見えるものと見えないもの 後編



「どうした……?
まだ物足りねぇんだろ……?
泣いて懇願しな!!

自分は淫らで自制の利かねぇ変態女で、誰でもいいから遊んで欲しいってよ……!!
ヒャハハハハハ!!!!!」

「っ……、バクラ……!!」






――あれから数時間後。

私は再びバクラに囚われ、無惨に弄ばれていた。

あの暗闇の倉庫と同じように、視界を闇に塗り潰され、手の自由を奪われて――

一方的で強引な仕打ちと見下しながら浴びせられる罵声や嘲笑に切なく揺れ動く心とは裏腹に、私の身体は熱を帯びて再び身を包んだメイド服の下で卑しく疼いていたのだった。

自分の不甲斐なさとままならない身体が恥ずかしくて信じたくなくて、熱っぽい呼吸に肩を上下させながら震える唇を噛む。

回らない頭で考える――
学校での事を。


そう。あのあと――


闇と同化した倉庫でバクラに半ば無理矢理犯されてからの、あのあと――――






沢山いた外部のお客さんが続々と帰りはじめ、盛り上がった文化祭も終焉を迎えた。

皆が後片付けに追われはじめた頃、私は怠い身体を引きずってのろのろと教室へと戻っていったのだった。


「あ、ゆめ……!!
もう大丈夫なの……!?」

「う、うん……! 少し休んだら治ったみたい……!
心配かけちゃってごめんね!」

ようやく保健室から戻ってきたのだと信じている杏子が、心配して声をかけてくれる。

視界の端に映った白い頭に一瞬心臓が跳び上がったが、もちろんそれは普段の、女子達に若干付き纏われて少し困った顔をしている獏良君その人なのであった。

コスプレ服の乱れ一つない整った彼の出で立ちに、先程までその肉体を操作していた「もう一人の彼」の眼差しと、彼が私に何をしたのかを思い出して思わず息を呑んでしまう。

反射的に疼いた下半身に私は、頭を振って先程のあられもない出来事を忘れようと人知れずもがいたのだった……




祭りの後の寂寥感を漂わせながら、教室が徐々に元の姿に戻っていく。

そして、自分を含めクラスメイト達はコスプレを脱ぎ制服に着替えると、夕日で空が朱く染まりきった頃にようやく帰路についたのだった。

スカートの下は、一度脱ぐ羽目になった下着をきちんと穿いてはいたが……

バクラの残したものが未だに下半身の奥で熱を放ち、まるで媚薬のように私の全身を支配し続けていた。


あれから姿を現さないバクラに安堵と複雑な気持ちを抱えたまま、自宅の玄関の扉を開け、誰もいない我が家に上がり込む。

自室に戻り荷物を放り出しベッドに勢いよく突っ伏したところで、事が事だしとりあえずシャワーでも浴びようかな……とぼんやり考えた。

のっそりと重い身体を起こすと手首に痛みが走り、上着を脱いで視線を落としてみれば、きつく縛られた上でもがいてしまった手首に僅かに痣のような跡が残っている。

さすればまた少しだけ痛みが走り、有無を言わさずバクラにされた仕打ちを思い出し脳内にあの時の感覚が蘇った。

「バクラ……」

声に出して名前を呟けば、暗闇の中で自由を奪われながらも、バクラの名前を呼び縋っていた自分のあられもない声が耳元でフラッシュバックする。

頭の中で再生されるバクラの声、高笑い、そして息遣い――

今度こそシャワーを浴びよう。

そう思ってベッドの上で制服を脱ぎ捨ててみるが、私の目がチラリと無意識に横目で捉えていたのは、持ち帰って来たあのコスプレ――メイド服なのだった……





「何やってるんだろう私……」

シャワーを浴び終え、体を拭いたところで、着替えにかかる。

しかしその服は、いつもの部屋着ではなかった。


鏡の前で、愚かな自分の全身をまじまじと眺めてみる。

あろうことか――

私は、どういうわけか、またあのコスプレ……つまりメイド服を身につけてしまっていたのだった。

それも、あの時と同じように、スカートの下に何も穿かない状態で。

下だけじゃない、今は上も素肌の上に直接メイド服を着込んでいた。


昼間も……この、スカートの下に何も穿いてない状態で……
あげく、闇の中でバクラに…………

あの時の光景と感触を思い出すたびにいちいち律義に反応して跳ね上がる心臓と収縮して熱を持つ下半身が、何だか自分でも滑稽に思えた。

鏡に向かって胸を反らせば二つの膨らみが布を押し上げ、突起の形が服越しにうっすらと浮かび上がり、思わず自分で自分のことが恥ずかしくなってしまう。


しかし。

髪を整えてニーソックスを履いて部屋の中を歩き回れば、ふんわりとした風がまた脚の間を流れていき、下半身の開放感に不思議と心地良ささえ覚え始める始末なのだった。

「どうしよう……」

こんなの、変だ。

自分から、こんな……、自室の中とはいえ、下着もつけないでこんな格好をして……

べつに今はバクラに言われたわけじゃないのに、自分から……!!!

自分で自分がわからなくなっていく。

自分のはしたなさを意識すればするほど不思議と身体が火照っていく気がして、下半身が切なげに収縮した。

やはり、私はバクラの言う通り淫乱なのかもしれない。

彼の嘲笑う顔が思い浮かぶ。

――でも、決して、誰でもいいわけじゃない。

むしろ、バクラ以外とはそんな変なコトは絶対にしたくない……!!

そんな事を考えながらかぶりを振っていると、唐突にケータイが震えたのだった――


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