03


「別に……大した相手じゃないよ」
「カッコイイ?」
「もう、美樹ってばそればっかり! 見た目なんてどうでもいいの、中身がすごいんだから……人間かどうかも怪しいわ」
「何それ」
 美樹と香織が顔を見合わせる。
「どんな人?」
 どんな人だろう。
 一言でまとめるのは難しいが、強いて言うなら「変な人」。
 亜沙子はある出来事をきっかけにその人物と関わるようになり、現在も時々「変な人」のところへ顔を出している。自分は変人が好きなわけではないのだが、周りに変人が集まってくる傾向があるようだ。類は友を呼ぶ、という言葉を思い出して不安になる。
 私って実は、かなりまともな人間ではないのだろうか。でも、美樹や香織みたいなまともな友達だっている。
 きっと大丈夫、と自分に言い聞かせた。
 その時、ふと首筋あたりに視線を感じた。刺さるような視線。反射的に振り返るが、視線を投げた主は見あたらない。こちらを向いている人も、怪しい素振りをしている人もいない。
 まただ。わずかに悪寒がして、首筋をなでる。
「どうかした?」
 香織が亜沙子の背後に目を向けた。
「ううん。何か最近、誰かに見られてる感じがよくするの」
 亜沙子は顔をしかめながら打ち明けた。
 学業、金銭に続き、もう一つの悩み。どうもこの頃、誰かに見張られている気がしてならないのである。
「やだ、もしかして、ストーカーじゃない?」
「怖ーい」
 香織と美樹が口々に言う。
「ヤバいよ亜沙子。それ、大丈夫なの?」
「うーん、どうだろうね」
 他人事のような言い方に、香織は呆れた様子だ。
「どうだろうねじゃないわよ。最近世の中物騒なんだし、何かあってからじゃ遅いんだからね。それで、何か変わったこととかないの?」
 腕を組んで亜沙子は首を傾げた。
「誰かにつけられてる感じはたまにあるかなぁ」



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