家に帰ると友が必ず死んだふりをしています6 





 階段を降りて、通りから広場に出ると──そこには、座り込むユーリの姿があった。
「──やっぱり、ここにいた」
「……」
 ユーリは僕を見たが、何も言わず、すぐそっぽを向いた。僕はその隣に腰掛けた。
「ケンカすると、いつもユーリはここにいたよね」
「……」
 ユーリは何も言わなかった。しばらく夜の静寂に混じって、沈黙が訪れた。
 最初に口を開いたのは、やはり僕だった。
「……すまなかった。レイヴンさんから、全部聞いた。君が何を思って同居を提案してくれたのかも、あの死んだふりの意味も」
「……余計なことを」
 やっとユーリは口を開いたが、それはやはり憎まれ口だった。僕は苦笑を浮かべ、そして空を仰いだ。
「正直に言えば──……怖かったんだ。僕と暮らすことが、君の重石になりはしないか──枷になりはしないかと。君は誰よりも自由で……そんな君の足手まといになりたくなかったんだ。……結局、僕は僕のことしか考えていなかった」
 僕は自嘲気味に笑った。ユーリがそんな僕をちらりと見て、言った。
「……自分のことしか考えてねぇ自己チューだったら、ぶっ倒れかけるまで働くかって」
「……」
「大体、おまえが束縛魔なのは今に知れた話じゃねぇだろ。いちいち小姑みてぇに小言並べ立てて──」
「束縛魔って……」
 僕はユーリが言った言葉に絶句した。ユーリはからからと笑った。
「そんなもんに縛られる程、人が好くもねぇし、運動不足でもねぇよ」
「……そうだな。君はサルみたいに身軽だもんな」
「──言ったな」
 僕が言い返すと、ユーリは睨んできた。それが可笑しくて僕は笑うと、ユーリも馬鹿馬鹿しくなったのか、笑った。
「……そろそろ、帰ろう」
「だな」
 僕が立ち上がると、ユーリも頷いた。すると今まで姿を消していたラピードもやってきた。そして、二人と一匹で帰路についた。
「……まぁ、死んだふりも悪くないかもな」
 道中、僕はそう呟いた。夜空には、一番綺麗な星が瞬いていた。



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