最近のマイブーム。
それは、ロイの所にエドを連れていく事。

ある時は事件の目撃者として……

『エドを連れてきたよー!』
「鋼のが目撃者とは…」
『うんうん!』

またある時は事件を解決させる為…

『エドの力があった方が良いよね!』
「大佐じゃ力不足だってよ」
「私だけで充分だ!」
『まあまあ〜』

またまたある時は出掛け先で…

『あらまー!エドとアルフォンスくん!偶然だね!』
「よお、ななし。この前ここに居ること話しただろ?」
『そうだっけ?あはは!』

またまたまたある時は食事に…

「御免だ!」
「オレだって嫌だね!」
『えー!そんなぁ……』


そして今日も今日とて……


『ロイー!』
「……アイツと会わせようとしても無駄だからな」
『え?え?な、何の事??』
「惚けたって丸わかりだぞ!」

今日の自分の仕事も終わり、いつも通り二人を同じ空間に入れ込もうと執務室の扉を開けた先には、仏頂面のロイが待っていて私がお誘いをする前に断られてしまった。

『えー…なんで!』
「なんでってなあ…そもそも私と鋼のは特別仲が良い訳でもなく、どちらかというと悪い方だろ」
『うーん、そうかな?』
「というか、何故そんなにアイツと会わせたがるんだ」
『アイツって?』
「鋼のの事だ」

自分の口角が上がるのを感じて、それを隠すように手で口元を隠す。

理由は言えない。
言ってしまえば今よりも不機嫌な顔になることは丸わかりなのだ。

『し、仕事は終わったかね?マスタング君?』
「いきなり何だよ、終わったが…」
『では二人で帰ろうじゃないか!』
「……寄り道はしないぞ」
『うっ……わ、分かってるよ…』


じとりと見られた事により、作戦失敗。
…仕方がない。今日は大人しくしていよう。

「それで今までの事の理由は」
『さーて!ちゃちゃっと帰りましょー!片付け手伝うよ!』

凄く凄く見られているけど気にしない気にしない。
平常心を心掛けつつデスクの上の書類を纏めて、ロイの手を取って帰路につく。



『ただいまー!』

がちゃりと玄関の扉を開けてリビングへ入る。
自然と大きな声が出てしまうのは、きっと後ろで未だに私を見つめている人の気を紛らせたいが為だろう。

『今日は早めに帰ってこれたね!』
「ななしが不自然な寄り道や誰かさんと立ち話したりしてないからな」
『うっ……』
「…そろそろ理由を」
『そ、そうだ!今日はクリームシチューでも作ろうか!寒いもんね!うん!』


まずいまずい、理由を聞かれてしまった。
誤魔化すために食い気味で話を変えた後に、リビングの扉へと手を掛ける。

『ご飯の用意する前に手を洗ってうがいをして着替えてくるね!』
「ななし、」
『じゃ!』

パタリと扉を閉める。
少し心は痛むけれど…理由は話せない!絶対に。
私は宣言通り手を洗う為に洗面所へと向かい、うがいも済ませたところで寝室まで行く。

クローゼットを開けたまま軍服の上着を脱いでハンガーに掛けた。

『ふー、流石にキャミソールだと寒いなあ…』

ぶるりと身震いをして厚めの大きなカーディガンが掛かっているハンガーを手に取る。
上半身が暖かくなった所で軍服のズボンに手を掛けてするりと下ろす。

『今日はスカートか…綿のショートパンツか…』

2つを手にとって悩む。
どちらも足が出るから寒いよね…。

『長めのソックスを履けばいいかな』
「私はそのままでも良いと思うぞ。」

扉の方から聞こえたその声に体が固まる。
手に取っていた衣服がパサリと落ちた音が聞こえたけれど気にする余裕も無く。
幸いロイに背中を向けていて、大きなカーディガンのおかげで下着は見えていないだろうけれど、足は勿論見えているであろう。

「下に何も履いていないと言うのは中々良いものだな」
『な、何も履いてないわけじゃない!』

下着は履いてる!と叫びそうになった口を慌てて押さえて止める。
ロイが近寄ってくる足音が聞こえて、それに合わせて一歩前へ進む。

「クローゼットにぶつかるぞ」
『そ、そんな事言ったって!近づいてくるから!』
「近づいて何が悪いんだよ、恋人だろう?」
『恋人だけど…!格好が格好だから…!』
「それが見たいんだけどなあ……そうだ」
『う、わっ……!?』


突然肩を掴まれて驚く暇もなく体を回転させられてロイの方へ向いてしまう。
見られてしまう恥ずかしさに目を瞑ると、ぎゅっと体を抱きしめられてロイの顔が私の肩へと向けられたのが分かった。

『あ、あの……!』
「ななしの体は暖かいなあ」
『…っ!せ、せくはら…!』
「セクハラとは失礼だな、恋人らしく抱きしめてるだけだろ?」
『そうかもだけど…!』
「そんな事言われるなら、このまま体を離して全身見ても良いんだぞ」
『お、鬼…!』
「どうとでも」

すくりと笑ったロイの吐息が鎖骨の端に掛かって、びくりと体が震える。
いきなり体を引き剥がされない様にと私からもロイの体に手を回せば、その行動にもロイがくすりと笑ったのを感じた。

「なあ、ななし」
『なに…?』
「最近の行動についてだが…」
『あ、あの……!』
「おっと、逃がさないからな」

忘れかけていた事を問われて逃げようと体を捩らせれば、痛くない程度に強く抱きしめられる。
それでも逃げようとすれば、首筋にキスを一つ落とされて途端に力が抜けた。


「で、理由を聞こうか?」
『…い、言えない』
「……見るぞ」
『だ、だめ!』
「見るだけじゃないぞ、あんな事やそんな事……」
『ひっ……』
「体の隅々まで堪能して……」
『わ、分かりました!言います!』
「よし」

とんでもない事を言い出すロイに驚いて咄嗟に言葉が出る。
ロイは満足そうに笑って私の頭を撫でていて。

言わないと絶対に襲われる。
この人は絶対にする、そう思った私は小さく呟いた。

『……聞きたかったの』
「何を?」
『ろ、ロイの声…』
「私の?それならいつも聞いているだろう」
『そうだけど…!その、ロイが……』
「私が?」
『うう……』
「……」
『い、言う!言う!』

少しだけ言い淀んだ私の体を引き剥がそうとしたロイに驚いてそう言えば、また強く抱きしめられる。
…本当に鬼だ。


『…その、ロイがね…ロイが、「鋼の」って言う声が好きで…』
「え?」
『最後に少し低くなる声とか、その…イイ声だなって…』
「……」
『…い、今凄く不機嫌でしょ』
「良く分かったな」
『だから言いたくなかったのに!』

エドを呼ぶ時の声が好きだなんて言ったら不機嫌になるのは分かりきっていた事で。
だからこそ、バレないように引き合わせていたのだけど…遂にバレてしまった。

『ロイ、あの…ん、』

抱きしめられている力が緩んだのを感じて、体を少し離してロイの顔を覗き込む。
瞬間、目を閉じたロイが目の前に居てキスをされていることを理解する。

『ん、ん……ロ、イ…』

どんどん深くなるキスを受け入れている内に力が抜けたようで、まるで軽々しく私を抱えてベッドへと優しく下ろした。
驚いて起き上がろうとすれば、ロイが上に跨がって私の両手を顔の上で一つに纏める。

『理由を言えば何もしないんじゃ…!』
「そんな事言ってない」
『え!?』

そう言えば、白状しなければすると言われただけだった気がする。
……なんて策士なんだろう、この人は。

「この格好は色々と我慢が出来なくなりそうだ」
『…あ、わ!み、見ないで!』
「それは無理な相談だな」

じろじろと全身を見られているが、両手が塞がっているせいで隠すことも出来ない。
恥ずかしさで顔から火が出そうになっていれば、それに気づいたロイが眉を下げて面白そうに笑った。

「顔が赤すぎる」
『す、好きな人にこんな格好見られて平常心で居るなんて無理…!』
「可愛い子だなあ」
『んっ、』

一瞬だけ愛しそうな顔をしたロイは、そう言ってもう一度私の唇に自身の唇を重ねる。
その行為は、先程よりも幾分か浅いけれどそれでも頭がくらくらするほど激しくて、息をするのに必死だ。

『ん、はあ……ロイ…あっ』

激しいそれが終わったと思ったのも束の間、首筋をぬるりとなぞる温かい何か。
それがロイの舌だと理解するのに時間は掛からなかった。

ちゅ、と音を立てて首筋にキスをされる。
そのまま、舌で体をなぞって胸元にキスを一つ。
キャミソールが捲れたお腹に一つ。
おヘソの下、ちょっと危ないところに一つ。

音を立ててキスをされる度に体が震えて変な声が出てしまう。
上で拘束されていた手はいつの間にか解放されていたけれど、そんな事も気づかないほどに頭がふわふわとしていて。

ちらりとお腹の方に視線を向ければ、ロイと目が合って思わず顔を背けた。
フッと笑う声が聞こえ、ロイが上に戻って来て唇へキスを一つ。

『ん、ん…』

先程とは打って変わって優しく啄むようなキス。

『ん、…ろい…』
「ななし、」
『っ』

キスが終わったと思ったら、耳元でロイに名前を囁かれた。その声は、掠れたような…熱っぽくて色気のある声で。
あまり聞いたことのないその声に、お腹の奥が疼くのを感じて足をキツく閉じる。

「ななし」
『な、なに…』
「私がななしを呼ぶ声と、アイツを呼ぶ声どっちがいい?」
『そ、そんなの…』
「どっち?」

また耳元で囁かれてお腹が疼く。
恥ずかしさのあまりか、涙が溜まって一筋流れる。
それを見たロイは満足そうに笑って指で涙を掬った。

「…聞かなくても分かることだったな」
『い、いじわる…』
「ななしがアイツを呼ぶ声が好きだとか言うから」
『だって!イイ声、だったから…』
「でもななしを呼ぶ声の方が良かっただろう?」

そう笑われて、ビクッと体が震える。
ロイは私の耳元に唇を寄せて、ちゅ、とキスを落とした。

「お腹の中、欲しくなった?」
『!』
「足、何度も擦り合わせてたら気付くよ」
『や…その、それは…!』
「ちゃんと言えたらお望み通りに」

するりと内腿を撫でられる。
決して下着には触れようとしないその手付きに何だかもどかしい気持ちになってしまって頭を左右に振った。

『い、言えない…』
「じゃあずっとこのままだな」
『そっそれも嫌…です…』
「…言ってごらん?」

思わず言ってしまった本音に自分を恨みつつ、ロイの手付きに吐息が漏れそうになる。
恥ずかしくて涙が溢れて止まらない。
けれども、恥ずかしさよりももどかしさの方が強くて。

ドキドキとうるさい胸を押さえつつ、小さく口を開く。

『ほ、欲しい…』
「どこに?」
『…っ…お、お…おなか…』
「…可愛いなあ」
『急にな、に…あ…!』

するりと下着が脱がされるのを感じて声を上げる。
下着が取り払われたその部分は空気に触れてひんやりと冷たく感じて、自分がどれだけこの先を期待していたかが分かってしまう。

「準備万端だな」
『は、恥ずかしいから…言わないで…!』
「これくらいで恥ずかしがっていたら身が持たないぞ」
『そんな……あっ!』

固い何かが宛がわれた次の瞬間、体を貫かれて声が漏れる。
ロイの言っていた通り準備万端だったそこは、いとも容易くロイを受け入れた。

『あ、あっ……ロ、イ…んんっ…』

ゆっくりと出し入れされる度に声が溢れてしまい、恥ずかしくなって口元を手で押さえるとそれをロイによってほどかれてしまう。

「我慢しなくていい」
『や、だっ……ぁ、はず、かしい……あっ』
「ななしの声、聞きたい」

そんな事を言われて平気で居られるわけが無く。
より一層高くなってしまった声に恥ずかしさを感じて目を閉じる。
目尻に溜まっていた涙が重力に従って流れていき、それを掬うようにロイがキスをまた一つ。

「好きだよ」

熱い吐息と共に耳元で放たれたその言葉にお腹がまた疼いてしまう。

「っ…急に締め付けないでくれ…」
『そ、そんなのっ…わかんな……、あっ』

ロイのその言葉と同時に、お腹の中のものが大きくなるのを感じ取る。
段々と早くなる行為にロイも自分も限界が近くなっているのに気付いて思わずロイを抱きしめた。

『やっ…きもち、い…っあっろい、すき…すきっ…』
「っそんなの、反則だろ…っ」
『んんんんっ……』

行為によって頭が惚けているせいか舌足らずな言葉を送ってしまったが、それを気にする間も無く一段と早くなる行為。
あまりの気持ちよさに果ててしまった私の後を追うように、ロイは私の中へ欲を吐き出した。








『もう、無理……』

あの後、何度抱かれただろうか。
何度も何度も行ったその行為に体はベトベトで、既に汗かそれ以外かが分からないくらいで。

激しかったそれに体が耐えきれるハズもなく、自力で歩けなくなってしまったので仕方なくロイと二人でお風呂に浸かる事に。

疲労でのため息を漏らせば、後ろからぎゅっと抱きしめられた。


『ロイの嫉妬怖い…』
「ななしだって喜んでたクセに」
『そっそれは…!』
「欲しかったものを沢山お腹に貰えた感想を聞こうかな」
『言えるはずないでしょ!』
「してた時は素直だったのになあ」
『わ、忘れて!』
「無理なご相談だ」

ちゅ、と首筋に唇を押しつけられてぴくりと体が震えてしまう。

「これに懲りたらもう二度とアイツと引き合わせないように」
『う、はい…』
「またあの声が聞きたいのなら、いつでも聞かせてあげるよ」
『え』
「さっきみたいに沢山、いつでもどこでも」

ロイのにこやかな声が聞こえて、同時に私の胸を包む大きな手。
今までの行為全てを思い出した私は恥ずかしさのあまりロイの鳩尾に向かって肘を当ててしまった。


『もっもう大丈夫だから!』
「うぐっ……」
『あっ、あわ…ごめん…!』


あまりの痛さにロイが悶絶している間、一人で湯船から出るわけにも行かず。
二人揃って逆上せたのは言うまでもない。









2019/01/18