最近は中々暖かい日々が続いていた。 少し走ればじんわりと汗が滲むくらいには気温が高くて…何だか寝苦しい夜も続いていて。 『あついー…』 冬用のふかふかした布団を手で乱雑に退けて一息吐けば、横に居るロイが少しだけ笑ったように感じて。 ちらりと見てみると、やっぱり少しだけ笑っていたロイは私をじっと見ていた。 『ロイ、涼しい顔してる』 「そうかな、結構暑いよ」 ホラ、と私の手を取ったロイ。 じんわりと広がる熱で段々と手から汗が滲み出して来て二人の間に溶け出す。 なるほど、ロイも意外と暑いんだ。なんて真剣に考えながら握られた手を見ていれば、ロイの空いている方の手が私の頬に触れた。 「少し窓を開けようか」 そう言ってベッドから出たロイは、すぐ側にある窓を開ける。 すると途端に風が部屋に流れ込んできて、汗をかいている私の体を優しくなぞっていく。 あまりの涼しさに驚いて飛び起きれば、それを見ていたロイが私に手招きをして。 「おいで」 優しくそう言ってくれたロイの隣まで素直に向かう。 窓の前まで来て外を覗き込むと、そこには綺麗な星空が広がっていて思わず息を飲んだ。 『きれい…』 「最近天気が続いていたからな、星を見るには絶好の夜だったみたいだ」 キラキラとした星に髪を撫でる風。 全てが心地よく感じて、思わず目を閉じて息を吸う。 昼間の暑さが嘘のように涼しくて。 季節の変わり目とは体調を崩しやすいと言うけれど、まさしく今日が気を付けるべき夜であるのかもしれないと思った。 ゆっくりと目を開けてもう一度外を覗く。 もう時間も時間だからだろう、それぞれの建物から光が漏れているのも極僅かで。 そのお陰もあってか、キラキラと顔を出している星が更に大きく見える。 ずっと見ていられる風景へ虜になっていると、ふと腰に手を回されたことに気がついて。 反射的に横を向けば、優しい顔をしているロイと目が合った。 『ロイ?』 「景観なのは分かるけれど、私としてはもう少し此方も見てほしいな」 そう言って私の額へとキスを落とすロイ。 すっかり冷えていた私の額に落ちたその唇はとても温かくて。 先程とは裏腹にその温かさが心地いい。 私のその心に気づいたのだろうか、もう一度額へと唇を寄せるロイ。 額、目尻、頬と順々にキスが降ってきて、そこで止まる。 無意識に閉じていた目を開けてみると、悪戯っぽく笑っているロイと目が合って。 『ろ、』 彼の名前を呼ぼうとしたその声を遮るように、唇へとキスが降ってくる。 そのキスはとても優しくて。 啄むようなキスに思わずロイの服の裾を掴むと、それがお気に召したようでロイは満足気に笑った。 「このまま二人の世界へ落ちるのも良いな」 『ふふ、なにその言い方!』 「思ったことを口にしただけだよ」 ロイはそう言ってもう一度唇へキスを落とす。 何度も重ねていく内に深くなっていくその行為に私の心臓は物凄い早さで動いていて。 ふと唇を離したロイは、そんな私の顔を見て可笑しそうに笑った。 「月明かりだけでも分かるくらいに顔が赤いなあ」 『あ、赤くない!』 「そうやって強がるところも可愛らしい」 『もう…!ん、』 何度目かも分からないキスが降ってきて。 それを素直に受けていると、ふと腰が引き寄せられた。 こういった流れに持ち込むのが上手いロイに抱き寄せられて、身体が溶け出しそうなくらいのキスを受ける。 あー、これはまた彼のペースに持ち込まれたなあ、なんて何処か他人事に考えていて。 「好きだよ」 ふと彼から贈られてきたその言葉に、胸が痛くなるくらい高鳴ってしまって。 余裕な様子のロイに、仕返しだと言わんばかりにキスを一つ。 『私は愛してる!』 そう小さく声を張る。 まあきっとこれくらいじゃロイは照れないのだろうけど、とロイを見るとほんのりと赤く染まった彼の頬が目に映って。 『へ、』 まさかの反応に間抜けな声を出すと、ロイは私の首筋に顔を埋めて息を小さく吐いた。 ぎゅっと抱きしめられて、くすぐったさのあまり体を震わせる。 「不意打ちはズルいだろ…」 『さっきのお返し?』 「何で疑問系なんだ」 そう言って笑ったロイは顔をゆっくりと上げた。 目に映った彼は、もういつもの様子に戻っていて。 なんだ、残念。と考えていたのも束の間、抱き上げられてベッドへと運ばれる。 『窓、開けっぱだけど…』 「汗だくの中するのをご所望かな?」 『そ、それは嫌かな』 私のその言葉に笑ったロイは、首筋へと唇を寄せる。 わざと音を立てるようにして何度も何度もそこにキスをするロイ。 『ん、』 少しだけ漏れてしまったその声に顔を上げたロイは、意地悪そうに笑っていて。 「声、抑えないと外に聞こえるかもな」 そう言って私の腰を撫でた。 ああ、もしかしなくてもさっきの仕返しの仕返しかな、なんて考えながら口を手で塞げば直ぐにロイがそれを優しくほどいて。 『いじわる、』 そう言って見せれば、ロイは満足そうに笑ってまた唇を寄せた。 2019/05/27 |