女は皆から話を聞いて恥ずかしさで悶絶するのだった。
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