見えるものと見えないもの 前編



今日は、私たちが通う童実野高校の文化祭。

去年は遊戯君の提案でカーニバルゲームを行なったっけ。


今年も、様々な提案が出ていたが――

去年、張り切って提案した「実物(リアル)女子高生キャバクラ」を却下された城之内君が、今年も同じ提案をしてまた反対に遭ってしまったり……

獏良君が、お化け屋敷がいいな! すごくリアルなやつ! と声を弾ませておどろおどろしいモンスターについて語り出すものだから、今度は城之内君が絶対嫌だ、と反対したりで(怖いの? と聞かれ、そそそんなんじゃねーよ!! と焦ってうろたえるのもお約束)、結局は。

何人かからチラホラと出ていたコスプレ大会と、喫茶店の要素を組み合わせて、コスプレ喫茶なるものをクラスで実施することになったのだった。


各々好きなコスプレをしてOKとのことで、何人かは身動きも満足に出来ない奇抜なモンスターだのメカだのの格好をして外で呼び込みをすることになったが、それ以外の人たちは動きに支障のない控えめなコスプレをして、接客に当たることになった。



「見て見てゆめ〜! どう……?
やっぱりちょっと恥ずかしいな〜!」

ブラックマジシャンガールのコスプレをした杏子が、照れながらその場でくるくると回転して見せる。


「すごい……!!
杏子、よく似合ってるよ……! 可愛い!!」

杏子の衣装のミニスカートから伸びるスラリとした脚と、胸元を押し上げる膨らみに、思わず目が釘づけになって感嘆のため息を漏らしてしまう。

「そうかな……? ありがと!!
頑張って作った甲斐があったかも!!
ていうか、ゆめもよく似合ってて可愛いわよ!!
本物のメイドさんみたい!」

「えっ、そうかな……? ありがとう……!
でも本物って……見たことないしよくわからないよね……! あはは……

それに、やっぱり恥ずかしい……
ちゃんと接客できるかな……」

杏子と話しながら、改めて鏡を覗き込んで自分の姿を眺めてみる。

――それはまさに、コスプレといった感じの、非日常なメイドさんの格好だった。


腰の後ろで結んだリボンや、膨らんだスカートから伸びるオーバーニーソックスに包まれた脚が、何だか自分のものとは思えなくてむず痒い気持ちになっていく。


そして、私には一つ気掛かりな事があった。

それは――――



「おーい! 着替えたんだね二人とも……!」

廊下を杏子と歩いていると背後から足音がして、軽快な声が廊下に響く。


「御伽君……! ……と、獏良君!」

振り向くとそこには、声をかけてきた御伽君――と、その背後から顔を覗かせた獏良君の姿があった。

ずき、

咄嗟に小さく心臓が跳ねる。
――が、獏良君の気配がもう一つの魂のものでないことを確認すると、すぐに鼓動は落ち着きを取り戻す。


――そう。

この恥ずかしいコスプレを、バクラに見られたらどうしようという懸念だ。

バクラはきっと、この姿を見下して嘲笑うに違いない。

……考えるだけで胸が痛んだ。


「やぁ……!!
君たち、とてもよく似合ってるよ……!!」

御伽君と獏良君は、それぞれマジシャンと執事のようなスーツのコスプレをピシッと着こなして微笑んでいた。

二人のそのスラリとしたスタイルの良さに、またため息がこぼれ落ちる。

「……どうしたのゆめ?
ボクの華麗でスタイリッシュなコスプレに見とれちゃった……? ははは」

「あ、いや……」

「ちょっと、何言ってるのよもう……!
もうすぐ時間だからさっさと行きましょ!」

「ははっ、ブラックマジシャンガールに怒られちゃったよ!」

「あはは」

そのまま和気あいあいと他愛ない話をしながらみんなでクラスへ戻り、やがてお店を始める時間を迎えた。

外部からもお客さんがやってきて、クラスのみんなで交代しながら接客にあたっていく。


「いらっしゃいませ〜
……うん、この格好だとお帰りなさいませ……の方がいいのかな……?」

「ゆめ……!」

「あ、遊戯君!!
……というよりもう一人の遊戯君……?」

接客の合間に廊下に立って独り言をこぼしていると、ブラックマジシャンのコスプレをした遊戯君――それも、千年パズルに宿るもう一つの人格の方――が廊下を走ってきた。


「遊戯君、どこ行ってたの……?
もう交代の時間過ぎてるって……杏子が探しに行っちゃったよ……!
獏良君も来ないし……!」

「すまない……!
実は他のクラスでデュエルスペースが設けられていて、そっちでデュエルをしていたんだ!」

「え、デュエル……?」

「ああ!!
城之内くんと獏良くんもいたぜ!!
校外の知らない人と対戦できるから、とても楽しかったぜ!!」

「そ、そうなんだ……」

文化祭の日にまでデュエルとは、さすがもう一人の遊戯君。

「獏良くんはもうすぐ来ると思うぜ……!
でも、女子に囲まれてたからどうなるかわからないけどな……!!」

「あはは……獏良君人気だもんね!
コスプレ、すごく似合ってたし……
遊戯君もブラックマジシャン、似合っててカッコイイよ……!
コスプレとか、こんな機会がなければ出来ないから新鮮だよね……!」

「そうだな……! この格好はちょっと変な感じがするがなかなか楽しいぜ……!
ああ、ゆめもよく似合ってるぜ、その格好! 見違えたぜ!」

遊戯君がキリリとした顔で真正面から照れもせず言い放つものだから、思わずむず痒くなって手を振って慌ててしまう。

「あ……、ありがとう……
あ、杏子もよく似合ってたよね!!
ブラックマジシャンガールのコスプレ、かわいかった……」

「そうだな……!
杏子には悪いことしてしまったな……」

お客さんも落ち着き、特にすることもなく、遊戯君と教室の中で他愛もない会話をして過ごす。

遊戯君は、人のデュエルを見るのは参考になるし楽しいぜ! と熱く語っていた。


「ところで……、一つ聞きたいんだが……
この前の夜中、街でゆめによく似た女性を見掛けたんだが……、君なのか……?」

「えっ」

ドクリ、と跳ねて収縮する心臓。

私は一瞬、何を言われているのかわからなかったのだった――


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