肩に触れる空気がとても冷たくて目を覚ます。
ロイに抱きしめられて寝ていたらしく、体はとても暖かい。
肩だけ布団が捲れていたみたいで、私はそっとそれを直した。

『…寒いのに暖かいって変なの』

すうすうと寝息を立てているロイを見つめる。
…本当に綺麗な顔してるなぁ
ツンツンと頬をつつけば、ロイは眉間にシワを寄せて小さく唸った。

それがなんだか面白くて、くすりと笑ってしまう。

「…笑うなんて酷いな」
『起こしちゃった…?』
「大丈夫だよ、いつものことだろう?」
『う、確かにいつもこういう事しちゃうけど……ご、ごめん…』

謝った私に今度はロイがくすりと笑った。

「今日は一段と冷えてるな」
『だね、布団から出たくない…休みたい…』
「中尉に叱られるぞ」
『それは嫌!』

布団の中でお互いの足を絡め合いながら話していたが、突然ロイが私の髪の毛を触り始めた事により沈黙が訪れる。

随分と長い髪なので、毛先を触られても何の感覚もなく。
ロイの手が髪の毛を弄っている姿を、ぼうっと見つめていた。

「…綺麗だな」

そんな言葉に、ドキリとしてしまう。
髪を掬って匂いを嗅ぐように顔に持っていくロイは、あまりにも格好よくて目が離せなくなりそうだ。

「いつ見ても、ななしは綺麗だ」
『…髪の事?』
「いや、ななし自身だよ」

ふっと笑ったロイが此方を見る。
頭を優しく撫でられて、私は咄嗟に目を瞑った。

「…キスを待っているのかな」
『ち、違う!』
「なんだ、残念だな」

そう言って笑ったロイが身震いしたのに気づいて、寒いのかなとロイの背中に手を回した。
少し布団から出てしまっていたらしい背中はとても冷たくて、私は布団を少しロイ側にずらして背中を擦った。

『布団、直してよかったのに』
「ななしには暖かくしてほしいだろ?それに、こうすればななしから抱きしめて貰える」
『もう…』

ロイが寒い思いするのも嫌なのにな、なんて言っても笑われるんだろうけど。

『温かい珈琲飲んで体を暖めようよ』
「そうだなあ」

少し考える素振りを見せたと思ったら、いつの間にか私の腰を触っていたロイの手に力が入って、隙間がないくらいに体が密着した。

「もう少しこのままでいたい」
『寒いから?』
「それもあるが、私はこの時間が好きだからかな」
『朝の?』
「ああ…朝、ななしを抱きしめてるこの時間がとてつもなく好きなんだ」

私に触れるだけのキスを落として優しく笑うロイ。
私を見つめるその瞳はとても優しくて、でもその奥には燃え上がるような熱を感じて。

「…顔が赤い」
『だって…』
「ふ、本当に可愛いな……さて、そろそろ起きよう」

最後にまたキスを落として起き上がるロイ。
布団が捲れた事により冷たい空気が流れ込んでくるけれど、それが涼しいと感じるくらいには体が火照っていたようだった。

「これ以上ここに居たら、色々と我慢が出来そうにない」
『なっ』
「また夜に、な」

耳元で囁くように呟いたロイは意地悪そうに笑っていて、不覚にもそれにときめいてしまった。


また夜に、なんて言われたらそれが頭から離れることは無いわけで。
今日一日中、ロイを見るたびにドキドキしてしまうのだろうか、なんて思いながら私もベッドから立ち上がった。

『…珈琲、熱々にしてやる』
「ななしがふーふーして冷ましてくれるのかな?」
『しっ!しないし!』
意地悪したかったのに、彼の方が一枚上手だったようで。
更に赤くなってしまった顔を見せないように、部屋のドアを開けた。






2018/12/20

「それを、合図かのように」と似たお話になっております。
前のお話の時よりも絆の深い二人を感じていただけたら嬉しいです。