ぐるぐるぐるぐる〜〜……
ふわふわふわふわ〜〜……
世界は踊って、頭は回る。
自らがしようとした行為に、何の逡巡もなく――
行動を制限するハードル、理性とかいうやつはとんと低くなって、たやすく崩壊する。
うぅ……こんな私、私じゃない――
**********
「っおい!!!
貴様っ……なんだよそのザマは!!
つーか……何だ? 酒でも飲んだのか!!??」
「う〜ん……
わかんにゃい……ふふふふっ!!」
桃香は明らかに呂律が回っていない様子で、にこにこしながら机に突っ伏してバクラの問いにふわふわと答えた。
「ッッ……バカ野郎!!
何をやってやがる……!!!
ガキのくせに酒なんて飲んでんじゃねえよ!!!!
…あーあーこんなに散らかしやがって……
ったくざけんなよ……! ブチ殺すぞ貴様……!」
バクラは怒りに任せバン!! と掌をテーブルを叩きつけるのだが、当の桃香はふわふわした表情のままで。
「だって……間違えて飲んじゃったんだもん……
おいしいなって思って、気付いた時には世界がぐるぐるで……あはははっ!!
ふふふ……
いいよ……
いいよ、殺して……」
「あァ!!??」
「バクラになら……殺されてもいいよ……
置いてかれたり捨てられたりするくらいなら殺してほしいな……」
「……何言ってやがる」
「だって……
好きなんだもん……
地獄の果てまでついて行きたいんだもん……
バクラのカッコイイところも、ちょっとカッコ悪いところも全部見たいし知りたいんだもん……
ふふふふ……」
桃香の目は完全に座っており、吐き出される息はただ酒臭かった。
「オマエなぁ……酒癖悪すぎだろ……
おらよ、水でも飲んで寝てな!!!」
「や〜だ〜」
バクラは桃香の腕を掴んで椅子から立ち上がらせようとするのだが、ぐったりとした姿勢のままイヤイヤをする桃香は移動することを渋るのであった。
普段とは全く違う、そのだらけきって舐めくさった桃香の姿に、バクラは頭痛を覚えると同時に、先程威嚇したように本当に殺意が芽生えてくるのだった。
「ふざけんなよ……!!
これ以上オレ様を怒らせてみろ……!!
殺してもいいなんつー軽口も叩けねーほど痛めつけて、ズタボロになるまで犯してから人形にしてやるからな……!!!」
どす黒い闇を帯びたバクラの双眸に、桃香は少しだけ怯えた様子で黙って潤んだ瞳をバクラに向けた。
その弛緩しきってだらしなく開きかけた口元からは、赤い舌が覗いている。
「バクラ……好きだよ……」
艶やかな唇を震わせて、愛の言葉を紡ぐ。
普段は情事の時でもなければ口にしない言葉だった。
バクラはこめかみを押さえて深くため息をつく。
「……、わかってんだよ……
んな事はいちいち言わなくてもよ……!
オマエよ……そんな顔、他のヤツの前でしやがったら本当にブッ殺すからな」
「……ちゅーしたい」
「はっ!?」
「きす、したいの……」
「…………」
「やだ……よね?」
「はぁぁ〜〜……」
バクラは俯き、また大きなため息をついた。
「バクラ……しゅき……」
「言えてねぇよ……」
「しゅき……」
「うるせえよ」
「バク……、んぅ……」
ふと塞いだ唇に、桃香は少しだけ驚いた様子で目を見開くと――
すぐに目を閉じて、触れ合う唇の感触に溺れていったらしかった――――
**********
「お酒……くさい?」
「くせぇよ」
「ごめんね……」
「いいから黙ってな」
「んっ……、ぅぅ……ふ……」
また頭がぐるぐるする。
重なりあった唇から、全身に電流が疾っていき身体の敏感なところに集中していく。
「クラ……、バ……クラぁ……」
「欲情してんじゃねぇよ淫乱……
もういいから――
そのまま悶えてな……
酒の力を使ってオレ様を誘った事を……後悔させてやる」
「うぅん……、あっ!」
夜は更けていき――――
溢れ出した劣情は、互いの心と身体を掻き乱して――――
余談。
「うぅん……頭いたいよ……
あ……れ……? 私………?
って、ええええ!!!???」
酔いが覚めてしまえば襲い来る、絶望的な後悔。
お酒はほどほどに!
END
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bkm