13



「で……?
全部話してもらおうじゃねえか。
もう隠し事はナシだ。いいな?」

「ああ」


マンションの601号室に着いた私たちは、リビングのソファに座り、情報共有という名の話し合いを行なっていた。

L字型のコーナーソファの端に腰掛け、腕と脚を組んで盗賊王を睥睨しているバクラ。

かたや、もう片方の端寄りに座り、偉そうな王様のようにふんぞり返って不敵な笑みを浮かべている盗賊王バクラ。

そして私はその真ん中あたりで、左右の二人の様子を伺いながら引き攣った笑いを浮かべているのだった。

ソファーテーブルの上には、ここに来る前にコンビニで調達してきた飲み物とお菓子が並べられ、どこなく不穏な空気の中で場違いな印象を醸し出している。

二人のバクラは、互いに千年リングを首から掛けていて(外では服の下にしまっていた盗賊王も今はリングを表に出している)――

私はとりあえずこの気まずい雰囲気をどうにかしようと、自分のペットボトルに手を伸ばして口をつけたのだった。

「あはは…………
まぁ、ゆっくり飲み物でも飲みながら話そうよ。
お菓子もあるし。なんだか小腹が空いて来ちゃったしね……あはは!」

わざとらしく吐き出した言葉にはしかし反応がなく、私は乾いた笑みを張り付かせたまま、ポテトチップに手を出すと、口を開け、皆でつまめるようにしてあげるのだった。


「単刀直入に訊く……
『あれ』は……、この世界に在る千年錐に宿っているものは……
かつてのファラオの魂だな?」

「……そうだ」

いきなり核心に切り込んだ盗賊王。
バクラもそれをあっさり認め、盗賊王はギリリと歯を噛み締めていた。

ファラオを始めとするかつての王族を、心底憎んでいる盗賊バクラ。
そのファラオとの決着が自分の時代ではつかず、3000年後の未来にまで持ち越されていると知った時の彼の心情は――

考えるまでもなかった。

盗賊バクラはあの時――街で千年パズルの気配を察知し、追っていった先で――恐らく、表に現れているもう一人の遊戯君を見かけてしまったのだろう。

これは千年リングに宿っているバクラ談だが、遊戯君の体を借りて表に出ている時のもう一人の遊戯君は、かつてのファラオの姿に非常によく似ているらしい。

首から下げられた千年アイテムに、ファラオによく似た『現代の人間』。
いくらこの世界に来たばかりの盗賊王と言えど、すぐにピンと来たに違いない。

それでも彼が遊戯君に接触せず踏みとどまったのは、昨日説明した二人のバクラ同士の事情があるからだ。

そんな盗賊バクラの苛立ちを察してか、獏良君の肉体を持つバクラが口を開き、明確に経緯を語っていった。

「結論から言う。
かつて千年錐と呼ばれていたモノ……今では千年パズルと呼ばれている。
それを取り巻く状況は、獏良了という人間を宿主とするオレ様とほぼ同じだ。

千年パズルに選ばれた、武藤遊戯という人間……それがこの時代における所持者だ。
そこに封じられている魂こそが、貴様も知っているファラオの魂……
ここまではいいな?」

「ああ」

「かつてファラオが所持していた千年錐は、3000年前にファラオの魂を封印した後、バラバラに砕かれた。

その断片は、形を成さぬまま3000年の時を超え……
この時代で武藤遊戯の手によってようやくパズルとして組み上げられ、千年パズルとなった。
そしてファラオの魂も蘇った……
武藤遊戯の肉体を器としてだ」

「何だと……!!」

黙っていた盗賊王が弾かれたように立ち上がり、目を見開いて
「待てよ、何故そんなことになった……!」
と食ってかかる。

が、
「結論から話すと言っただろ……!
座れ。話すことはまだ沢山ある」
とバクラに一蹴され、舌打ちをこぼすと再び腰を下ろしたのだった。

眉根を寄せ、殺気立つ盗賊バクラはテーブルの上にあったペットボトルを乱暴に引っ掴み、それから――

ペットボトルを見つめた彼は、戸惑うように少しだけ硬直し、やがて私の方に口の開いてないペットボトルを無言で差し出して来るのだった。

「あ、これはこうやってちょっと力を入れて……
回せばほら、開いたよ」

「…………」

蓋を開けたペットボトルに、おずおずと口をつける盗賊バクラ。

彼が軽く飲み物を口に流し込んだ時――

異変は起こった。

「ッッ!?!?」

バッと口を押さえた盗賊王は、目を白黒させながらも冷静に振舞おうと考えたらしく、黙ってそのまま固まっていた。
瞬時に事態を察した私は、「あー」と声を上げる。

「……やっぱりこれ、炭酸だ……!
バクラさんが飲んだジュース、炭酸のやつだから……
あ、でもその刺激は別に変なものじゃないよ!
慣れるまで気になるかもだけど、ちょっとピリピリするくらいだから。

もしダメだったら私の飲む?
こっちは炭酸じゃないから刺激ないよ。
…………大丈夫?」

「………………ああ」

やがてごくり、と炭酸を飲み込んだ盗賊王はいつもの彼に戻っていた。

「よかった……!」

はは、と笑いかければ、盗賊バクラとは逆方向から「おい……!」という心なしか苛立っているバクラの声が聞こえてきて。

慌ててそっちに向き直ってみれば、これまた眉根を寄せたバクラが、
「話を続けていいかぁ……!」
と、皮肉たっぷりの声で吐き捨てたのだった。


バクラは続ける。

「3000年前ファラオは、大邪神の力に手を焼き、最終的に自らの命を道連れにする形で千年錐に魂を封印した。
そうするしかヤツには方法が無かったからだ。
この意味が貴様には分かるよな……?」

「……ああ。
七つの千年アイテムが冥界の石盤に揃うまでファラオが生きてたっつーのは意外だが……まぁいい」

「それから3000年だ。長かったぜ……!
だが今、二つの魂はそれぞれ最適な器を得て、こうして巡り合った……
つまりようやく機会チャンスが巡ってきたってわけだ……!!

『オレ様』は今度こそ、ファラオを抹殺する。
この時代のやり方で、だ。
故に、オレ様の邪魔をする奴は消すぜ……!
たとえそれが、過去の自分であろうともな……!!」

「…………」

静寂。

バクラが一息に語った内容には、3000年前に生きていた当事者達がどのような結末を辿ったのかがぼんやりと示されていた。


一度だけバクラは私に語った事がある。

バクラという盗賊に、ファラオと称される王様。
だがそれ以外にも、神官たちや、それを取り巻く数々の事情が絡み合っていると。

千年リングに宿り、現代に現れた『バクラ』の人格の元となったらしい盗賊王バクラ。
七つの千年アイテムを冥界の石盤に収めた時に得られる、大邪神とやらの力。

しかしそれだけだ。
バクラが私に教えてくれたのは、何処となく抽象的なそんな内容だけだったのだ。

では当時、そこに至るまでに具体的に何があったのか。
一体どういう経緯を辿って、ファラオが千年錐に己が魂が封じるという結末になったのか。

それを私は知らないし、バクラは教えてくれないのだ。


いつだったか。

現代を生きる遊戯君と、千年パズルに宿るもう一人の遊戯君(古代のファラオの魂)……
という彼らの境遇を考えた時に。

ならば、現代を生きる獏良君と、千年リングに宿るバクラ(古代の盗賊王の魂)……
は、境遇が同じなのではないか? と……

私はそう考えていた事があった。
(バクラは邪悪だから遊戯君のように獏良君と共闘というわけにはいかなかったが)

だがその時にバクラから発せられたのは――

「同じだと思うか?」

というたった一言だった。

その声は冷ややかで、それでいて嘲笑うような。
悪意と、愉悦の入り混じったような。

超常的で、人間の存在など圧倒するような、そんな――

そんな得体の知れないモノが混じっているような気がしたのだ。

『バクラ』の本質は、もはや人間ではない。
私がその時悟ったことだった。

けれども私はそれでもいいと思った。

『バクラ』を構成するものが、たとえ人間から外れていたとしても。
彼に抱く気持ちは何ら変わらないのだから。

けれどまぁ、それはさておき。

私は盗賊王に、千年リングに宿るバクラは盗賊王の未来の魂、近似値だと仄めかしたし、バクラもまたそういうていで盗賊王に話をした。

恐らく、その方が都合がいいからだ。
獏良了という人間の体を宿主として、かつてつけられなかった決着をこの時代でつける盗賊王の魂……
というシナリオの方が、今の盗賊王にとっては親近感があるだろう。

『バクラ』の中身が得体の知れないモノだとか言ってしまうよりは。


ともかく。

今バクラは、予期せずこの時代に現れた盗賊王に、過去の結末とこれからの指針を話して聞かせた。

それは、もし真実を話したとしても盗賊バクラはこちら側につくはずだ、という彼なりの確信があったからだろう。

たとえ失敗しても諦めない。目的は必ず果たすと、私に豪語した盗賊王。
彼の本質が『それ』ならば、ここで無駄に暴れて全てぶち壊すようなことはしないのだ。

もっとも――この世界に来たばかりで何も情報がない状態の時にファラオを見つけてしまっていたらそうとも言い切れなかっただろうから、遠回りだとしても段階を追って慎重にここまで来たバクラのやり方はやはり正解なのだろうけど。


だが。

「クク……ククク……」

俯きながら肩を震わせて不敵に嗤う、盗賊バクラ。

「、何がおかしい」

盗賊王は、俊敏な身のこなしでこちらへ腕を伸ばして来ると、強引に私の肩を抱いて己の方へ引き寄せた。

「っ!?」
「!!」

「おっと、動くなよ?」

白いバクラを牽制するようなその一言は、今の行動が決して戯れなどでは無いことを示している。

私の肩に腕を回した彼は、褐色の手でこちらの首を掴み、やや上向きで顔を固定されてしまった私は硬直した。
既視感――ナイフが出されていないだけ、今回はまだマシだけど。

「何のつもりだ……また人質ごっこか?
学習能力がねえのか、貴様は」

眉を吊り上げて詰問するバクラに、盗賊バクラはまたクククと薄く嗤って答えた。

「なぁ『バクラ』さんよ――
オレ様の魂以外にも、千年リングそいつに入ってるモンが他にあんだろ……?
貴様の千年リングから漂ってくる気配……
オレ様の千年リングとはちっとばかし違うみてえだからな」

「っ!」

「別に、貴様の口から全部語らせようってワケじゃねえよ……!
クク、人生のネタバレとやらを全部食らっちまってもつまんねぇからな……!
だが……、オレ様の推理が合ってるかどうかの答え合わせだけには付き合ってもらうぜ。
そのくらいイイだろ?」

私を人質に取った格好のまま、盗賊王はそんなことを言う。

彼が『バクラ』の違和感に気付いていたことに驚愕した私は、そのままバクラの反応を待つことにした。

「ケッ、言ってみろよ……
だが下らねぇ人質ごっことは関係ねえぜ。
哀れな時の迷子である貴様の推理ゲームに、付き合ってやろうってだけだ」

ボーダーシャツを身にまとったバクラは、邪悪な笑みを浮かべ盗賊王を挑発するようにけしかけたのだった。


「クク……
ま……、答えなんざもう出てるも同然だがな。
大邪神ゾーク・ネクロファデス……いや、今はその断片か……?」

「…………っ」

盗賊王が言い切ったとき、獏良了の体を持つバクラは驚かなかった。

ただ彼はクク、と薄く嗤い、
「だとしたら、貴様はどうする……?」
と一言問い返しただけだった。

「別にどうもしやしねえよ。
『七つの千年アイテムを揃え、大邪神の力を 得た オレ様が、貴様だとするならば』……
そんだけ邪悪になっちまってても不思議じゃねえからな」

ん……?

「だが、『貴様はファラオによって 力の大部分を 千年錐に 封じられた』。
だから『もう一度七つの千年アイテムを揃え、大邪神の力を 取り戻したい』
……そういうこったろ?」

「…………」


盗賊王は何かを理解したようにそんなことを口にした。

正直――私には、それが正解なのかどうかもわからなかった。

でも。

『大邪神の力を得た、盗賊王バクラ』……?

そこには何か、腑に落ちないような――些細な違和感があった。

しかし、私にはその正体がわからない。

千年リングに宿る今のバクラと、かつての盗賊王バクラは、本当に近似値なのか……?

だとしたら、どのくらい……??

盗賊王バクラという人間。敵対するファラオ。
そして、バクラが七つの千年アイテムを集めて『得たという』大邪神ゾーク・ネクロファデスの闇の力……?

本当にそれだけなのだろうか……?

それではまるで、たった二人と、一つの大邪神という存在だけで全てが完結してしまうような。

けれども以前バクラはたしかに、もっと込み入った事情があることを匂わせていたような……
それに。

ただ千年アイテムを集めて大邪神の力を再び得るだけなら、煩雑な『決戦の舞台』なんて要らないんじゃ……??


――考えれば考えるほど頭が混乱していく。

私を拘束する盗賊バクラの体温が私の思考を乱していることも原因のひとつだ。

わからない……

そもそも私は、何も知らないのかもしれない――

だが。

「そこまで分かってんならもう何も言う事はねえよ。
貴様がかつてどうやって千年アイテムを揃えたか、最後まで答え合わせをしたいか?」

底の見えない邪悪なモノを孕んだ双眸で、バクラはさらりと言ってのけた。

バクラはきっと、盗賊王が間違った推理をしていたとしてもそれを指摘することはしないのだろう。

『そう思わせておいたほうが都合がいいから』だ。

そして私は、千年リングに宿るバクラに従うしかないのだ。
たとえその正体が、もはや人でないとしても。

盗賊バクラが私を捕らえていた腕の力を緩める。
しかし完全には離さずに、不快にならない程度の力で私の肩を抱き寄せたまま、軽口を叩いた。

「貴様の薄気味悪ィ部分が大邪神に由来するモンだってなら納得してやるよ。
人格はオレ様の成れの果てであったとしても……
貴様はだいぶ、人間から外れちまってるみてえだからな」

その発言に何か思うところがあったのか、ボーダーシャツのバクラも間髪を入れず言葉を返す。

「貴様こそ自分をまだ正気だと思ってんなら、随分とおめでたい頭だぜ」

「なんだと?」

「千年リングを所持していた神官……
ヤツは己の魔力で千年リングに宿る邪念を封印していた。
だが貴様はその邪念を、己の力とするために惜しげもなく吸収したんだろ……?
その代償がどんなものか……考えた事はあんのかよ?」

バクラは意外なことを言った。

それは、人で無いものが人間の浅知恵を嘲笑うような――
もしくは、もっと好意的に捉えるなら、かつての自分を憐れむような――

そんな物言いだった。

「……それをオレ様にわざわざ言うってことは、よほどこの状況が気に入らねえんだな、てめえは」

少しだけ言いよどんでから、バクラの問いには答えずに一言で返す盗賊王。

「それは貴様も同じだろ」

同じ声で言い返すバクラ。


沈黙。

盗賊バクラはまだ私から離れるつもりはないらしく、肩を抱いていた腕を今度は腰に回し、さわさわとお腹辺りを撫で始めた。

くすぐったさと恥ずかしさが同時に押し寄せ、私は顔を火照らせて俯いたり周囲を見回したり、白いバクラの顔を窺ったりとそわそわする有様なのだった。

そんな私の様子に気付いたのか、バクラが舌打ちをこぼし声を荒げる。

「いい加減そいつから手を離しやがれ……!
人質にはならねえつっただろ……!
目障りなんだよ!! 状況分かってんのかてめえはよ……!」

だが全く動じない盗賊バクラは、余裕さえ浮かべてまた奇妙なことを口にした。

「人質にはならなくても、イラつくくらいの効果はあんだろ?
何たって、貴様は未来のオレ様だ……、なんつーイカレた話を信じてやった根拠の一つが、こいつなんだからな」

「……!」

昨日もバクラはそんなことを言った気がする。
一体どういう意味なのだろう……?

「……どういう意味だ」

千年リングに宿るバクラも同じことを思ったようで、聞き返した。

「さぁな。てめえが一番良く知ってんだろ?」

「…………」

何故か盗賊王が優勢になるこの状況に付いていけない私の頭は、疑問符でいっぱいだった。
たまらず沈黙を破り、口を開く。

「え……どういうこと……?
私、何かした……?」

不安になる心。
私の何らかの言動が現代のバクラの不利益になるようなことに繋がっていたら、私は耐えられない。

そうでなくても私は、盗賊バクラに秘密を漏らしてしまったのだから。

「……クク、教えてやってもいいぜ。
ゆめ、ちょっと耳貸しな――」

「っ……!」

耳元に寄せられる盗賊王の唇。
昨晩の情事が脳裏に浮かび、反射的に心臓が高鳴った。

だが――

「おい!!!!」

盗賊王が何事かを言う前に、私たちを引き離すように割って入ったバクラの手。

「んだよ!」
「うぜえんだよ!!」

重なるバクラたちの罵声。

私の腕は獏良君の肉体を持つバクラに引っ張られ、しかし盗賊バクラも私の腰を離さないものだから、
「ちょちょ、ちょっ……!!」
などという無様な声を上げる羽目になった私は、その場で悶えるしかないのだった。

「なっ、なんで……!
どういうことか全然わかんないよ……!!
いっ、痛いいたい痛い!」

二人のバクラに取り合いをされるなどという狂った状況は、冷静に考えれば別の甘ったるい情景を想起させる可能性もあったのかもしれない。

だが、彼らは仮にも『バクラ』だ。

二人は各々の思惑と欲によってのみ行動し、まるで無機質なロボットの玩具を奪い合うように双方から引っ張られる私は、ただの『モノ』なのだった。


「そんなに聞きてえなら教えてやるよ……!
3000年経っても変わってねえからだよ!」

盗賊王が吠える。

「っ!?」
「黙れ!!!」

何故か制止するバクラ。

――え? え??

戸惑う私。
「何が――」

「女の好みに決まってんだろ!
だからこの野郎はオマエを傍に――」
「黙れっつってんだよ!!! ブチ殺すぞ!!!」

「やってみろや……!!
千年リングの力が互角なら、オレ様の肉体の方が有利だぜ……!
そんなひ弱な体で何が出来るってんだよ……!」

「なんだと!?」

「ケッ、ダセー格好しやがってよ!
こんな野郎が未来のオレ様だなんざ認めたくねえな!」

「ふざけんな……!!
馬鹿な女一人に一晩で懐柔された盗賊が何をほざいてやがる……!」

「あァ!?」


――もう何が何だかわからない。

ただ一つ言えるのは、私の頭は一連のやり取りを深く考えることを拒否していたということだ。

ばくばくと早鐘を打ち続ける胸の鼓動。
火照った顔――顔だけじゃなくて全身が熱い。

私は二人のバクラに挟まれて、精神的にも肉体的にも、窒息しそうになっていた。

いきなり何故か、盗賊王がテーブルの上に用意されていたポテトチップを豪快に鷲掴み、乱暴に口へと押し込んだ。

盗賊バクラはお腹が空いていたのだろうか。

ばりばりばり。

「あっ、バクラさんここでカス散らかしちゃ――」

咀嚼されたポテトチップのカスがソファに散らばり、信じられないものを見るような目で体を離す白いバクラ。

「てめえ……」

バクラはギリリと歯噛みすると、視線だけで人を殺せそうな剣呑な気配を立ち上らせ、また盗賊王の方もそれをあえて挑発するようにバクラの方を睨みつけたまま、炭酸のジュースで口の中のモノを流し込む。

「ッゲホっ! ゲホッ、」

まだ慣れていないにも関わらず強引に炭酸を喉に流し込んだ盗賊バクラが激しく噎せ、それを見た白いバクラは「ハッ!!」と大袈裟に鼻で嗤った。

「大丈夫!?
ああもう……、とりあえずティッシュ……
ていうか手洗ったほうがいいよ……!」

盗賊王の背中をさすりながら口を開く私は、とっくに頭がおかしくなっている。

「クソが……」

現代のバクラがそう吐き捨てれば、私は「はぁぁ……」と深いため息をつくしかないのだった。


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