誰よりも何よりも!2
2014/01/12 03:41

いや既に半分以上はかかってしまっていると表現しても過言ではなかった。
修吾に対する劣情を押し隠すストレスに参り、自分の願望が具現化した夢でも見ているのではないかと一瞬本気で悩んだ。

激しい混乱に見舞われながら何とか修吾を奪還し、勢いで告白をかまし。怒った勢いでちょっと手まで出してしまい。

そうして何と、修吾は受け入れてくれた。俺も溝山さんが好きだと。
第一恋人という表現は、修吾から言ってきたのだ。
好きだとは言いつつ何となく明言を避けていた溝山に、無垢な子供は何処までも直球だった。

『ねえ溝山さん、溝山さんは、俺の彼氏ってことになるんですか?』






「恋人同士ならするんですよね?」

挑むような真剣な表情で、まるで溝山を軽く睨むように修吾が言う。
一応修吾も相当に勇気を出して言っている証拠だ。顔が若干赤い。

その勢いにまるで気圧されるように一歩退いた溝山は、しかし一気に場の緊張を解消するように深い溜め息を吐いた。

修吾に大股で歩み寄り、その丸い額を指で弾く。

「いってえ!?」

「馬鹿かお前は。そうだ、俺とお前は恋人同士だ。それは間違いねえよ。ただな、お前みてぇなガキに欲情するかっての。大人になったらそういうことはするかもしんねぇが、今は気にすることじゃねえからな」

上体を屈め修吾の視線に合わせ、一息に言い切る。
キョトンとしたままの修吾をその場に残し、溝山はトイレに直行した。
下衣も下ろさず便座に腰掛け、うなだれたままハアアーと深い溜め息を吐いた。

エッチしないんですかじゃねえんだよ馬鹿野郎……!

大人の男の人はエッチが好きだ、溝山さんがしたいならしないとって、俺は溝山さんの恋人だから───

修吾の言葉がグルグルと脳内を駆け巡る。
爆発してしまいそうな何かを必死に抑えるように、溝山は髪を掻きむしるように頭を抱えた。

嬉しいよ、ありがてえよ修吾、お前がそう言ってくれて、いや考えてくれてすげえ泣きてえくれえ俺は幸せだよ
ただなぁ、いくら好き同士だからって、中学一年生に手を出すわけにはいかねぇだろうが……!

修吾に対して欲情が湧かないわけではない。寧ろ逆だ、湧きまくりだ。
抗いがたい欲求だが、しかし溝山も大人の男だ。世間体は気にしないとしても、姉夫婦や両親に顔向け出来ない事はしたくないし、いやもう十分顔向けは出来ないのだが、第一に。

第一に、お前は男同士がどんなことすんのか分かって言ってんのかよ

思って、そして思わずその情景を想像してしまい、払拭するように慌てて首を振る。
同世代のうちでは大柄な部類に入るとはいえ、溝山を、いや大人の男の欲望をぶつけるには、まだまだ小さな身体、未成熟な精神。

瞼に鮮烈に焼き付く、あの日の悪夢のような光景。
自分(と瓜二つの謎の変態)の下に組み敷かれて泣いていた、とても男を受け入れられそうにない薄く華奢な身体。


ヤっちまってから傷付くのは、お前なんだぞ───

今までは、まだ修吾が本格的に分かっていないとしても、恋人同士になれた事に浮かれている気持ちが大きかったのに。

しかし、と思う。修吾がそういった事に興味を持ち始めたことが問題ではないのだ。一番の問題は、結局溝山がまだまだ子供で守るべき対象である筈の修吾に、劣情を抱いてしまっている事なのだ。

もう修吾が変な事を言い出さないよう祈るしかない。泣かせたいとは微塵も思わない。

世界で一番美味しいであろう極上の餌が、突然食べていいと自分から転がってきたのだ。自分の理性がどこまでもつのか、自分でさえ不安になる。

この日一気に深まった溝山の懊悩。
もう何度目か分からない溜め息が、口から漏れた。

 



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