ハロウィン(バクラ)

※ハロウィンにコスプレした夢主のお話
※メインシリーズ夢主がピンク色のイメージで書かれています。
※バクラ視点






それはゾンビのような『何か』だった。

いや、そもそもこんな血色のいいゾンビが居てたまるか。
バクラは内心突っ込まざるをえなかった。

だが目の前の女は、何が嬉しいのかいつものようにニコニコと笑い、いつものようにやたらと熱っぽい視線で彼を見つめてくる。

「ハッピー・ハロウィン!」

そう言った桃香の台詞にハートマークがついているのはいつものことなのだが……。

しかし。

「あのね、この格好は、ゾンビの花嫁さんなんだよ!
それでケモノなの。イヌ科だよ!
首輪付きのメス犬花嫁ゾンビ! ワンワン!」

………………………………………………。

レース生地の花嫁ベールを被り、編目から犬耳とやらを覗かせた頭。
体の方は、裾をボロボロにちぎってミニスカートと化した不穏な血の染みつきの黒い花嫁ドレス、雰囲気を出すために腕に巻かれたと思われるヨレヨレの包帯。

ゾンビと言う割には肌に血色の悪いペイントを施すわけでもなく、やたらとツヤツヤで露出度の高い桃香は、ご丁寧にイヌ尻尾といつもの赤い首輪まで装備して、自称『メス犬花嫁ゾンビ』であると両手を前に突き出し

「ヴぁぁ〜……! バウバウ」

ホラーゲームに出てくるゾンビ犬のような声をあげておどけたのであった。

もはやツッコむのも馬鹿らしいが。
それでも。

「そんなに血色のいいゾンビが居るかよ!
つーか欲張って属性盛りすぎだろ……」

リップサービスにも等しい、率直な感想をバクラが述べれば。

ピンク頭のメス犬花嫁ゾンビ桃香は、ニコォォとさらに嬉しそうに笑い、それから何故かモジモジし始め、とんでもないことを口にした。

「それでね、これ…………下、何も穿いてないの…………」

チラ……と彼を伺うような視線は、明らかに罵倒という名の構われ待ちだった。


「………………」

変態だの淫乱だの、すぐに浮かぶ罵倒の言葉はいくらでもある。
だがピンク頭の思惑に即乗ってしまうのも癪なので、あえて黙っておくことにしたバクラなのだ。

腕組みをし、冷ややかな視線だけを桃香に向けて。

しかしその沈黙を、メス犬花嫁ゾンビは『穿いてない理由』を問われたと捉えたらしい。
桃香は、

「だって、ほら…………ゾンビって、わざわざパンツ、穿かないと思う、し……?」

モジモジ。
ちょっと照れながら脚をすり合わせモジモジ仕草である。
何から何までいつもの桃香なのだ!!


「そうかよ……」

「メス犬ゾンビの花嫁は嫌……?
どうか末永く飼い殺して欲しいワn――――アッ、だめっキャインキャイン!!」

皆まで言わせずスカートをめくって尻を叩いてみたら、ピンクのメス犬花嫁ゾンビは本当に犬のような悲鳴をあげて、けれどとても嬉しそうに身をくねらせた。

「……お前これ、尻尾どうなってんだよ」

「アッ 引っ張っちゃヤ…… キャイン!」

「ゾンビがケツ叩かれて喜んでんじゃねえよ……!!」

ペチペチ。
もはや手は止まらないのである。

「あぁん! 叩かれて嬉しいゾンビもいるかもしれないし……っ?」

「だいたいなんだよこの出来損ないゾンビはよ、普通の肌のまんまじゃねえか!」

「キャウン! だって、だって……!!
ゾンビだけど、普通にエロいなって思って欲しかったかr……」

「おい、お約束のセリフ言ってみろよ!」

「え? えっと…………イタズラして欲しい!
あっ違っ――お菓子! ……おかし? 犯……?
アゥン!!」

もはやトリックオアトリートも忘れたらしいピンクの生命体桃香が、恍惚にトロけた顔で幸せそうに喘いでいた。

その体温は、ゾンビとは程遠く、どこまでも熱かった。


END


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