『はい、コーヒーです』
「あら、ななし。有り難う」


コト、とリザ中尉の机にコーヒーを置く。
リザ中尉は、にこりと笑ってコーヒーに口をつけた。

「ん、美味しい。」
『えへ…有り難う御座います!』

ほわほわ〜という空気が仕事場に漂う。
そんな空気を壊す人が一人…

「ななし!私もコーヒーが欲しいなぁ!」
『ま、マスタング大佐…』

左手で頬杖をつく男性…ロイ・マスタング大佐。
私は、この人の恋人である。

「そんな他人行儀な呼び方は止めてくれたまえ。
さあ、いつものように、その愛らしい声で…」
『マスタング大佐!!』

恥ずかしいセリフを言われて、思わず声をあげる。


「おや、とても赤い顔をしているな。
照れているのか?そんな姿も可愛いぞ」
『っ…!…いっつもいっつも!恥ずかしいの!!』


バン!とマスタング大佐の机を叩く。
後ろに居る、リザ中尉を含めた数人は
またか…と声をあげていた。

「なぁに、恥ずかしがることは無い。
もっとななしの可愛い姿を見てもらえばいいさ」


ーーーいや、待てよ?私以外の男に見せるのは嫌だな。
うーん、うーん、と唸るマスタング大佐。

「…大佐。その辺にしておかないと、
ななしに口をきいてもらえなくなりますよ」
「む。それは困るな」


リザ中尉のお陰で大人しくなる。
…はぁ、やっと終わった…
と、思ったのだが。

「でも大丈夫だ。ななしは口をきいてくれない時、
キスをすると必ず喋ってくれるのでな。
何故かって?ななしはキスが下手でなぁ、息を吸うのを忘れてしまうらしい。
いやぁ、実に可愛らしいぞ、息の切れ切れな姿は。
赤い顔で、潤んだ瞳で名前を囁かれてみろ。
こう、下半身がウズウズっと……」

『もー!!ロイのバカ!知らない!もう知らないんだから!!』


扉を勢いよく開けて、私は廊下に逃げ出した。
もー!絶対絶対何があっても口きいてあげないんだから!


そんな誓いも虚しく、その日の夜には
例の方法で口を開く事になるとも知らずに、
私は顔の熱を冷ますために外へ向かった。




私の可愛い子猫ちゃん



(恥ずかしがり屋さんだなぁ。なあ、中尉)
(はぁ……あの子の苦労が目に浮かびます…)











2018/11/07
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