25



601号室のキッチン。

清掃が行き届いているのか、それとも一人暮らしゆえほとんど使用していないのか――

とにかく、獏良君ちの台所はきちんと整頓されていてピカピカだった。

そんな彼の家で勝手に台所を借りて申し訳ないな、と思いつつも、私は調理器具と食器を借りて朝食を作るのだった。


「……はいどうぞー。
あの……素人高校生の手作りだから、お店の食事とは比べないでくれると嬉しいな」

トーストに、半熟の目玉焼きとベーコン、サラダ。そして簡素な野菜スープ。

スープにもベーコンが入っているし、一応お肉だから許して欲しい。
そんなことを思いながら、私は三人分の食事をテーブルに並べていく。


「…………」

盗賊バクラは二つ盛られた目玉焼きをじっと眺め、それから表面に焼き色のついたトーストを指でつついていた。

ぐぅー、と鳴った彼のお腹の音。
食べ物を凝視する盗賊王は、飢えた獣というよりはごはんを待つ犬のようだ。
可愛いらしさしかない。

「あっ、目玉焼き……卵を焼いたやつなんだけど、もし半熟じゃない方が良ければもっと加熱するから言ってね。
あと、目玉焼きにかける調味料は……醤油、塩コショウ、ソース……あとなんだろ、ケチャップとかマヨネーズとかが一般的かな?

ここに適当に置いておくから、ちょっと出して味見してみると良いかも」

言い終わると同時に、がぶりとまずトーストにかじりついた盗賊王。
そういえば彼には、食パンを使ったサンドイッチを出したことがあったっけ。

それから彼は器用に箸でベーコンを掴むと、もむもむと口に押し込んだ。

「…………、」

知っているものや、お肉っぽいものから口にするとは……やっぱり可愛いなぁ、と相変わらず思う。

何かを食べている時の盗賊バクラはある意味無害だ。

食べかすを飛び散らかせながら何かを喋りまくるということもないし、ガツガツと集中して食べるから――たとえ頭の中では何を考えていようと――食事を用意した方にとっては嬉しい。

また、食に対する素直さのようなものもあって、ある意味年相応で愛らしくもある。

そしてそれは、千年リングに宿るバクラにも通じるところがあって。

彼はさすがに目の色を変えて食べ物にがっつくような真似はしないが、いざ食べるとなったら集中して意外と量を平らげているのだ。

恐らく普段は食事という行為のほぼ全てを獏良君に任せているのだろうから、『バクラ』で取る食事シーンは結構珍しかったりするわけだが……
それはさておき。

そんな二人が揃った、貴重なお食事タイム――
個人的には是非とも録画しておきたいところだったが、当然それは叶うはずもなく、私は脳という記憶媒体にその光景を必死に焼き付けるのだった。

これが最後になるかもしれない、と薄々思いながら。




「…………で?
ゆめ。オレ達に話す事ってのは何だよ」

切り出したのは盗賊バクラだった。


朝食の時間も呆気なく終わりを告げ、いつかのようにソファに腰を下ろした私たち三人。

ボーダーシャツに千年リングを掲げた、獏良君の肉体を持つバクラと――

私が買ってきた赤いパーカーに身を包み、同じく千年リングを首から下げている盗賊バクラ――

そして、昨日と同じくL字型ソファの中央に鎮座する私。

とうとう覚悟を決めた私は、昨晩と今朝の『闇の中』での出来事を、彼らに話すのだった。



「なんだそりゃ……その声の主は何モンだ……?」

「分からない……。
でも、聞き返せる雰囲気じゃなくて。
怖い……し、なんか、人間じゃないというか……言葉は理解出来てるのに、本当は理解出来てないというか……」

そう。

あれは『声』であるのに、声じゃなかった。

もっと直接的というか――
音である声が鼓膜に伝わり、脳に送られ、意味ある言語に変換され理解する、という一連の流れを、強引にすっ飛ばしたような――

まるで脳に直接、情報が書き込まれたような。

吐き気さえ覚える、何とも冒涜的な形容しがたいモノだった。

大いなる存在――
チープだとは思うけど、そう例えても大袈裟ではない、何らかの超越的存在――


「ケッ、到底信じられねえ話だが……
しかし、だ」

くだらない、というように吐き捨てた盗賊王だが、直後に自分の言を自分で否定する。

その言葉に現代のバクラも「ああ」と頷き、それから彼は盗賊王のかわりに続きを語った。

「信じたくねえが、その『声』の言ったことを試す価値はある。
このトチ狂ったタイムスリップごっこが、オレ達の知らない何者かの仕業なら……
そいつと対立する何者かが、このねじ曲がった現象を元に戻そうと手を出してきたっつー可能性も考えられるからな」

白いバクラはそう言って、自身の千年リングに手をやった。

盗賊バクラはその話に不満そうな顔をしたが、しかし悔しいが同意と言った様子でソファにふんぞり返ると、口を開く。

「ただの人間にこんな真似が出来るとは思えねえ……
オレ様をこの世界に飛ばした奴、それを正すようにゆめに入れ知恵をした奴……
どちらも何か『別のモン』だ。

そもそも、千年リング同士を『繋げた』瞬間に『異変』は起こった。
そのきっかけがあったからこそ、そいつはようやくゆめを介して情報を伝えられるようになった、っつー可能性が高い。

……『在るべき場所へ返す』ことがそいつの目的なら、オレ様がこの世界に来た時点で即干渉して来るはずだからな。
だが、何らかの制約によりそれは適わなかった。
それこそ、ゆめが偶然二人の千年リングに触れていなければ」


この世に二つと存在するはずのないモノ同士を重ね合わせれば、在るべき場所へ還る――

この世に二つと存在するはずのないモノ。
それは千年リングに違いない、というのが二人のバクラの出した結論だった。

二人の肉体は基本的に別物だ。
獏良了という人間と、盗賊王バクラという人間は似ている部分もあるが、本来生きていた時代が違うし、間違いなく別人だからだ。


では、千年リングはどうか。

盗賊バクラが首に掛けている千年リングと、現代で獏良君が首から下げている千年リングは、モノ自体は同一だ。

3000年前、盗賊王が手に入れた千年リングが、紆余曲折を経て、現代で獏良了の手に渡った。

つまり3000年の歴史を持つ千年リングは、本来、同時代に二つ存在することなど絶対にありえないのだ。

だが、現実として、千年リングは今ここに二つ存在している。
遠い遠い大昔に生きていた古代人、盗賊王バクラの肉体とともに。

随分慣れ親しんでしまった気もするが、改めて考えれば、この状況自体がとんでもなく異常なことなのだ。


だから。

二人のバクラは、真偽の定かでない私の『闇の中』の話に、信じる信じないはさておきとして、とりあえず『乗る』――

そう決めたようだ。

たとえあの『冒涜的な声』がデタラメだとしても、試す価値はある――

両者はその見解で一致したのだ。


そうと決まれば、善は急げというやつだ。

白いバクラは、「いつ決行する、」と、まるで盗賊バクラがどれほど本気なのか探るように、結論を急いだ。

現代のバクラからしたら当然そうだろう。

一時的に共闘関係を結んだとは言え、かつての自分自身である盗賊バクラを元の時代に戻せるというのなら、それが一番いいはずだ。

――けれども。


「そう慌てんなよ……
昨日言っただろうが、オレ様が元の時代に戻ったら、結末を変えてやるとよ。

……そのためには、もうちっとこの『未来』でのお勉強が必要だ。
メシやテレビがどうとかじゃねえ。
『古代』に戻って派手に暴れられるような、役に立つ現代的知識ってヤツだよ……!

この世界の便利なモンも持ち帰らせてもらうぜ。
『電気』だの『ガス』だのが無くても動くモンがあんだろ……?
この盗賊王サマがこの世界から盗んで、過去とやらで有効に使ってやるよ!!」

言い切った盗賊バクラの声には、覇気がこもっていた。

何者にも怯まない不敵な笑み。
現代の知識と道具を過去に持ち帰った盗賊王が、精霊獣の力を取り戻したら――

それこそ最強だろう。間違いなく。


「……でもバクラさん、ここ日本だし、私たちも表向きは一般人だし……
テレビに出てたような強力な武器とかは用意出来ないよ?
知識だけなら図書館やインターネットとかでどうにかなるかもだけど……」

「わーってるよ……!
扱いに困るデカブツまで持ち帰ろうなんざ思っちゃいねえよ。
で……その図書館てのは何だ」

「ええと、沢山の本の貸し出しを行ってる無料の公共施設だよ。
歴史とか、武器とか、戦術とか……そういうのが書かれてる本を読めば何かの役に立つかも……

あ、でも、あのファラオのことは載ってないみたい。
名も無きファラオ……歴史から抹消された王だって聞いたことがある……」

「…………」

ファラオの単語を出せば、ピクリと跳ね上がる盗賊王の眉。

だが彼はそれ以上何も言わずに、黙っていた。


そんな盗賊王と私のやり取りを聞いていた現代のバクラが、待てというように肝心な部分に話を戻した。

「『時間がないから早くした方がいい』……オマエはそう聞いたんだな。
この奇妙な現象に制限時間があると、その『声』ってやつはほのめかした……
チッ、随分と抽象的な話じゃねえか」

私の言を反芻しながら、不満顔を覗かせるバクラ。

大邪神の思惑を外れた大いなる『何か』に、一方的に振り回されるだけなこの状況――

盗賊バクラもさることながら、千年リングに宿るバクラにとっては不本意なのだろう。

それは、必要だと分かっているからとりあえずは『乗る』けども、本心で言えば『面白くない』――
そういうことだ。


私は少しだけ考えて、すぐに心を決めた。

バクラ達が望むなら、動くしかない。
そう思ったから。

「あの……『もう一回聞いてくる』から、少ししたら私を無理矢理起こして欲しい」

「……っ!?」

私の言葉に、白いバクラは少しだけ眼を見開き、盗賊バクラは「なんだと?」と口にした。

「……怖いけど……でも、あの『闇の中の声』にもっといろいろ訊いてみる。

えっと、時間が無いというのは具体的にどのくらいか、それを過ぎたらどうなっちゃうのか、ってことと……
あとは、その声の主は何なのか、何が目的なのか、とか……?

もう一度二人の千年リングに触れて、試してみるから……
だから二人とも、もうちょっとこっちに来てもらってもいいかな」

言い切って、両腕を伸ばし、手が届く範囲にまで寄って欲しいと二人にお願いする私。

「…………」

盗賊王は無言で腰を浮かせ、私のすぐ隣に座り直してきた。

褐色の手が、まるでそうすることが当たり前だと言うように私の腰を抱く。

私はドキドキする胸を抑え、片手でそっと盗賊バクラが首から下げている千年リングを掴んだ。

それから、白いバクラに顔を向ける。

「……本気か」

念を押すように吐き出された一言に、私はこくりと力強く頷いた。

脳裏に、昨晩や今朝がたの『恐怖』が蘇り、体がぶるりと震える。

人智を超えた得体の知れないモノ。

私はそれに、今自分から触れようとしている。

「……っ」

バクラも私の隣に腰を下ろし、千年リングを差し出すようにこちらを向いた。

感情の読めない瞳が私を見つめ、私は恐怖から早くなっていく鼓動を強引にねじ伏せて、震える指を現代の千年リングに伸ばす。

「ゆめ」

不意に現代のバクラに名前を呼ばれ、動きを止めた私は彼の顔を見た。

「……もしもの時は、オレ様を呼べ」

――それは殺し文句だった。
私にとっての『基準点』だった。

彼はやけに真剣な双眸で私を真っ直ぐに射抜き、念を押すようにそう言った。

切なさで心臓がぎゅっと締め付けられ、私はコクリと頷く。

それから盗賊バクラの方も窺い、彼もまた真剣な表情で私を見つめていることを知ると、私の胸はある種の使命感のようなもので満たされるのだった。


――バクラ達のためならば。

たとえ、全力で逃げ出したい、耳を塞いで背中を向けたくなる闇にだって、立ち向かってみせる。

そう自分を鼓舞して、奥歯を噛み締める。

そして。

覚悟を決めた、何の変哲もない女子高生の指が、二つめの千年リングに触れた、時。


全てが寸断され、闇に落ちた。



**********



ぐたっ、と一瞬で力を失ったゆめの体。

彼女の腰に手を回していた盗賊王は、その体がソファからずり落ちる前に抱きとめると、彼女をソファの上に寝かせた。

固く閉じられた瞼。

眠りとは違い、まるで死んだように微動だにしない体。

ほんのわずかに上下する胸だけが、彼女を辛うじて生かしていた。

『バクラ』に骨の髄まで入れ込んだ、ゆめという少女。

盗賊バクラがその顔をじっと見つめていると、もう一人の『バクラ』がおもむろにとある物を取り出した。

「、そいつは……!」

かつて神官の一人が所持していた、千年ロッド。

その神官は、魔物カーを石版に封じる為にロッドの力を使っていた。

そして、使い方によっては、他人の精神に干渉することが出来る。

一度は使用を躊躇った現代のバクラだが、とうとうその力を使うということなのだろう。


「まさかコイツに使うことになるとは思ってなかったがな。
ケッ、ろくでもねぇ事ばかり起きやがる」

吐き捨てた白いバクラは、ロッドの先をゆめの頭に向けた。

未だ目覚める気配のない彼女。

そして――



**********



――ここは。


そうだ、『闇』だ。

おぞましいモノが居る深い闇。

私は自ら再びここに来て、そして――


そうだ。

バクラのために、訊かなければならない事がある。

だから、私は。


ひたり、と背後に迫る何か。

全てが恐怖で塗りつぶされてしまう前に、私は叫んだ――
お腹の底から声を絞り出すように。

「訊きたいことがあるんです……!!
私たちはいつまで今のままでいられるのか……
もしそれが過ぎたらどうなるの、か……!
あと、あと――」


《黙れ》


それは『声』だった。意思だった。
形容も、理解も出来ない、大いなるモノだった。

一瞬で思考が打ち砕かれる。

恐怖がたちまち全身を支配し、私はそれ以上何も言うことが出来ず、何も考えることが出来ず、硬直した。


《存在自体に とてつもない 差異があると》

《薄々 理解していながら》

《自ら ここに 足を踏み入れるか》

《挙句に 『あれ』を 使って 邪悪な意思を 引き入れるとは》

《度 し 難 い》


「……っ!!」

頭が回らない。

たとえるなら、高層ビルの間で綱渡りをしながら、難しい計算問題を解くような。

恐怖が思考を妨害する。

名状しがたい圧倒的なモノが、私という存在を全て塗りつぶす――

私は膝をつき、声にならない声を上げてもがいた。

理解出来ない。
だが、頭に『刷り込まれる』。

こんな、こんな……!!!


《だが 良いだろう 教えてやる》

《今日の 日没まで だ》

《それを過ぎたら おまえは 死ぬ》

《生き延びるために 『在るべきモノ を 在るべき場所 に 戻せ』》


『声』は言い切った。

忘れることなど出来ないよう、私の頭に直接『書き込んだ』。

胸が締め付けられ、呼吸さえおぼつかなくなる。

たとえば、地を這う蟻が、人に見下ろされていることに気付かないように――

圧倒的すぎる存在が、私を見下ろし、抑えつけ、行く手を阻み、恐怖を与えて――

そして。そして……!


《……精神か 肉体の 一部 でも 破壊して やれば》

《危機感 が 生まれるか?》


『声』はとてつもなく恐ろしいことを言った。

拒否も、言い訳も、動くことも、出来なかった。

蟻の巣に水を流し込むような気軽さでもって、『それ』は私を壊すつもりなのだ。


(バクラ……!!)


勝手に流れ出る涙を拭うことも出来ず、私は彼の――彼らの名を呼んだ。

(バクラ……、バクラ、バクラ……!!!!)

私にとっての『呪文』。あるじ。
帰るべき場所。唯一無二の『存在』。

愛する、ひと。


おぞましい『闇』が、私を壊すために、首筋を撫でる。

(バクラ……!!!)

――もう駄目だ、そう思った瞬間。


ばちん、と何かを弾く音がして。

『遮られた』。


まるで、水没する寸前だった巣穴に、蓋をされたように。

《っ……!》

それは幻聴だったのかもしれない。

でも。


私は『闇』から引き上げられる前に、確かに彼の声を聞いた。

その声はこう言っていた。

「オレ様のモンに手を出すんじゃねえよ」

――と。





「…………っ」

目を開ければ、見慣れた風景が目に入った。


まるで、一番深い眠りの最中に、無理矢理叩き起こされたような――

現実を把握できない。声が出ない。焦点が、合わない……

――そうだ。

ここは……601号室だ。


腕に力を込め、軋む体を強引に起こす。

すぐ傍にある気配――褐色肌の盗賊バクラ。
そして、獏良君の体を持つバクラ……、その手に握られている黄金色の長物は……

「……おい」

様子を窺うような盗賊バクラの声が鼓膜を震わせる。

――私。わたし……


「ゆめ。何も考えんな。今は――」

白いバクラがそう口にしたのと同時だった。

脳裏に蘇った記憶が、奔流のように炸裂し、恐怖となって私の全身に拡散した。

「ぁ……、く、……っ」

わななくだけの唇。
どっと染み出す汗と、意思に反して溢れ出る涙。
心臓も、指先も、すべてが凍りついたように震え、声すら発せなかった。

「……、……っ!!」

すぐ傍に在る気配に縋りつくことすら出来ない。

精神の容量を超えた何かが、私の全てを支配していた。


「チッ、そいつを落ち着かせろ……! 死ぬぞ!」

『バクラ』の声が響き、咄嗟に伸びてきた腕が私の体を包み込んだ。

「……何だ『あれ』は……!
オレ様が千年ロッドコイツで干渉してなかったらどうなってた……!
あんなモノが……まさか……」

聞こえてきたバクラの声は、信じられないものを見たというようにうろたえていて、それは即ち『あれ』が、彼の思惑の外にある存在だという事実を示していた。

一方で、義務感からか、私を宥めるように無言のまま抱き締める体温――盗賊バクラだ。

彼は震えて怯えるだけの私の背中と頭を撫でながら、苦しくなるくらいの強さで私を腕の中に閉じ込めている。

何よりもあたたかいその温もりに、私は震えるだけの腕をゆっくりと動かし彼の背中に回すと、ぎゅっとしがみつくように握り締めた。


深呼吸と瞬きを繰り返せば、次第に収まっていく恐怖心と震え。

肺を満たしたほのかな香りは、シャンプーやボディソープといった人工的な香りと、どういうわけか現代のバクラと近い、盗賊王自身のやわらかな匂いだった。

「……大丈夫か」

耳元で囁かれる声。

「うん、」と一語で返せば、そっと温もりが離れていった。


バクラの手にある千年ロッド。眉根を寄せ、歯噛みをしている彼。

口をつぐみ、真剣な表情で何事かを考えている様子の盗賊王バクラ。

そして、ようやく落ち着きを取り戻した、私――

ほんの軽い思いつきで試したコトが――『闇に潜むもの』が、途方もなく大きく危険なモノだったこと。

それを知った私たちは、しばし言葉を失い、黙り込んでいた。


日没まで、という『声』。

過ぎれば『死ぬ』、という『声』。

バクラは千年ロッドの力を使って、私と『あれ』のやり取りを聞いていたのだろうか。
私は怖くて聞けなかった。

日没までに、在るべきモノを在るべき場所に返さないと私は死ぬ……?

途方も無い予言が、不穏なしこりとなって背中にべったりと張り付いている。

どうするべきか。

私は、バクラ達は、一体どうするべきなのか。

私には何も分からないのだった――


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