「あぁ? 風邪をひいただぁ?
何やってやがる……だらしねえ!!
……何だと? 家に誰も居ねえ?
知るかよ……! 学校休んで寝てりゃ治るだろ!!」
ガチャリ ツー ツー……
電話越しにそう怒鳴り、バクラは乱暴に通話を切った。
「…………ちっ……クソが……!!」
思わず吐き捨てた言葉には苛立ちの色が混じり、バクラは眉間に皺を寄せて歯を噛み締めた。
――放課後。
「ケホッ、ケホッ……
えっ、バクラ……来てくれたの……? コホッ」
「てめえに倒れられたら面倒だから仕方なく来てやったんだよ……!
おらよ、食うもの食って薬飲んでとっとと寝るんだな……!!」
「っ……!! 食べるもの……買ってきてくれたの……!?
ありがとうバクラ……!」
「うるせえよ……言っとくがな、これは貸しだからな!!
治ったら……わかってんだろうなァ?」
「うん……本当に嬉しいよ……!
治ったら私、何でもするね……!
ケホッ、ケホッ……
バクラ、風邪移っちゃうから……もう帰って大丈夫だよ……?
私なら……平気だから――」
「っおい!
フラついてんじゃねえか……!!
顔も赤いしどんだけ熱あんだよ……!」
「え、あ、ううん、バクラが来てくれてうれしいから火照ってるだけだよ……!
平気平気……!! ケホッ……」
「全然平気じゃねーだろバカが!!!
…………無理すんなよ……」
「え……? 最後、何て言っ……」
「っうるせえ!!! とっとと寝ろ!!」
「うっ、うん………………」
桃香の熱を帯びた双眸が様子を伺うようにバクラの眼をチラリと見遣り、すぐに我に返って慌てたように視線を逸らす。
「………っ何だよ……、
ケッ………
もう少しだけ居てやるよ……感謝しなァ……!
だから安心して寝てな」
「!!!! バク……、」
「そうやって気持ちを昂らせるのは回復してからにするんだな……
今はゆっくり休んで風邪を治せ」
「うん……!」
「フン……」
ふい、とそっぽを向いたバクラの顔は心なしか色づいていて――
まるで、桃香の風邪が移ってしまったように見えたのだった――
(嬉しすぎて余計熱が出てきた……!)
(オマエが居ねえと退屈でしょうがねえんだよ!!!)
END
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bkm