『…と言う理由で…本当にごめんなさい!』
「良いのよ、ななし。皆あなたの珍しい姿に、少し驚いただけだから、気にしないで」
『リザ…!』

勢い良く下げた頭を、リザ中尉が優しく撫でてくれる。
それに続いて、他の面々も気にすんなよと笑い飛ばしてくれた。

なんて優しい人たちなんだろう…

皆の心の広さと、自分の心の狭さに胸を締め付けられて、私は思わずリザに抱きついた。

「まーななしは、大佐の事となると子供っぽくなるからなぁ」

ハボックの言葉に、うっ…と声を詰まらせる。

『直そうとしているんだよ、一応…でも、一昨日のそれは嫌すぎたの…!』
「その場で聞けばよかったじゃん。"その女誰よ!?"って具合に」

超修羅場!と興奮するハボックに、座ってそれを眺めていたロイが声を掛けた。

「それ以上ななしをからかうとケシ炭になるぞ…」
「ヒェッ……」


全く…とため息をつくリザの胸にすりすりと顔を擦り付ける。
頭を撫でてくれているリザは、でも…と言葉を漏らす。

「まあ、エドワードくん達も災難だったわね」
「確かに、そっすね」

リザとハボックの会話に、ばっと体を起こした。

『や、やっぱりそうだよね…!?私を心配して声かけてくれたのに、あんな事して…』
「あんな事?」
『腕に、抱きついたの…ロイと同じことしてやろうと思って……』

あーなるほど?となるブレダに、フュリーがえ?え?と首を傾げていた。
ハボックが面白そうに笑う。

「んで、大佐がキレたと」
『怒ってた……きっと私が言う事聞かずにいたから怒ってたんだよ』
「絶対違うって!絶対嫉妬だね、ななしの胸の感触知られちゃったから…」
「ハボック」
「ヒェッ……」

ロイに名前を呼ばれて縮こまるハボック。
そんな二人のやり取りに、リザのため息が漏れた。








ーーーー



『どうぞ、ロイ』
「ありがとう」


あの後、ちゃんと残ってた仕事をして二人で帰路についた。
ソファに座っているロイに、温かいコーヒーを手渡す。
受け取ってもらってから、自分もソファに座りコーヒーに口を付ける。

『今日は本当にごめんなさい。…もう一度謝っておきたくて』
「ああ、それはいいんだ。それよりも、鋼のにした行為の方が気になるな」

ロイがマグカップを置いて此方に向く。
私も、マグカップを置いてロイを見た。

『エドにした行為…?』

分からずに頭を傾げていると、ぐっとロイに距離を縮められる。
そのまま私の腕をロイの腕に絡ませて、これだよ、と言われた。


『腕組み…?』
「こんなふうに体を押し付けて……」

ふにっと胸に押し付けるかのように腕を動かすロイに、思わず顔が赤くなる。

『えっ…と、そ、そっか…私なんて事……』

エドにこんな事してしまったのか、きっと怒っているだろうな…なんて考えていたが、視界が反転している事に気づいて現実に戻った。

『あ、あの…何して……』
「…本当に無防備過ぎる」

押し倒されたままの私を、ロイが熱を帯びた瞳で見つめてくる。
そのまま首筋に音を立ててキスされ、反射的に体が跳ねた。

「あまり嫉妬させないでくれ。この顔も、この体も…ななしの全てが私のものなのに」

その言葉と共に、太股から首筋に向かうように手を滑らせるロイ。
触れられた所から、じんわりと体に熱が伝わるのが分かった。

『んっ…』

くすぐったさからか、それとも違うものからか。
私の口から小さく声が漏れる。

「こんなにされたい放題じゃ私は気が気じゃない」

私の唇を遊ぶようにふにふにと触るロイ。
私は、その手を取って自身の服の中へ誘導する。
下着の下へ滑らせ、触れさせたそこは触るだけでも分かるくらいに心臓が早く動いていた。


『…こ、こんな事ロイにしかしないし、されないよ』
「本当……ななしは私の心を全て奪っていく…」

はぁ、と熱い吐息を首筋に感じて私はロイの唇を奪った。

『ん…今日は本当にごめんなさい』
「私も悪かった」

今度はロイからキスをされる。
次第に深くなっていくキスと共に、自分から誘導したロイの手が胸から背中へと滑り、そのまま下着のホックを外された。

私は、それにも気付けないくらいキスを受けるのに夢中で。
キスの嵐が去った頃にようやく服を脱がされかけていると気付いたのだけど、抵抗する理由なんて微塵もなくて。

いつもはベットに行くくせに、今日はソファで良いのかな
なんて考えたが

「今日は止められそうにない」

そんな事を耳元で囁かれたら、もう何も考えられなくなってしまう。
私は何度目かも分からないロイの唇を目を閉じて受け入れた。




ーーー

次の日、盛大に寝坊したななしは横で未だ寝ているロイを叩き起こして仕事に向かったのだが、
執務室に入ると同時にリザ中尉に怒られ、ハボック達にはニヤニヤとからかわれるのであった。







2018/11/17